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森のダンジョン食堂~ドラゴン定食始めました  作者: REI KATO
第2部 8 ダンジョン食堂、リニューアル。そして精霊たち
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火の精霊も酒・お菓子両方大好き。風の精霊はめんどいやつだった

「どうじゃ。儂らの腕は」


「さすが、ドワーフだな。あんな綺麗なグラスとか宝石とか、凄すぎんぞ」


「まあ、儂らにはできんもんはないからの」


「ほう。じゃあさ、これは?」


「む。痛いところをついてきたの。この店の食器か」


「どう?こっちの硬質な輝きとこれはオフホワイトの柔らかい輝き」


「正直にいう。この店の食器はの、作り方がわからん。白すぎるし、固すぎる」


「俺もはっきり知ってるわけじゃないが、これは磁器と言って、特別の粘土を超高温で焼いたものだ。それが硬質な輝きを生む。そこに動物の骨を混ぜて焼くとこの柔らかい質感のものになる。前者は磁器、後者はボーンチャイナって呼んでいる」


「ふむ。まず、特別の粘土とは?」


「白くてキメの非常に細かい粘土さ。俺達はカオリンって呼んでいる」


「カオリンというのか。それはあっちの世界の特産品なんだな?こっちにもあるのかな」


「土の精霊に聞いてみるか?」


 ◇


「カオリンケロ?うーん、カオリンって名前の粘土は聞いたこと無いケロ。でも白い粘土なら探してみるケロ」


「お願いするケロ」


「だから、口真似するなケロ」


 ◇


「こうして白い粘土を何種類か探してくれたわけだが。これらがカオリンなのかどうかは焼いてみんとわからん。高温って焼くというのも難しいな」


「ガラスを溶解できるのなら、大丈夫なんじゃないか?」


「ガラスはな、溶かすのにさほど時間はかからねえ。しかし、磁器ってのは要するに陶器のグレードアップバージョンだろ?長時間の焼成が必要そうだ。となると、火魔法魔道具の魔石消費量が心配だな。窯ももっと耐火性の強いのが必要かもしれん」


「なるほど」


「魔石使い放題なら、火魔法は問題ないし、窯に耐火結界を張るってのもありだ。現にガラス製造には普通に使っているからな。要はコストに合うかどうかだな」


「ふむ。確かにコスト度外視というのも避けたいな。すると、窯の問題は耐火レンガって線か。どっちにせよ、耐火レンガを焼き上げるにはやっぱり耐火の窯が必要だろ」


「うむ。耐火レンガを焼き上げるために耐火結界にお世話になるか。少しずつ耐火性能をあげていけばいいからの」


「では、火魔法はどうする?」


「火の精霊に頼むのはどうかケロ」


「おお、サラマンダーか。奴なら長時間の高出力火魔法でも平気だな」


「そのサラマンダー、受けてくれるんか?」


「奴も甘党の酒好きだ。問題なかろう」


 ◇


「これ、くれるってか?」


「おお、サラマンダー、じゃんじゃんやってくれ」


「うーむ、さすがはドワーフおすすめの酒だけあるな。ゲロうまやんか」


「甘味もどうぞ」


「おお、おお、この白いクリームたっぷりのふんわりケーキと黒くていい香りのするのがかかったケーキ、どちらも美味すぎるな!脳天に響く味やんか。これを食べつつ、酒をあおる。最高やんけ!」


 趣味嗜好は人それぞれである。


「これ、毎日でも提供するぞ」


「極楽やのー。で、頼み事って?」


「かくかくしかじか」


「そんなことか?俺が窯ん中で寝てるだけでいけると思うで。まかせろ」


 というわけで、徐々に高温に耐える高いレンガが 作り上げられていった。その過程で、磁気に向く白粘土を特定し、カオリンと名付けることにした。


 ◇


 で、ドワルゴはやっぱり1か月ほど顔を見せないと思ったら、いきなり店にやってきて果てた。箱に入った食器を抱えて。


「どうじゃ。渾身の作品じゃ。俺は寝る」


「ほう、素晴らしい磁気とボーンチャイナだな。ありがとう、これで店の食器、追加の目処がたったぞ」


「グーガー」


 ◇


「ねえ、ちょっとお願いがあるの」

「ねえ、ちょっとお願いがあるの」

「ねえ、ちょっとお願いがあるの」


「何?」


「風の精霊のシルフちゃんがね」

「風の精霊のシルフちゃんがね」

「風の精霊のシルフちゃんがね」


「お菓子欲しいんだって」

「お菓子欲しいんだって」

「お菓子欲しいんだって」


「いいぜ、呼んでこいよ」


「だって、恥ずかしがり屋さんだし」

「だって、恥ずかしがり屋さんだし」

「だって、恥ずかしがり屋さんだし」


「ああ?じゃあさ、これ君たちに渡すから」


「恥ずかしいから要らないって」

「恥ずかしいから要らないって」

「恥ずかしいから要らないって」


「どっちなんだよ」


「あのね、お願いしますから」

「食べてくださいって」

「言うのよ」


「は?めんどくさいやつだな」


「でも、いいことあるよ」

「でも、いいことあるよ」

「でも、いいことあるよ」


「ま、いいか。風の精霊さん。お願いしますから、このお菓子食べてください」


 風がフンワリと吹いてきて、

 同時にお菓子を運んでいった。


 その時から、食堂の周囲には柔らかでいい香りの微風が流れるようになった。


「この風はね」

「病気にかからない風なのよ」

「元気もでるのよ」


「へー。じゃあ、毎日お願いしとくか、お菓子の進呈」



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