職人の血が騒ぐのじゃ!ガラスからダイヤモンドまで
「グピグビ、プハー」
「ノームよ、美味いか?」
「ヒック、ホップとやらが入ったエール。色々バリエーションがあってケロ、ヒック、飲み比べしてんだケロ」
ずらりと並んだエールの樽。
「それにしても、ノンベすぎんだろ」
「つまみも美味いしな。極楽極楽ケロ。なあ、鉱石で欲しいものがあったら教えろケロ。でっかいの進呈するケロ」
「鉱石?宝石か。別に欲しいのはないが、そうだな、こんなのどうだ?」
「なんだ、このキラキラしたグラスは!」
「ガラスコップにカットを入れてるんだな」
この世界では古代よりガラスをコップにすることは普通に行われていた。吹きガラスという手法が開発されてからは急速に普及したのだ。いまではガラスコップはさほど高級品でもない。
しかし、ガラスにカットを入れるのは一般的ではなかった。
「なんという職人技ケロ。ちょっとドワーフ連れてくるケロ」
◇
「うおおお、素晴らしい職人技!お主は酒のこともよく知っておるが、こんなのも知っておるのか!」
「いや、俺が作ったわけじゃないが。どう?作れる?」
俺はガラス用ディスクグラインダーを見せる。
ガラス工作用に自分で作った魔道具だ。
「これでガラスを削っていくのか……まかせろ。職人の血が騒ぐぞ!」
◇
「どうじゃ!」
ドワーフは1か月ほど顔を見せないと思ったら、フラフラになってやってきた。どうやら、カットグラスを作るために徹夜続きだったようだ。俺にグラスを渡すとバタリと倒れて寝てしまった。
「凄いな、根性でカットグラス作ってきたぞ」
眼の前のグラスには切子並の造作が施されている。
「凄い技術だな。じゃあさ、これは?ガラスに鉛を加えて作ったものだ」
「ほう。硬質な輝きが美しいな」
「その名もクリスタルガラス」
「ふむ。ガラスから研究が必要か。鉛を含ませるのか。少し待て」
◇
ドワーフは1か月ほど顔を見せないと思ったら、フラフラになってやってきた。どうやら、クリスタルグラスを作るために徹夜続きだったようだ。俺にグラスを渡すとバタリと倒れてしまった。
「ご苦労さん。これ、量産したいが、弟子を育成しなくちゃいかんな」
「もうしとる。酒のためにつれてきた奴の中から希望者が何人か出た。職人を奮い立たせるものがこのグラスにはある。じゃあ、寝る」
「そっか。じゃあ、頼むわ。それでな、ノーム。次の課題なんだが、これはどうだ?」
ガラスのダイヤカットされたものを取り出した。
パッと見はダイヤモンドのように光り輝いている。
「ほう。これもガラスかケロ」
「ああ。凄いだろ。数十に渡って表面が微細にカットされてるんだ」
「で、なんだって?これをダイヤモンドでやれということかケロ?」
「そう。どうだ?」
「おい、ドワルゴ、起きろケロ。新たなチャレンジだケロ」
「うおぉぉぉ……すまん、ちょっと寝かせろケロ」
「俺の口真似をするなケロ」
◇
俺は拡大鏡とさらに細かいカットのできる魔道具を作ってやった。レーザーカットする魔道具だ。
「おお、素晴らしい魔道具じゃねえか。ここまでお膳立てがあったら、すんごいの作れそうじゃ。待っておれ」
で、やっぱり1か月ほど顔を見せないと思ったら、いきなり店にやってきて果てた。手にダイヤモンドをにぎししめて。
「素晴らしいじゃないか!キラキラ光ってとっても出来が良さそうだ!」
「うむ、デンジ。ちょっと貸すのじゃ……ふむふむ、良かろう。妾の指輪にしてやるのじゃ」
「いや、してやるのじゃ、といっても……」
「私のはありませんこと?」
「ああ、女神様。いや、これ贈呈用じゃなくて……」
「私は耳飾りが欲しいですの」
「妾もほしいのじゃ」
「あー、私も」
「なんだよ、ミヤもか……おい、ドワルゴ、起きろ。お三方がお前の腕をご所望だぞ」
「……」
◇
ということで、やはり1か月後にフラフラとなったドワルゴが現れた。
「前よりもは技術が向上したぞ。どうじゃ」
「おお、いいではないか!」
「いいですわ!私にぴったりですわ!」
このあと、ドワルゴには次々と注文が舞い込み、酒どころではなくなっていくのであった。




