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コカトリス焼き鳥メニュー

「鶏といえば、やっぱ焼き鳥だよな」


「焼き鳥はすでにメニューにあるじゃろ」


「だべ」


「ちょっと違うんだよ。あっちは鶏肉をまるっと使ったろ?こっちは、鶏肉を細切れにして串に刺して焼くんだな。焼き方もコツがいるぞ。やっぱりジューシーさを失わないように火加減が難しいんだ」


「ほお。ちょっとやってみよなのじゃ」


 俺は胸肉を細切れにして串にさせて焼いてみた。


「肉のカットの仕方だが、これにも注意が必要だな。胸肉だと繊維を断ち切るようにカットするわけだ。勿論、厚さ・幅・形・大きさは揃えなくちゃいけない。火の通りが違うからな」


「火加減の問題じゃの」


「その通り。串打ちもバランスよく、肉の繊維に対し垂直に刺す。最後に、上から押さえて肉の厚みを均等にして」


「こだわりがあるんじゃの」


「火加減は中火か中火よりの弱火。火元に近づけすぎないように、両面を3~4分ずつ様子を見ながら焼く。火を通しつつ、ジューシーさを失わない。これは魔牛と同じだ。俺には火加減スキルがあるから簡単にコツを掴めるが、焼き一つとっても熟練の技が必要なんだよ」


「ほお」


「甘辛醤油タレは焼き上がり直前に味付け。砂糖が入っているから焦げやすいから注意な」


「おお、照り焼きの芳ばしい香りが漂ってくるの」


「うむ。店先で焼けば人を惹きつける香りだな」


「お腹に響くのじゃ」


「我慢できんだべ」


「ブニャ!ワウ!」


「おお、みんな集まってきたか。ふふ、さあ出来上がり」


「待ってたぞ!」


「早くお皿に!」


「ブニャ!ワウ!」


「おお、これは美味いのじゃ。普通の鶏肉ステーキとはひと味違うの」


「だべ!」「ウニャ!ワフ!」


「なんでだろうな。遠赤外線効果かな。カットされた形がほぼ統一されてるから、火加減を繊細にコントロールできるってのはあるよな」


「それにしても、カット一つとってもコツがあるんじゃの」


「ああ。今回は胸肉だが、もも、ささみ、手羽、レバー・ハツ、皮などパーツによってもコツがある。さっそく、俺には解体スキルが生じたから、包丁一本でズバッとカットできるが、将来的には魔道具でカットできるようにしたいな」


「うむ。従業員育成のためにもな。おい、黒犬たち。よく見ておくのじゃ」


「ワフ!」


 黒犬は俺の料理のおかげか、少しずつ賢くなっている。俺の言葉をかなりの程度理解できるようになってきた。前脚は器用になってきてお箸を使い始めているし、下手するとずっと二本脚で立ってる。


 ああ、魔猫は相変わらずだ。寝てるか遊んでるか、食べてるかのいずれかだ。賢くはなっているみたいだが。



「カットはともかく、串刺しを練習してみるか?上手くいったら、鶏肉食べ放題だぞ」


「ワフ!」


「おお、やる気まんまんだな。じゃあ、胸肉からいくか」


 黒犬たちは不器用ながらも、カットされた胸肉を串刺しし始めた。コツは割合早めに習得し、やがて満足のいける成果を出し始めた。


「こりゃ、魔道具を早目に作成するか」


 この串刺し、単純作業に見えて意外と魔道具と相性が悪い。前後のカットと焼きの魔道具化はすぐだったんだが。だから、長い間、黒犬の手作業に頼ることになった。


 ◇


「新メニューの串刺し焼き鳥、イケてるね」


「ああ、酒が進むな」


「ダンジが言ってたが、エールとよく合うそうだぞ」


「エール?あの安酒と?」


「ダンジが言うには、磨き上げられたエールはほろ苦くて素晴らしい味わいらしいぞ」


「ほお。俺達の知っているエールとはものが違うっていうのか。まあ、大調理人様だからな。しかし、そんなこと言われたらエールが飲みたくなるな」


「ホップとかいうハーブを探しているらしい」


「ホップ?エールにはいろいろなハーブが入っているが」


「ああ。あれはグルートと呼ばれていて、製法は領主とか貴族が独占していたりするよな。あれじゃなくて、もっといいハーブがあるらしい」


「なるほど。貴族独占のハーブ特許をかいくぐれてしかも味もいいと」


「そゆこと。ただ、なかなか見つからないってさ」


 俺はいろいろアンテナを飛ばしてホップを探させている。現状では王国にはホップはないか、見つかっていない。


「それにしても、魔牛メニューもおいしいが、鶏肉もたまらんな」


「ああ、普通の鶏肉ステーキ、鶏の唐揚げ、あと野菜のごった煮(筑前煮)、ガラスープによるヌードル(チキンラーメン)、そして焼き鳥」


「いずれも食べるのが迷ってしまうよな」


「あれも食べたい、これも食べたいになるからね」


「これに魔牛メニューが加わるからな」


「ダンジは豚系と魚系のメニューも増やしたいらしいぞ」


「ほお。ますます、たまらんようになるな」


「まったく。楽しみでしょうがないね」



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