召喚者、全員10階に到達
これはイザナミ様が店に来た直後あたりのお話。
「やったー!10階層に到達!」
「ううう、苦節半年。やっときたわ!」
「これで、ダンジさんの食堂!」
「ダンジさんの料理が待っている!」
「それにしてもミヤさんはともかく、男子連中がとっくの昔に10階層に到達しているのはちょっと嫉妬交じるよね」
「そうよ。自分たちだけ、ダンジさんの食堂を堪能できるんだもの」
「料理自体はダンジさんが5階層の拠点までもってきてくれるけど、ダンジさんの食堂で食べるってのがいいよね」
「でもさ、最初彼らの授かった職業を聞いた時は……って感じだったよ」
「雲母くんが作男、肉丸くんが運び屋、南足くんが遊び人、馬越くんが素破」
「ショボいと思っても仕方ないよね」
「ところがさ、あれ成長する職業だなんて。噂によると、実社会的にはかなりの上位職業になるらしい」
「作男が大農民とか運び屋が大商人とか、普通考えたら上位のはずがないのにね」
「ところが、この世界では誰もが羨む職業なんだって」
「まあ、雲母くんはわかんなくもない。高校でもさ、勉強はあんまり目立たないけど、リーダーシップのあるタイプだもんね」
「うん。学園祭とかの行事には先頭たって活躍してるし、先生なんかの評価も社会人になったら伸びるタイプっていってたもの」
「女子にも人気あるよね」
「驚いたのは遊び人。眉をひそめるような職業なんだけど、将来性は随一って話」
「賢者とかになるかもって話でしょ?南足くんってさ、日本で配信活動してたの知ってた?」
「ユー◯ューブの?そうなの?」
「ゲーム配信がメインなんだけど、登録者数は10万人を突破していたらしいよ」
「へえ、まだ高校生なのに」
「学費含めて、親元から独立してたんだって」
「うわ、驚き」
「学校の先生がさ、社会に出たら学校の成績じゃない部分が問われるぞ、なんて言うことあるんだけど、彼らを見てるとわかる気がする」
「私達なんて、この世界に転生させられてそのまま取り込まれちゃったものね」
「対して、彼らは転生した日に城を脱出した。確かにいろいろ条件は違ってたかもしれないけど、如実の差があったのは認めなくちゃいけないわ」
「さて、10階層にきたのはいいけど、ダンジさんの店ってどこかしら?何かバラのアーチとか広々とした公園が広がってるんだけど?」
「ねえ、公園の入口に座っているの、ガルムさんじゃない?」
「あ、ホントだ。おーい、ガルムさ~ん」
「おお、10階層にたどり着いたべか」
「ふうふう、走ってきちゃった。ねえ、ひょっとしてこの公園の中に食堂があるの?」
「違うべ。公園自体が食堂なんだべ」
「「「えー?」」」
「隣のバラのアーチは女神様のカフェだべ」
「「「えー?」」」
彼女たちはカフェと食堂を散策して、その広さと美しさにまた驚くのであった。
◇
「あー、めちゃ美味しい!」
「5階までダンジさんがマジックバッグで料理もってきてくれてたけど、こんなキレイな景色の中で食べる料理はまた格別!」
「それに、料理を選べるのいいよね。魔牛料理、鶏肉料理、卵料理がメイン。デザートもいろいろあるわね」
「あとは豚肉ぐらいか」
「海鮮もあるといいかも」
「海鮮は、そのうち海に行くってダンジさん言ってたよ」
※この時点では魔猪と海産物はゲットしていない。
前章とは時間が前後している。
「まあ、どんどん欲が出ちゃうわね。今ある料理でも食べたことのないレベルだもの。不満はまったくないんだけど」
「あと、バラの庭園も楽しみ!」
「バラとかに囲まれてお茶飲むってのも最高ね」
「ホント、10階層って暮らしたいレベルなんだけど」
「男子が言ってたけど、彼らでも10階層は生活するにはちょっとキツいって」
「魔素が濃くて短時間なら問題ないんだけど、長期だと影響が出るらしい」
「うーん、私達もやっぱり5階層を拠点にして、ご飯は10階層って感じになるのかな」
「転移魔法陣使えるから、そうなりそうね」
「できたら、この食堂かカフェで働きたいんだけど、現状ではムリっぽいね」
「でもさ、男子が1階層でレジャー施設作るみたいな話してるの知ってる?」
「え、そうなの?」
「いまさ、温泉計画が出てるって」
「うわ、温泉入りたい!」
「でも、なぜ1階層?」
「雲母くんと少し話したんだけど、外の世界からも人を引き込みたいって」
「ああ、彼らは真面目に将来計画を考えつつあるってわけか」
「うーん、ちょっと差を感じるわ」
「でもさ、彼ら、実業系に傾いてるよね、能力が」
「そう。私達は武力系」
「それ、絶対おかしいよね。普通、女の子で闘いたい人なんて、男子より少ないよね?少なくとも、この中にいないでしょ?ましてや、血が出る場面なんてとんでもよね」
「無理無理、絶対ムリ」
「私達も独立に向けてどうするか考えなくちゃいけないわね」




