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星と僕らの××の扉  作者: 楠木 勘兵衛
★第2章.嫉妬にまみれた体育祭編
14/35

★第14話 悍ましい嫉妬

完全修正(2025.03.27)


 ◆


[悟川心冶]


 次の戦いまで、僕たちにはまだ時間がある。作戦会議でもしようとしても、R組の皆がどういう能力を持っているのか、どんな種目がでるのか分からない以上、やっても無駄に終わってしまう。


 でも、僕は一つ気になることがあった。それは羽海君のことだ。彼と会ったのはあの先輩を脅していた場面だけで、あとは河野さんが教えてくれたあの情報だけ。どうにも、河野さんが教えてくれたあの真っ直ぐでかっこいい彼と、あの時のどすの効いた殺意の彼では雰囲気が違う。



「うーん…」


車屋「にゃにしてんの?」

「あ、車屋君。ちょっと隣のクラスに気になる人がいて…」

車屋「おや?それって恋のやつ?」

「違うよ。ただ、何というか、強いのか気になってて」

車屋「R組で強いかも…という人にゃら、それはあの羽海利旺君のことだね」

「うん。というか羽海君ってそんなに有名なんだ…」



 テレビやネットニュースで取り上げられてたし、知っている人は知っている位に有名なのかな。プロの人に一目置かれそうな話題のルーキーは、メディアが毎年高校生の中から選ばれてるけど…。あの時の羽海君はまだ小学生だし…。



車屋「ま、ウチの中学の先生がそういう凄い奴に熱狂的でねー。皆もこんな風になれっての例としてよく出されてただけだよ」

「へ、へえ~」


車屋「それで?その人がどんな人なのかよく分からないから、観察しようと?」

「うん」

車屋「良いと思うけど、喧嘩を売るマネはしない方がいいよ」

「どういうこと?」

車屋「俺も最初は、あの先生が言ってたヒーローちゃんと一緒だ~なんて思ってたけど、どうも噂を聞く限りじゃ冷酷無情な奴だって」



 ・

 ・

 ・

 ・



 僕と車屋君、そして蛸背君も謎に参加して、一緒に羽海君の調査に乗り出した。これって傍から見ても見なくてもストーカーの行為だよね…?あくまで知りたいのは、羽海君の心の中。彼の心を一瞬でも捕らえることができれば良いんだから、迷惑かけないように気をつけよう…。



蛸背「今なら隣のクラスにおるんとちゃいます?普通科の運動会を見るタイプとは到底思えへんし…」


「あ、いた」



 蛸背君の言う通り?かは分からないけど、R組の教室を覗けば羽海君はそこにいた。一人で窓の景色を眺めている。ここから窓を眺めても、道を挟んだグラウンドのA棟しか見えないんだけど…今日は体育祭だからあの道には屋台や観客用の椅子と机がある。人でも眺めているのかな?


 とまあ、そんなことよりも、彼の心を覗いてみなければ。きっと彼のあの行動原理的な感情が分かるはず。僕はこっそりと彼の心を覗いてみる。


 僕が”読む”という意識さえあれば、簡単に覗くことができる。ついでに、他のクラスメイトの方々のも見てみようかな…。推薦入学者しかいないから、クラスの空気感ていうのが違うと思う。



椿本「(どうしたら、羽海君は元に戻るのかしら…)」


「……」


××「(アイツが全部掻っ攫ったせいで、あんまおもんなかったな~)」

××「(羽海君…怖いなあ…うまく付き合っていけるのかな)」

××「(一人が強いのもいいけど、見せ場が無いと売れないしー…)」



 何か、不穏な空気が流れてる。しかも、その不穏を生み出している原因があの羽海君か。あと、やっぱりR組の1000点を取った張本人も彼なんだ。絶対強い相手だなっ………!!!!?



車屋「どうした?悟川君」

蛸背「おい。めっさ顔青なっとるやん」

車屋「これはやばいよ!保健室行こ!!」



 僕は蛸背君と車屋君に保健室へと担がれ運ばれた。多分、R組の人…見てた…かも。それに彼も…。



  ◆



布紙「今日も怪我人が出てるなーまあ普通科の保健委員会とか、師匠のマドンナ先生のおかげで俺は司会の業務に専念…」


車屋「せんせえええ!!」

布紙「何だ!どうした!!?」

車屋「クラスメイトが急に体調崩しちゃって…」


布紙「熱中症か?氷と水分塩分のやつとか…ここに…」

蛸背「いや、教室にずっと居りましたけど、隣のクラスに偵察してとったらこんなんに…」


布紙「て、偵察で?悪くは無いけど、どうしてそんな…。まあ取り敢えず、アンタらこのこと水島先生に報告してって」

車屋「了解っす!」



 ・

 ・

 ・

 ・



「う、うーん…」

布紙「大丈夫か?口元に違和感とか気持ち悪さとか無いか?」

「えあ?はい。大丈夫です…もしかして僕吐きました?」

布紙「おう。クラスメイトがいなくなってから直ぐにな。幸い予測してたことだから綺麗に対処したぜ。その後気絶するように眠ったけど」

「す、すみません…」



 僕は気が付いたら、保健室のベットで横になっていた。どうやらあまりの気持ち悪さに、吐いていたらしい。そんなに、…いや、でも…



布紙「ノロウイルスかもって思ったけど、マドンナ先生やオーリーの機械で見ても、あくまで精神に多大な汚染って結果しかでなくて…えっと、1年Q組悟川だよな。何かヤバい奴いたか?」

「え、えと…」


布紙「口外はしないよ。オーリーの機械で出るこの結果って意外と当たるんだよ。それで結果が”精神に多大な影響系”。これな、クラスのいじめとか家族からの虐待ぎゃくたいとかもあるけど、それ以上に君のは”汚染”という点で絶対に候補から外せない原因がある」

「…」


布紙「災害エンティティによるもの。しかも教室。絶対にこの学校にいる」

「……」


布紙「話してみ?体育祭を無駄にすることは絶対にしない。大人が全部片づけるから」

「あ、えっと…」



 話すか、話さないか。僕にとっては究極の選択だと思った。でも、彼が悪いわけじゃない。今ここでしっかり伝えれば、彼は救われるのかな…



「僕はただ、あの人の心を覗いてしまっただけです」



 ・

 ・

 ・

 


布紙「あの人?」

「R組の羽海君です…」

布紙「うーん、R組は今んとこ誰も保健室訪ねてないからなあ。てか、心を覗いたってことはサトリか。なら精神に影響はしやすいだろうな」

「それで、」

布紙「うん」


「彼の心を覗いて、一瞬で体を気持ち悪さが込み上げてきて…。でも、彼の心には気持ち悪さは無かったです。ただ、そこに悍ましいくらいの嫉妬心があったんです…」



おぞましい嫉妬】



布紙「悍ましい位の嫉妬?ドロドロ的な?」

「ドロドロかもしれないですね…。ただ、他の人とは絶対に違う、あんなに一つの感情に支配されている心を見たのは正直初めてです」

布紙「じゃあ、もう覗かないように…」


「もう一つ!他の人と違うところがあったんです…!」

布紙「…それって?」


「前提として、僕が心を読むとき、気にしている点は3つです。大きさ・見た目・内側の声です。それで、彼の心は普通じゃありえないくらい黄緑色に包まれてて…」

布紙「色の姿をしてたんじゃなくて?包まれてた?」


「はい。よく見てみれば、あの黄緑色はもやのように心にまとわりついてて、その奥に若干だけ多分彼本人の心の色と、微かに声がしました…」



『助けて』

『こんなこと考えたくない』

『したくない』



布紙「俺にはサトリの見る心の模様とか景色は分からない。でも、実際に被害が出た、被害が継続的に起きているのを考えれば、動かないわけにはいかない」

「…でも、どうにかできるんでしょうか」



 人の心を覗くことはサトリか、精神系にしかできない。科学ではまだ証明できない領域で、普通の人にとっては、他人に自分を見透かされるなんてオカルト的で気味が悪いものだ。僕の見たものが全てを共有なんてできないし、理解できるものとは思っていない。


 でも、それでも、あの声はきっと、彼の本心から叫んでいる声なんだ。


 だったら、あの彼はそれを隠してずっとあの態度なのかな。それとも、何か歪みがおきた結果の彼なのかな。どっちにしろ、心を覗いて得た情報のこと以外はまだ分からない。もっと、何か原因を探らなきゃ…。



布紙「一応俺らでも…」

「僕もどうにかしてみせます」

布紙「…へえ。やる気満々の目じゃん。能力は許可なしに使えないからな。緊急事態以外はな…」


「僕は僕の憧れた人と同じ位、強く人を救う人に成りたいので!」



 布紙先生は笑ってた。でも、嘲笑じゃない。僕を信じてる、僕の夢を肯定している。内側の声は分からないけど、でも良いものだってポジティブな音と雰囲気を感じる。

 僕は気を取り直して、(ついでに水をもらって)保健室を出た。彼のことをよく知るために。彼を救いたい。


此処だけの話

布紙先生と水島先生は競馬好き。そしていつも勝つのは水島先生。勝った金額は大体引退馬の余生へ寄付している。たまに負けた布紙先生に飯を奢っている。

蛇島君は羽海君の羽をたまにブラッシングするよう命令され、テキパキこなしている。


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