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森のダンジョン食堂~ドラゴン定食始めました  作者: REI KATO
10 召喚者による桃源郷の設立
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温泉レジャー施設計画3

「それにしても夢が広がるな。上手く行けば、広大で富裕な生活基盤があって、遊ぶ施設もあって、こりゃ人が集まるだろ」


「商業活動なら、肉丸がいるしな。この世界有数の都市になったりして」


「いや、それは夢物語でもないと思うぞ」


「うむ。ちょっとダンジさんたちと相談してみるか」


 ◇


「なんだって?村とレジャー施設を作りたいって?」


「ええ、そうなんですよ」


「うむ、いいんじゃないか。ダンジョンの外に新たな経済圏を作るってことだろ?そりゃ、俺も一枚噛ませてほしいわ。というか、ダンジョン協会にも話を通さなくちゃいかんし、セリア街の管理者とか冒険者ギルドとかにも話しとかないかんだろ」


「「「ありがとうございます!」」」


「だが、話を通すにしてもだ。まず、村の名前とか代表者とかどうするんだ?」


「え」


「考えたこともなかった」


「じゃあ、高校生村か?」


「いや、せめて北辰村」


「なぜ北辰?」


「俺達、女子含めて私立北辰高校が母校なんですよ」


「ほお、結構な進学校じゃないか」


「優等生は女子。僕らは落ちこぼれなんスけどね」


「今は逆転してるじゃないか。まあ、優劣なんてどうでもいいか。で、代表者は?」


「うーん、村は雲母、レジャー施設の方は南足っすかねえ」


「いいんじゃねえか。商売だったら肉丸だし、情報とか警備とかの話になると馬越が担当になるだろ」


「「「だな」」」


「よし、じゃあそういうことで、まずは温泉からヒアリングしてみるか」


 ◇


「温泉じゃと?地中から熱いお湯が出る?うーむ、そういうことはノームかウンディーヌが詳しそうじゃの」


 森のダンジョンは不思議な場所で自然浄化される。1日たった汚れはダンジョンが吸収していくのだ。逆にいえば、俺たちは何もしないでいると、ずっと昨夜お風呂に入った状態でいる。わずかに汚れているという感じだ。それはそれで健康にいい、という説もある。キレイすぎる肌はいろいろと耐性が弱くなることがあるからだ。


 さらに俺達には風呂やシャワーがある。ズボラであれば清浄魔法や清浄魔道具がある。でも、温泉の気持ちよさはまた別格なんだ。


「冷たい水なら出せるけど」

「冷たい水なら出せるけど」

「冷たい水なら出せるけど」


「冷たい水を熱くできないかって?それはムリケロ。火山が必要ケロ。サラマンダーにおねがいするケロ」


 サラマンダーは火の精霊だ。

 

「温泉?お湯の湧く施設?そんなもの、なにがいいんだ?」


「体験してみたらどうだ?」


 サラマンダーを風呂に連れていき、無理やり湯船に押し込んでみた。

 

「おおお!これが風呂というものか!火に水はあれだから敬遠してたが、いいではないか!」


「サラマンダーさん、お酒もどーぞ」


「うむ。ピチャピチャ。あー、極楽じゃー」


 ◇


 ということで、水・土・火の精霊さんが集い、あっという間に温泉が湧き上がった。


「これは10階層にもいるな。単純な水魔法によるお湯と違っていろんなミネラルを含んでいるからな」


「ダンジさん、1階層にも頼みますよ」


「ああ、蛇口を引いておいていつでもオープンできるようにしておこう。でもな、現状、1階層には客が殆どよりつかんだろ」


「ですよねー。当面、村づくりが先っすかね」


「旧王国的にはこのダンジョンってヤバいの一言らしいからな」


「まあ、何度も軍隊が全滅してますしね」


「つーことで、10階層はのんびり温泉整備しとくわ」


 ◇


「お風呂ってこんなにええもんやとは思わなんだのじゃ」


 10階層、女神様の管理するイスラム風庭園の奥にそびえるテラス、さらにその奥に露天風呂を設置してみた。


「本当に身も心も癒やされますわ」


「極楽ですわねー」


 フレイヤ、女神様、ミヤは毎日どころか1日に何度も露天風呂に入るようになった。


「そんなにいいか?普通の風呂もあんだろ?」


「この温泉はの、肌がツルツルになるのじゃ」


「そうですわ。ツルツルどころか、肌が若返るような気分ですわ」


「この温泉に入ると、ずっと体がぽかぽかしたままで、ほら、私冷え性なんだけど、それがないんですよ」


「温泉大好き」

「温泉大好き」

「温泉大好き」


「悪くないですわ」


 水の精霊さんと風の精霊さんも女枠として、女性風呂に入り浸っている。水と風の精霊さんは酒も飲むようになって、オチョコいっぱい分程度の酒と温泉効果でクターと湯船につかっているそうだ。


 かくいう俺も、温泉効果は感じている。ダンジョンの謎ミネラルを含んだ伏流水が予想以上の効果をあげているようだ。


「この世界にはお風呂はありましたが、温泉というものはありませんでしたからな」


 どうも焼き肉で一杯やってから温泉につかるというのが高位魔物のルーティンになりつつある。


「じゃあさ、サウナ風呂も設置してみよか?」


「サウナって?」


「蒸し風呂さ。まあ、見てなって」


 ◇


「こういう風呂もあるのか。なかなかええではないか」


「サウナの後に水風呂に入る。すると、もっと体が活性化するぞ」


 食後や飲酒後はサウナやお風呂は駄目らしい。しかし、ここの高位魔物には関係がない。アルコールが適度に体に回っていい感じだ。


「サウナや風呂のあとに水風呂に入ると体が整う感じがしますわ」


 実際、入浴直後は魔法の効きが大幅アップする。


 露天風呂とサウナは高位魔物の皆さんにも大好評で、温泉を自宅に引き込んでくれとの要望が殺到した。


 そのことでしばらくは精霊さんたちは忙殺される。露天風呂とかサウナ風呂は各自が個性を活かして思い思いに設置していった。



「露天風呂とサウナ風呂はいいアイデアですね。これは是非ダンジョン協会にもお願いしますよ」


 ダンジョン協会のリュージュさんも温泉が気にいった人の1人だ。


「リュージュさん、こんな計画もあるんですよ」


 俺は、温泉の延長として計画を開陳してみた。それは流れる露天風呂プール。1周すると1km程度ある、自然味あふれるほぼ川下りに近い温泉だ。


「ほう。温泉が川みたいになるのですか。なんだか、楽しそうですね」


 リュージュさんはノリノリでOK返事を出してくれた。


 魔物達は体が丈夫でゴツゴツした岩を気にしない。それどころか、急流やら滝やらも設けて野趣たっぷりの川下りができるようになった。


「川がこんなに面白いものとは思わなかったのじゃ!」


 ダンジョンにも川はある。しかし、川でくつろぐという習慣が高位魔物にはない。それに、川特有の低位魔物がいて落ち着かない。



「これ、レジャー施設化してますやん」


 定期的に10階層に来て食事をしていく元男子高校生たちは温泉の拡大に複雑な顔だ。


「これ以上、温泉を拡大しないでくださいよ。それと、カジノは僕たちが先ですからね」


 念推しされたんだけど、どうしようか。まあ、こちらは高位魔物が相手、1階だと人族が相手だからな。


「まあまあ。1階層にも同様の施設を作っておくから。というかさ、おまえら、集客が今のところの最優先課題だろ」


 先行投資と言うか、男子元高校生達は頭の中をダダ漏れさせているので多少危なっかしい感じはする。


 ◇


 10階層の温泉場には、念を押された通りカジノはしないが、そのかわり様々なゲームを持ち込んだ。トランプ、ビリヤード、クレーンゲーム、ブラックハウンドを使った競犬。


 競犬で優勝すると、爆速黒犬として栄誉ある冠が黒犬に送られる。黒犬は鼻高々だ。冠を常時身につけ、回りを睥睨している。


 悔しい回りの黒犬たちは訓練に励むことになりますます競争が激化した。



 ちなみに競猫もこころみたが、徒労に終わった。猫たちは競争しない。走り出してもゴールに向かわない。というか耳を後ろ足でかいてあくびして寝ている。


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