表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と僕らの××の扉  作者: 楠木 勘兵衛
★第1章:新学期の春編
6/35

★第6話 始まった学校の寮生活

超絶修正(2025.02.26)終


 ◆



[悟川心冶]


 僕はボストンバックを担ぎ、背中にはリュックサックを背負う。今日は月曜日で、福禍高校の新1年生は今日から寮生活が始まるのだ。

 三日前は本当に酷い目に遭った。よく分からない鳥の化物に森に誘拐されて、逃げれば追いかけてきた。木々の隙間から見えたあの眼は何とも恐ろしい。得体の知れない化け物に目を付けられるとは思いもしなかった。



鳥『貴方は平和を実現できる存在なのです』



 あの鳥そのようなことを言っていた気がする。木枯さんが人間じゃないのにも驚いたけど、僕は単なる心を読むだけの覚。そんな僕が人の世界を平和にできると信じられるとは、先生が行っている通り平和を妄信しただけの馬鹿だったのかな。



××『……た』

「?」



 部屋を出ようと扉に手をかけたその時、何処からか声がした。でも、掠れていて何も分からない。後ろを振り向いたけど何もいない。



「気のせいか」

ルナ『きゅ…』

「なに見てるの。早く行くよ」

ルナ『きゅ!』



 ルナが何か部屋のクローゼットを睨んでいたけど、ルナはいつも何処かをじっと見つめることがあるから気にしてないし、今はそんなの構っている場合じゃない。今日はいつもより早く起きて学校に向かわないといけないから。

 


「父さん、僕もう行くね」

悟川父「はーい。いってらっしゃーい。クラスメイトに迷惑かけたりしないようにね」

「…うん」

悟川父「何かあったら帰ってきて良いんだからね」

「わかってるよ。じゃあ、行ってきます」



 僕は父さんに手を振って、15年をずっと過ごしていた家を出た。



 足早に進み、僕は駅に辿り着く。駅の柱にスマホを見ながら寄りかかる燈爾君を発見した。横に大きなスーツケースを構えている。



「おはよう。ごめん!待った?」

釣瓶「あ~全然大丈夫!じゃ、早く学校行こうぜ」



 僕は燈爾君に挨拶と遅れた謝罪をし、一緒に駅の改札を通り電車のホームで学校の最寄り駅を通る電車を待つ。



「こんなに早いと、県外の皆は大変だね」

釣瓶「なー。大阪とか京都とか新幹線の距離だからな」

「関西にも特殊科の学校あるけどね」

釣瓶「そこよりも、ここが良い!ってなったのかもな。俺は兄貴が行ってたってのもあるけど」

「前に言ってたね。5つ離れたお兄さんのこと」

釣瓶「本当に…アイツが地味に優秀だったせいで、俺に色々とお小言飛ぶようになってよぉ」

「燈爾君は運動神経良いし、勉強だってしっかり成果出てたじゃん。受験の時とか」

釣瓶「そうだけど…」



 世間話をしている内に、電車は駅に到着した。早めに来た5時50分でも、沢山の大人の人が乗っている。降りる人も乗る人も。大人になったら、仕事の通勤時間にこれ程早く起きて準備しないといけないんだなって。いずれ僕もその社会に組み込まれていくんだ。




 ◆




 無事に僕たちは、重荷を背負いながら学校に辿り着くことができた。

 学校の大きな敷地内には体育館やグラウンド等、様々な施設が道を繋いで建っている。その施設群が立ち並ぶ右側とは学校を挟んで反対に左側。こっちに学校の寮が並んでいる。学校へ入るといつもとは違い目の前に幾つものAIが立ち止まっている。先生が前に言っていた案内用のAIらしい。



AI『学生証をお見せくださいマセ』

「はい」

釣瓶「ん」


AI『認証…成功。特殊科1年Q組でございますね。寮へ案内しマス。玄関に担任がいらっしゃいますので、ご挨拶忘れないようニ』



 僕たちはAIに連れられ、自分達の寮に案内される。だだっ広い敷地内に敷かれた道を進んでいく。意外とすぐに寮へと着き、AIは先生と交代しまた学校の方へ戻っていった。



「おはようございます」

釣瓶「おはようございます…」


水島「おう。早かったな。他の奴らはまだだから待ってろ」

「はーい」



 どうやら僕たちはクラスで1番に集合したみたいだ。学校から遠い人はもっと早く来てると思ったけど、意外と時間を意識はしていないのかな。小神さんは前に実家が広島にあるって言ってたなあ。新幹線とか修学旅行でしか乗ったことないや。


 僕はまじまじと寮を眺める。その外観は学校と同じで和と洋を組み合わせたレンガの模様。白い柱にベランダ。周りは芝生で柵で囲まれてる。街灯に自販機にベンチも設置されている。質素だけど隙の無い。防犯対策もしっかりしてる。

 こんなにも素晴らしい寮だけど、できたのは2000年以降という意外にも浅い歴史だ。寝泊りする学生は昔からいたらしいけど。比較的に新しいから古臭さはそこまで感じない。まあ学校のどの施設も新築のように綺麗だったけどね。


 すると、僕らの所にまたAIがやって来る。その後ろにはルンルンと大きな荷物を持ったクラスメイトの、河野かわの凛童りんどうさんが現れた。



河野「いよっし!先生ー!おはよー」

水島「おう」


「(河野さん荷物やば…!)」



 河野さんは持っていた荷物をガシャン!と大きな音をたてて降ろす。その荷物は僕や燈爾君が持ってきたものよりもずっと大きな荷物で、蓋口の部分からハイテクそうな物や機械、工具が見えている。そういえば、河野さんはよく昼休みとか何か機械造りしてた。異様な光景だったからよく目に入った。まさかそれを寮でもやる為に持ってきたのかな。失礼かもしれないけど、何で工業科で入らなかったんだろう。本当にそう思ってしまう位には荷物をパンパンにしていた。


 先生は特にリアクションをするわけもなく、淡々と真顔で出席確認していた。



河野「二人ともおはよう!」

「おはよう。河野さんすごい荷物だね」

河野「あっははー!手放したくないもの考えてたらこんなに多くなっちゃった!いやー困ったんねー!岩手からわざわざ持ってきたんよ」

「岩手から!?」


河野「そうだよ?新幹線だけどね」

「だとしても無理な量では…?」

河野「荷物は先に送ったんね。一緒に持ってっても良かったけど、人の邪魔は良くないからね」



 河野さんはしっかりしていた。岩手とは東京から飛行機で行く距離でもある。大阪や広島の方もそうだけど、やっぱり遠い所からここまで来るのって大変なんだなあ。



「(河野さんでこれなら他の皆は一体…)」


河野「へっへー。いっぱいアイデアあるからどれもこれも試作したいんね」

水島「河野。作業したいなら寮の地下室でやれ」

河野「え!地下室なんてあるんですか!?やったー!防音ですか?」

水島「その昔、工業科の生徒が騒音が響かない部屋をくれと要望し作られたやつだ。他の学科にも利点があったからここにもある」

河野「いよっし!」

水島「私物化するなよ」



 へー。地下室があるんだ。河野さんにはもってこいな場所だ。

 するとブロロロロロロと遠くから車のエンジン音が聞こえてくる。何か来たのかと気になり、遠くの方を見つめるとAIがトラックを先導していた。



「え」

釣瓶「すげー…」



 引っ越しトラックみたいな中型トラックは僕たちの寮の前に止まった。え?このトラック僕たちのクラスの人のなの?河野さんの大荷物を限界突破してるよ?何を詰め込んでいるのかな?お引越しかな?参勤交代かな?


 バタンとトラックの助手席の扉が開き、誰かがこちらに向かってくる。サラッと髪を振り、現れたのはクラスメイトの多白おおしろゆきさんだった。



多白「お待たせしました」

河野「おー!雪ちゃんだ!大荷物だね~」

多白「うふふ。持っていきたいものを選別していたらこうなってしまって…」



 多白さんはクスクスと口元に手を当てて微笑む。多白さんは真っ白の肩まで長い髪で、毛先が全てぱっつんで綺麗に整えられている。きりっとした水色の目に黒色のカチューシャが目立つ。

 それに何といっても、この多白雪さんは大手製菓企業【オーシロ】の社長令嬢なのだ。本人が自己紹介で言ってた。流石はお金持ちのお嬢様。荷物が規格外だ。



河野「ちなみにトラックに何入れてるの?」

多白「本とDVDが主で後は実家から持ってきた寝具と洋服でございます。あとはリビングで映画を鑑賞するための設営材料を…」

「(設営…?)」


河野「あっははー!雪ちゃんって考える規模デカいね!!」



そこまでの設営材料を用意してるの?トラックの中に絶対デカいベットとか入ってるんだろうなあ。



釣瓶「女子ってあんなに荷物用意するんだなあ」

「いや、単純にあの人たちが規格外なだけだよ…」



小神「はー!やっと着いたー!!ええ!?あのトラック何…」

河野「おー雷ちゃんおはよー!」

多白「おはようございます。小神さん」

小神「あ、おはよー。あのトラック多白さんの?」

多白「ええ。はりきりましたの」


小神「いっぱい持ってきたねー。あ、二人ともおはよう!」

釣瓶「おーっす」

「お、おはよう…」


次に小神さんが走りながらやって来た。僕たちと同じで大きめのキャリーケースにボストンバックで来ている。ああよかった。流石に小神さんは普通の荷物だった。小神さんは多白さんの引っ越しトラックに目を飛び出して驚いている。さらに河野さんの荷物にも驚いてツッコミを入れていた。




 ◆




 その後続々とクラスの皆が荷物を背負って寮に集合し、全員揃ったところで先生が寮の玄関のカギを開け中の探検が始まった。1階はリビングにキッチンと共有スペース。大きなソファーやテレビが備え付けで、冷蔵庫もウチにあるのよりずっと大きい。そして地下室への階段。僕たち一人一人の部屋も防音が施されているけど、こっちは最強防音で渾身の叫び声じゃないと届かないらしい。そんな叫び声上げる状態ってどんな状態なのかな…。まあ多分河野さんが大部分を占有すると思う。うん。


 そして二階より上は全部僕たち分の部屋。男子が右側で女子は左側。学生証をかざすか鍵を使えば開くというまさかの最新オートロック機能付き。1階を抜いて男子は5階までで1部屋開けて3人ずつか4人。女子は4階までで1部屋分空けて2人ずつ。



水島「一旦荷物を部屋に置いてこい。部屋割りはこの紙見ておけ」



 先生にそう言われて僕は自分の部屋の場所を確認する。3階の真ん中、両隣はどっちも知らない人だ。やばい、ちゃんと仲良くできるかな…。えっと、僕の部屋から右側に白星しらほしノア君、左側には傘木かさぎ唐博からひろ君か。

 取り敢えず、僕は学生証をかざし部屋に入る。要望通りの家具が綺麗に揃っていた。エアコンに小さい冷蔵庫と隙の無い完備。トイレは5階まで2個ずつ配置されてる。



「私立ってすごいなあ。いやでも、あっちの学校も…」

「…今日からここに住むのかあ」

ルナ『きゅきゅう!』

「あ、ルナったらはしゃいじゃって…」



 あって嬉しいものがいっぱい。僕は内心新しいものばかりのこの寮に感激をしていた。

 するとコンコンと扉のノック音が聞こえた。僕の部屋の向こう側からだ。



「あ、はい!…ルナ隠れて」

ルナ『きゅ』


「はーい。あ、えっと、傘木君?」



 扉を開けるとそこには傘木君がいた。僕よりも小さい背で薄紫の髪に下の方で小さな一つ結びがある。狛眉こままゆに紫の大きな目で僕を見つめてくる。



傘木「おう。よろしくな…えっと」



 あ、これ憶えられてないやつだ。仕方ないよ。だって僕すごい影薄いもん。一番影が濃く見える時なんて特殊歴史の科目だけだし…。でもここで会話ができなかったら気まずさで終わる!自分の潜在的せんざいてきなコミュニケーション能力を信じろ!!



「僕は悟川心冶。苗字は言いにくいと思うから、好きに呼んでね」

傘木「じゃあ、心冶でいいかな?俺、敬称とかそういうのつけて呼ぶの苦手だから」

「うんいいよ。よろしくね傘木君」


白星「おや、お二人方は先にご挨拶していたんですね」

「あ、うぅ…白星君。今その途中だったんだ」



 僕と傘木君が挨拶を交わしている時、隣から扉が開く音がした。そこからは同じ階の白星ノア君が姿勢よく美しく登場した。な、なんか眩しい。執事しつじの雰囲気的なのが漂ってる。



白星「そうですか。ではわたくしも。同じ階の白星ノアという者です。どうぞよろしくお願いします」

傘木「俺は傘木唐博。よろしくな白星」

「……悟川心冶です。よろしくね…」



僕たちは気まずい雰囲気をまとわせながら挨拶を終え、僕は部屋に戻って気持ち急いで扉を閉める。扉を閉めた瞬間、僕にまとっていた緊張がほぐれて力なくへたり込んでしまった。



ルナ『きゅ!』

「あはは。大丈夫だよ…。でも、白星君は大丈夫なのかな」



 僕はため息をつく。正直、白星君のことをまともに見ることができなかった気がする。紺色の髪を傘木君と同じように結んでまとめていたことしか外見を憶えて無い。ずっと白星君のあの”心”の状態に注目しすぎていた。


 ハートの形。自己がしっかり形成され自立を象徴する大きさ。その見た目は僕が今まで見てきた人の心の中で一、二を争うレベルのおぞましさだった。しかも、僕が自発的に見たわけでもない。ただ彼の方を見た瞬間に、心の方が僕を見ているような感じだった。

 でも、とても綺麗だった。おぞましいとも思ったけど、その下にある彼の本当の心は白く綺麗なものが時折見えては隠れていた。



「あんなに紳士的な人なのに。何かあったのかな」



 綺麗な心があるってことは彼は問題ない。何か第三者の介入…もしかして、”呪い”?いや、人のことをこんなに深く考えるのはダメだ。覚の能力者は人との距離感に一番気を付けないといけないんだから。



小神「心冶君!この後、みんなで買い物するけど一緒に行く?」

「あ、うん!今行く」



 扉の向こう側から小神さんの声がする。どうやら、キッチンとリビングに無い食べ物とかを買うらしい。この後は授業とか無いし。多分燈爾君も一緒に行くと思う。僕はルナをポケットに隠し外へと向かった。




 ◇




[・・・]



白星「お嬢様、そちらは大丈夫ですか?荷解きは計画的にしてくださいね。あ、あと…色々作るのは良いですけど、クラスの皆様に迷惑をかけないでくださいね」


白星「私のほうですか?万事順調でございます。それに……っ」



 1人スマホを耳に当て、窓の景色を眺める。前髪をかきあげ、瑠璃色か紺色の髪を乱す。綺麗にまとまったお団子と一つ結びから乱れた髪が伸びている。壁に寄りかかり、受話器の向こう側の人間の心配する声を大丈夫だと言い続ける。



白星「大丈夫ですから。()()()()()、いずれ消滅します」



 心にかかった黒とは対照的に、彼の鮮やかな橙色の目は希望ひかりを信じ前を見ていた。


河野かわの凛童りんどう:女・15歳・147cm・8月8日生まれ・一人称【あたし】出身地:岩手県

【能力】:水の中なら活性化できる能力(水の中で呼吸可能・身体能力向上・水泳能力超強化)

おさげが特徴の元気でパワフル理系女子。メカニック気質であまり自分の能力は気にしていない。熱しやすい性格で知識も豊富。人の恋話が大好き。コミュニケーション能力が高くすぐ人と仲良くなれる。別に河童は好きじゃないけどきゅうりは好き。

【好物】:きゅうり・発明・機械いじり・水族館巡り・恋バナ


▼良かったら「評価・ブクマ・いいね」してくださると小説活動の励みになります。とっても嬉しいのでお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ