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森のダンジョン食堂~ドラゴン定食始めました  作者: REI KATO
第2部 8 ダンジョン食堂、リニューアル。そして精霊たち
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イザナミ様ご来場

「イザナミ様、ご無沙汰ダド……」


「あら、ガルムじゃない。門番を引退したと思ったらこんなとこにいたのね」


 お?微妙にガルムがびくついているぞ。初めて見たな、ガルムのあんな表情。尻尾も股の間に収まっているし。


「あらあら、イザナミ様。ようこそいらっしゃいました。ずっと待ってましたのよ」


「エカテリーナ様、ご招待頂き誠にありがとうございます。黄泉の国は最近たてこんでおりましたのよ。ちゃちゃっと片付けて急ぎ参りましたの」


「まあ、大変でしたのね。さあさあ、入口ではなんですわ。お入りくださいな」


「それにしても素晴らしいところですのね。バラのアーチとそれに続くバラのトンネル」


「ええ、イザナミ様のご期待に添えるよう、頑張りましたの」


「あらまあ、それはとても嬉しいですわ」



「こちらも素晴らしい場所ですわね。2階のテラスから一望できる庭の造作の美しさ」


「このテラスはイザナミ様のための特等席ですわ」


「まあ、本当にありがとうございます。私、感激しておりましてよ。ああ、これつまらないものですが」


「あらまあ、ありがとうございます……まあ、これはひょっとしますと闇の国のローションでありませんこと?」


「そうなんですのよ。何しろ、黄泉の国はあの通りでございますでしょ?なかなかエカテリーナ様に似合うものが見つからなくて……気に入って頂けると嬉しいですわ」


「私、使ってみたかったのですよ。罪人を拷問にかけていじめ抜いていじめ抜いて、その搾り取った命の精気を集めたローション。天界にも評判が轟いていましてよ」


「あら、そうなんですの?罪人ですからなんの価値もありませんのですが、少しは役に立ったようで」



「私からもイザナミ様に贈り物がございますのよ」


 女神様が取り出したのは、大きなピンクトルマリンをローズゴールドにはめ込み、その回りをダイヤモンドの粒で飾ったネックレスであった。


「まあ!なんてゴージャスな!」


「私のブルーサファイヤのネックレスと色違いのおそろいですのよ」


「ああ、なんというお心遣い。大切にいたしますわ」



「では、昼下がりということでりんご酒とアップルパイをいかがでございますか?」


「あらまあ!なんと爽やかで自然の甘みが口に広がる飲み物ですこと!アップルパイとのマッチングも最高ですわね。そういえば、気の所為でしょうか、バラの香りを乗せたふくよかな香りの風が」


「ああ、風の精霊が気をきかせてくれたのですね」


「まあ。孤高の存在と言われる風の精霊もこちらでは非常に親切なんですね」


 ◇


「では、イザナミ様。私が夜に詰めている場所にご案内いたしますわ。少々騒々しい場所ですが」


「ガルム、こんな素晴らしい場所で働けるなんて、私、嫉妬しましてよ」


「そんな、お戯れを……だべ」


 ガルムの怯んだ顔、冷や汗をかいている。

 やはり、尻尾は股の間に丸まったままだ。



「こちらが、ディナーとお酒の場所ですの」


「まあ、こちらも誠に美しい庭園なのですね。様々な花や樹木が私の目を楽しませてくれますわ」


「いらっしゃいませ、イザナミ様」


「こちらはシェフのダンジ様でしたわね。例の王国城以来ですわね」


「ええ。ご無沙汰しております。イザナミ様がいらっしゃいましたので、この庭園もこれ以上無いくらいに花や木々が喜び勇んで咲き誇っております」


「まあ、お上手ですこと。それにしましても、食堂とうかがっておりましたが、これほど広い庭園の中で寛げるとは思ってもいませんでしたわ」


「女神様の発案でして。私どももできあがったときは驚きました」


「おほほ。イザナミ様、こちらは庭園だけではございませんのよ。お食事やお飲み物も最高級ですの。こちらがメニューですわ」


「魔牛とコスタリカあたりが中心でらっしゃいますのね」


「イザナミ様がよろしければ、シェフのおすすめコースなどいかがでしょうか。少量ずつですが、当食堂の人気メニューが勢揃いいたします」


「では、それを」


「はい、ありがとうございます。お飲み物は脇に控える黒犬がワゴンでもって控えておりますので、ご遠慮なくお申し付けください」


 ◇


「ふう、本日は誠に堪能いたしましたわ。これほどの料理、これほどの飲み物、天界でも黄泉の国でも味わったことはありませんでした。真の天界はここにあったのですね」


「これはまた、過分なお言葉を頂きましてありがとうございます」


「つきましては、私もここに離れを設けたく存じますが」


「ええ、ええ、歓迎いたしますわ!」


「黄泉の国の業務もなかなか刺激が多くてやりがいがありますが、その分、週末は少々疲れますの。ここで癒やしを受けたいですわ」


 イザナミ様は満足して帰っていった。

 後日、離れの下見にくると伝えて。


 ◇


「女神様。以前から不思議だったんですが」


「はい、なんでしょう」


「イザナミ様と女神様は随分お仲がよろしいようですが。それとイザナミ様は天界のこともよくご存知のようでしたが」


「天界と黄泉の国は同じ職場なのですよ。場所が多少違うだけで。イザナミ様とは同僚みたいなものですわ」


 黄泉の国って、地球で言うところの地獄だよな。イザナミ様はあのガルムでさえ怯えるような実力者のようだ。閻魔様のような存在なんだろうか。



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