表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星と僕らの××の扉  作者: 楠木 勘兵衛
★第2章.嫉妬にまみれた体育祭編
19/35

★第19話 心の中で崩れたもの

完全修正(2025/04/06)

→ちょっと加筆修正(2025/04/06)



 ◆



[悟川心冶]



 体がぞわぞわする。近くにとんでもない心の持ち主が2人もいるのが原因なのかもしれない。

 僕は今、簡易的な控室で皆の走りを見ている。もう第4走者目、差が結構開いているけど多分あの2人がやってくれるかもしれない。まだ、今日のあの日に会話したのが初めてだけど…でもあの2人は何となく余裕と秘めた凄い力を感じたから。きっと。



「…」

白星「大丈夫ですか?」

「ちょっと涼んでくるね…」

白星「はい」



 僕は白星君にそう言って控室を出る。外の空気は気持ちがいい。自然にすごく囲まれているわけじゃないけど、あの空気の中だったらこっちの方が安心できる。そう思ってしまう程に、あの2人の心には厄介なものがくっついている。


 まだ、白星君の黒色は威嚇みたいでそこまで怖くない。それでも、人の生々しさとか悲痛の感情が渦巻いていてエグさは感じるけども。それ以上に危険なのが羽海君だ。本当にやばい、”危険”という言葉の域を超えようとしている。何かが生まれようとしている。あの心に何かが住み着いて、心を卵のように食い破って、今、外に出ようとしている。

 あの柔らかい心の殻を破って、人間性の海が割れた中から流れ落ちて、普通じゃきっといられなくなる。彼の人格も何もかも、形が全部崩れて溢れて、最後は、最期は


 僕は鳥肌が立った。なんてことを妄想しているんだと、咄嗟に頭を抱えてうずくまっちゃった。どうしてこんなこと考えたんだろう。どうしてこんなこと思いついたんだろう。白星君の心にはこんな最悪な妄想が思いつかないのに…。



蛇島「なあ」

「!」


蛇島「アンタ、羽海のこと気にしてんのか?」

「え、えっと、一回だけ話したことあるだけ…だけど、不思議な感じがして」

蛇島「それ、俺もずっとそう思ってた」

「どういうことですか?」



 僕の元を訪ねてきたのは、羽海君と同じクラスで一緒に走る相手の人だった。



 ◆



 彼は蛇島へびしま誉壹よいちと言い、羽海君とは小学生からの幼馴染らしい。



蛇島「昔はアイツはもっと優しい奴だったんだよ。今のクラスの対立を生むような正確じゃなかったんだ…」

「クラス仲悪いの?(R組の皆の心を読んだ時に確かに気まずそうな雰囲気あったけど…)」

蛇島「仲はアイツとだけだな。羽海以外は皆仲良くしてて、アイツだけ独りでいるのを望んでるって感じでさ。皆近づきたくないし、アイツも威嚇して近づけさせない」

「(水速君っぽい…けど、水速君は鳥羽君と仲良さそうだったなあ)」


「昔の話聞かせてもらってもいい?」

蛇島「ああ。アイツと出会ったくらいが良いか?」

「うーん。蛇島君が羽海君に憧れた理由が知りたいな」

蛇島「え?俺、そんなに羽海のこと憧れて見てた?あんまりアンタと関わってないのに…」

「えっと、雰囲気かな。あと人を避けてる羽海君のこと心配してる言い方だったし、幼馴染でずっと見てきたのなら何かあるかなって…」


蛇島「ははっ…。確かに俺は羽海に憧れてたよ。隠してたつもりは無いけど。俺は自分の能力が好きじゃなったんだ。火は出せないし、足は速くならないし、人の心は読めない。できるのは目があった奴の動きをちょっと止めるだけ。でも、アイツはそれもいい能力だって褒めてくれたんだ……その時は自分の能力を認めてくれた良い奴止まりだった」

「うんうん」

蛇島「それで、アイツが禍福課を目指すって言って俺も目指すって決めた。それでよく公園でアイツの能力伸ばしの相手になってた」



 蛇島君は羽海君との思い出を語ってくれた。



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



蛇島『羽海は強くていいなあ』

羽海『何が?能力が?』

蛇島『うん。オレにはそうやって羽で人を助けられないから…』

羽海『別に羽が無いからって何もできないわけじゃないだろ。蛇島のだって充分役に立つから!』

蛇島『そうかな…ただ目を合わせたらソイツの動きを止めるだけだよ?それだけ』


羽海『分かってないなー。力勝負以外でも人は活躍できるんだからさ。特に問題を解決するにはスピードが大事なんだよ。相手の動きを一瞬でも止めれれば、それだけで相手を捕縛したり逃げる時間を減らせるんだ』

蛇島『確かに…』


羽海『動くモノの時間を止めれるって逆に良いと思うけどね~。僕はこうやって羽を一枚一枚飛ばして持ち上げたり癒したりだし。時間に干渉できる能力って少ないから羨ましいよ』

蛇島『羨ましいだなんて…オレの方がずっと羽海のこと羨ましいって思ってる!』

羽海『あっはは!じゃあ僕は皆に羨ましがられるようなかっこいい完璧な禍福課ヒーローにならないとなあ…』



蛇島『あのさ、羽海は何で禍福課を目指そうって思ったの?』

羽海『それは・・・』



 ◆



羽海「おい。何してる」



 どすの効いた声が後ろからした。恐ろしい気配が体中を逆撫でして鳥肌を立たせる。振り向けば、目を見開いてこっちをただ無表情で見る羽海君がいた。体が硬直する。一歩もこの場から体を動かすことができない。なにより僕は今、”能力を使っていない”はずなのに、もうあの悍ましい嫉妬がにじみ出ている。蛇島君も顔を強張らせて硬直している。

 でも、ここで彼に怖気ついていたらダメだ。燈爾君はいない。自分で向き合うんだ。



「蛇島君は悪くないから。僕が勝手に昔話を聞いただけだから」

羽海「昔話?そんなつまらない過去の話を聞いてどうする…」


「君は何を目指してるの」

羽海「完璧。それだけだ。才能だけの奴も、馬鹿な努力家も、全てを踏み台に一番になる」

「……本当に?」

羽海「は?」


「君は禍福課を目指しているんじゃないの?」

羽海「そんなことどうでもいい………」

蛇島「どうでもよくないだろ!!?。お前、ずっと叶えたい夢だって…言ってたじゃないか!!」


羽海「夢なんて俺の中にはどこにも無い。どいつもこいつも俺を邪魔してばかりだ。どれほど努力しようと、親の能力が優秀であれど、天才の気ままに潰されるのがオチだ。羨ましいよなあ。そんなことで、自分の創り上げてきた全ての努力が水の泡になるなんて哀れだよなあ」

「…」



 羽海君は笑っている。その目で僕だけが捕らえられてる。蛇島君のことは見向きもせず、ただ僕だけを見ている。目を逸らしたら殺されるんじゃないかって、恐怖と嫉妬で支配されて動けないままだ。どうしようもない程、この恐怖が体を精神を蝕んでいく感覚に包まれている。



蛇島「お前は何でそうなったんだよ…。何で自分の努力を貶して、他人ばかり羨むようになったんだよ。お前だって充分強いじゃないか!皆から羨ましいって言われる位すげー奴だって!!」

羽海君『黙れ』



「危ない!!!」



 僕は咄嗟に体が動いた。蛇島君に向かった羽をその手で受け止めようと。あまりに無茶なことだけど、どうしても体が動いてしまった。そして、僕はその羽を手で受け止めてしまった。触れた瞬間に、手の皮膚に嫌な感覚が伝わった。見れば触れた箇所から赤色の血が流れていた。



「痛っ!?」

蛇島「馬鹿野郎…!お前!!今までこんなこと…!!」


AI『緊急事態?緊急事態!?』

蛇島「手当て!手当て頼む!」

AI『了解デス』



 新しい紙で指をすった時のように、皮膚が擦り切れていた。もし掴んでいたら手の全部が真っ赤の血みどろになるところだった。いや、触れているところだけでもざっくりといかれた。血が流れて止まらない。すぐに駆け付けてくれた誘導係のAIが、僕の手の治療準備をしている。


 蛇島君は怒りで羽海君を睨んでいる。性格が変わっても人を傷つけることはしなかったんだ。それが今、ああやって蛇島君に向けて羽を放ってしまった。蛇島君にとっては、僕が血を出したことも、許せなかったのかな…。じくじく手が脈を打って熱くて痛い。



AI『救護。救護しマス』

「ありがとうございます…」


蛇島「そんな、こ、こんなの、お前なんか…!」

羽海「お前のその健気な精神も羨ましいな。アイツの才能と同じだ。羨ましいなあ」



 ◆



 学校のAIに治療してもらい、僕の左手は包帯まみれになった。巻かれていてもまだ手の感覚がじくじくして痛い。もし強く握っていたら骨や肉をもっと切っていたのかな…そうしたら使えなくなってたかもしれない。一旦安静にと、僕たちは皆の走りを控室で見ていた。

 ふと、疑問に思ったのが羽海君の能力だ。蛇島君の過去を聞く限り、羽海君の能力は羽を一枚ずつ飛ばし(さっきのもやってた)、その羽は物を持ち上げたりする怪力属性で”癒しの効果”があるって感じだったけど、羽があんなに鋭利なのは驚いた。とっても攻撃に特化した刺々しい力だった。元からそうだったのかな。それともいつの間にか…そういうのって何かニュースとかあった気がする。何だっけ…思い出せない…。



AI『出番ですヨー。Q組のペアが来マス。準備お願いしマスネ』



 蛸背君たちが吹っ飛んだのを見た後、ついに僕たちに出番が回ってきた。さっき怖いことあったのに、もう自分の気持ちが恐怖から緊張に変わっている。心臓がとても速く鼓動している。胸に手を当てて無くてもよく分かる位には、すっごくバクバクしてる。観客席から父さん見てるかな。絶対行くってメールしてくれたから…



悟川父『心冶~!お父さんもう、はらはらしちゃうよ!心臓出ちゃうよ…!』

××『白星…』



「はい!」

白星「先に来たのは私達ですね。でも少し後ろにRもいます」

「頑張ろう…みんなの頑張りを繋げていくんだ」


羽海「……」


蛸背「はいよーよろしゅうな~」

「ありがとう!」


 僕は蛸背君からバトンを受け取り、全速力でコースを走っていった。R組の人達はまだ来ていないみたいだ。今なら差をつけて余裕を持って走れる。


「そう言えば、白星君の能力ってどんなものなの?」

白星「私はこんな感じで手から星を出す能力です」

「わあ!凄い!星系の能力初めて見た!!」


 白星君の能力を知らなかったので、この際聞いてみたが、なんと星を操る能力だった。世界において能力の種類は多種多様。その中でも希少と呼ばれる部類の能力は、昔から求婚されたり、売られたりと闇深い歴史もある位には世界に重宝されて、人に愛されていた。

 白星君はその一つの”星系の能力”で、鬼・時・あとサトリ…に並ぶ希少な能力だ。


白星「星は鎖で繋がっていまして、どこまでも伸ばしてぶん投げれます」

「ぶん投げる…」

白星「星を大きくしたり、少しだけなら重力をかけることもできますよ」

「色々できるんだね…」


 希少な能力はその少なさ以外にも、能力の枝わかれがある程度成長している所も人気なポイントなところだ。星を動かすだけじゃなくて、その星と自分を繋ぐ鎖の長さの無限性に重力付加、能力の枝分かれと性質の成熟度がもう大人レベルだ…。凄い、僕もそこにまで成長していけるのかな…サトリも一応希少な方だし…。

 まあでもでも、今は真っ直ぐ走っていかないと。白星君の能力やルナはもうちょっと後の障害が出てきたら使えるでしょ…。



「よしよし、走って走って…え!?ナニコレ!?」

白星「ほほう…」



 いくつかの小さい壁と、またいくつかのねばねばしたスポットがある。しかも、僕たちは蛸背君たちからバトンを受け取って走って左に曲がって、後は真っ直ぐゴールのグラウンドの出入り口に辿り着けば良いんだけど…



「何か直線長くない??」

白星「入口スタートの場所から変わらずコースと場外分けの壁はありますし、外周よりかは遠回りをさせられていて、やっとこの真っ直ぐのメインの道に帰ってきた感じでしょうか」

「流石…私立の学校だね。広すぎてテーマパークかと錯覚するよ…」

白星「先に進みましょう。追いつかれては危ないですから」



 R組の2人はまだ見えない。ここで差をつけて勝たないと。先着されたら秒数次第で4位落ちしてしまう。先生に1位になるって宣言したからには絶対勝たなきゃ。



羽海「邪魔だ」

「羽海君!?」



 勝つって決めて、まさかのすぐ後ろからあっという間に追いつかれてしまった。

 そして一瞬のことだった。追いつかれ抜かされたその次の時、羽海君の飛んでいる羽から一部が飛び出し、僕の肩を掠めていった。驚いて呆然としていたけど、すぐに何枚もの羽が僕と白星君の方に飛び込んできた。



「いった!!」

白星「隠れましょう!!」



 僕たちはコースに佇む大きな壁に隠れる。さっきかすった肩を手で抑えつければ、血液の感触がした。また羽海君の羽根に当たって傷ついちゃったんだ。何秒か遅れて痛みを感じる。本当に呆気にとられてると痛みに気が付かないんだ…。



「いたた…あれ羽海君の羽だ…」

白星「大丈夫ですか?肩から多少の出血が…」

「大丈夫。深くは切られていないから。それより、白星君もところどころ…」

白星「私も大丈夫です。かすり傷ですから。取り敢えずハンカチで傷口を抑えましょう。病原菌が入っては困りますから」



 白星君によって手際よく応急処置される。その手作業には一切の迷いが無く最早プロ業だった。いや、この状況で感心している程の余裕は無いじゃないか。



「ありがとう」

白星「しかし、どうしましょうか。彼の羽は個別で動ける…迂闊に前に出れば次は深くやられますね」

「そうだね…。どうしようか…」



 壁を出たら羽に見つかってやられる。壁からこっそり顔を出したけど、思ったより多くの羽が空中を漂ってる。羽海君の後ろから蛇島君が必死に走って追いつこうとしている。仲間を見捨ててやるなんて…。でも絶対前に出たら傷だらけエンドだ。でも、ずっと待っていたら負ける!それが羽海君の作戦だろうけど、もう今ここで怯えているばかりじゃダメなんだ。



「あ」


蛸背『飛ぶのが有利ちゅーことや無いけど、半円を描くように飛んでいけば投擲とうてきみたいには吹っ飛ぶもんなー。ま、それが最強なんですわ』



「ルナってどこまで飛んでいけるの?」

ルナ『きゅ!』

「えっと、頑張ればゴールまで行けるってこと?」

ルナ『きゅう!』

「……よし、それお願いしていい?」



 僕は蛸背君のあのやり方を見て一つ閃いた。白星君が壁の向こうを見ている間にルナに質問する。そうすると、ルナは得意げに頷いた。一頭身の体だと頷きも体全部使ってる。何か可愛いな。今までルナにそんな感情抱いたことないや。



「白星君」

白星「?」

「白星君の能力って鎖に繋がった星を動かすやつで、その鎖は指示すればずっと飛んでいけるって言ってたよね」

白星「はい…でも引っ張られるわけではないので…」


「僕の能力はね、頑張れば飛んでいけるんだ。だからこう…鎖を巻いて」

白星「!。わかりました。やってみましょう」



 僕は槍の形になったルナの後ろの方に白星君の星と繋がる鎖を巻き付ける。白星君も僕の意図を理解したのか協力して鎖を伸ばし巻き付ける。

 完成すると、僕たちは壁を乗り越え羽に怯えることも無く前に出る。僕が先頭に立って槍のルナを持ち、後ろに鎖を腕に巻き付けた白星君が待機する。



白星「一発勝負です。貴方が投げて私は引っ張られ、そして貴方を直ぐに掴みます」

「うん。頼むよ」

白星「こちらこそ」



 羽海君たちとの距離の差は目視でだいたい50m以上。ありったけの力を込めて、思いっきり槍を投げないと届きそうにもない。ゴールまではもっと先の100m以上。

 僕は深呼吸する。一発勝負。失敗すれば負ける。でも今さら引き下がる理由なんて無い。



釣瓶『(心冶、一体何するんだ…?)』


「(絶対勝つ…!)」



 白星君の鎖の長さを確認する。槍に巻き付けた分から白星君までの鎖の長さ。鎖が長くないと投げる時に白星君を引きずってしまうから、そこだけはしっかり確認しないと。

 よし、大丈夫だ。僕はまた深呼吸して前を見る。投てきというか、投げ槍ということしたことないけど素人なりにやってやろう!

 


 僕は全力で包帯を巻いていない右手でルナを投げた。



「飛んでいけ!!ルナの槍!!!」

ルナ『(きゅううう~!!)』


白星「心冶さん!」

「!!」



 白星君の伸ばした手を掴み、勢いよく引っ張られる。ルナはひたすら前に進んでいく。その勢いを落とすことなく、半円を僅かに描いて真っ直ぐゴールの方へ飛んでいく。白星君の手を離さないように吹っ飛ばされないように気をつけて飛び続ける。


 羽海君の飛行よりも速く飛んだ槍は、ついに追いついてしまった。



羽海「クソ野郎があああ!!」

蛇島「羽海!!!」


羽海「ッ…!?」



 本当にスローモーションのように光景が動いていた。羽海君たちとすれ違うその一瞬が、難病にも何分にも長く感じた。羽海君のしゃがれ声の雄叫びも、蛇島君が羽海君に対して能力を使っているのも、僕はその目でその耳で全部理解できた。羽海君の動きが完全に止まっていた。


 その場にはずっと留まることはできない。ルナが真っ直ぐゴールへと導き、僕たちはそのままつれて行かれる。あの一瞬の光景が焼き付けども、前を向きなおせば目の前にゴールの出入口に辿り着いていた。



 ◆



「はぁ、はぁ…ゲホッ!ゲホッ!!」

白星「か、勝ちましたね…」



 ゴールの出入口を歩いて入り、力尽きた僕と白星君はへたり込んでしまった。心臓の鼓動が痛い。体中の血液が沸騰して顔が熱い。足もお尻もじくじくして倒れ込んでも痛い。勝ったことの幸福感や達成感で脳のアドレナリンが凄い。痛いのも全然痛く感じない不思議な感覚だ。



釣瓶「二人とも大丈夫か!?」

最上「わー熱そうだね~血も出てるし水と包帯持ってくるわ~」

釣瓶「能力でオーバーヒートしてたら大変だ。氷、氷!」

糸居「貰ってきた…」

釣瓶「サンキュー!ほら、これで体冷やせ!オーバーヒートは洒落にならないし」


白星「ありがとうございます…」

「ありがとう…ゲホッ。燈爾君、みんな」

釣瓶「傷もあるし治さないとな~あれ、心冶って手怪我したのか?」

「ん~まあね」



 ひとまずは休憩しよう。体が熱くて痛いのを冷やして癒さなきゃ。羽海君と蛇島君は大丈夫かなって思ってたけど、そのまま羽海君が蛇島君を抱えてゴールをしていた。僕たちQ組との差は1分と20秒。800点ロスで終わったみたいだ。



水島「悟川!白星!」

「あ、先生…僕たち頑張りましたよ!次も頑張って1位獲りますから!」

水島「…無事でよかった」



 ルナは気が付けば槍から姿を戻して、自分で僕のポケットに入っていった。多分誰も気が付いていない。ルナ、ありがとう。



 ◇



[・・・]



 1年R組の教室にて先に帰っていた椿本と蛇島は、両者俯きながら会話をしていた。



椿本「蛇島君…お疲れ様。使ったんだね能力」

蛇島「アイツの暴走を止めるにはそうするしかなかった。アイツ等が勝てば、何かアイツの心の中で崩れないかなって…でも、これ利敵行為だよな…」

椿本「悪いことだけど。でも、私には責められない」

蛇島「…」

椿本「もう、あの顔の羽海君は違う。私の知ってる羽海君じゃない…戻らないのかな」

蛇島「椿本…泣いて…」



 ガラガラと教室の扉が開く。2人が驚いたのは、クラスメイトの因幡を先頭に羽海君を除いたR組の皆だった。



因幡「何だなんだその話!」

椿本「因幡君、それにみんな…!」


二口「辛気臭い感じだけど、何か3人であったの?」

盾山「お、教えてよ。羽海君ってあんな感じじゃないの知ってるんでしょ?」



椿本「…!」

蛇島「…あのな、」


 ・

 ・

 ・

 ・


[羽海利旺]



羽海「負けた…負けた。あんな奴らに」



 負けた。負けた。あ~あ、羨ましい。あんな絆、あんな能力、全部全部、俺が負ける為に用意されたカード。ズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルいズルい。

 才能あって、仲間がいて、賢くて、運動神経が良くて、みんなみんなみんな羨ましい。何も無い。


俺には何にもない。

強さを示さないと存在価値なんて無い。

1位の結果が無かったら捨てられる。


 『誰も俺を認めない!!!!』


羽海「ぜーんぶぜーんぶ、妬ましい」


車屋くるまや朝火あさひ:男・15歳・174cm・3月23日生まれ・【一人称】僕・【出身地】:京都

【能力】:物を運ぶ最中は身体能力向上する能力(※人でも物でも運んでいる最中は発動する。猫車は自分で用意している)

明るく飄々とした性格。火車の能力者だが、母方が猫系の能力者の影響で”な”が”にゃ”になってしまう。真剣な場面や真面目な部分では言わない。蛸背とは幼稚園からの幼馴染で釣瓶を囲んで一緒にタコパをしていたり。寝起きがすごい不機嫌になるタイプで蛸背も朝の寝ぼけがとれていない彼は避けてる。歳が離れた姉がいる。

【好物】:魚料理・物を運ぶこと・ゲームで遊ぶこと・猫の動画を見ること!


▼良かったら「評価・ブクマ・いいね」してくださると小説活動の励みになります。とっても嬉しいのでお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ