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Cocytus  作者: みらい
8/50

第八話



 よくわからない組織名を聞き、話を逸されたことも相まって紫蘭が不快感を顔に出す。


「……ネーミングセンスは褒めてやれ」

 と、ザレン卿。更に、「キャッチコピーも血は水。水は生命、だそうだ」


「アクア卿と言い、目の上のたんこぶだな。ま、多分君たちの任務にもいくつかそう言う不安分子があった筈。頼んだぞ」とローゼンベルグ卿が後に続けた。

「そうそう、君の気にいるものも写されていたぞ」と付け加え紫蘭のやる気を上げてやろうとする。


 今の四天王がどちらも面倒くさがり。

 紫蘭はミゼーアの。

 アスラは戦いの。

 それぞれ好きなモノ、熱中するモノ以外はやる気無し。

 ただ実力や名は知られている。という事もあり、四天王に据えられていた。


 例えば紫蘭は本人の知らない場で様々な民謡や伝説になっていた。

 アスラは騎士団に入る前、あるギルド所属時魔石や戦闘能力等でパーティメンバーと共に名声を得ていた。今はそのパーティメンバーも騎士団に所属しているが、一部以外は顔を合わす機会は失っていた。


 そこまで言うのならと、

「帰ったら資料でも見ておこう」と、答えて紫蘭がその部屋を出た。


(これ以上いると、嫌味や面倒事を頼まれかねん。話も聞いてくれんし……さっさと退治を終わらせるか。

 燃焼させる前にアスラを止めないとな。支障が出る……もう出ているか……)


 と思い、「アクア卿は一週間くらい聞いてくれた。またミゼーアの話は後日日程を伝えるからな」と、言う紫蘭。枢機卿たちは顔を青くして「あ、ああ……。期待していよう」と言い紫蘭が出て行くのを見届けた。

 再びアスラの様子を見に行った。

 

 関所と壁。

 ちょうど中庭の様になっている所に鍛錬場があった。

 紫蘭がそこに行くと、数名の騎士たちが見学しており、アスラたちの話に聞き耳を立てていた。

 彼らの話を聞いてから、「なるほど、そういうことか……」や「こうか?」などとお互い魔法の動かし方を練習していた。



 火の粉が飛び、灰が舞う。

 鍛錬というより、教授中。

「休憩だ」と、渦中の彼らの元に紫蘭がいく。


「つまりだ。君は使いこなせてはいないが、無意識のうちに身を守る熱波を吹いているみたいだな」

 と、騎士の方が指差し自らの周りに張ったバリアに蠢く炎を操る。


「君たち天人の炎使いは大体火傷を負っているのを見る。君はそんなものは無いだろ?」と続けた。

「ア! 確かに! ……ほおぉ?」とか「そだ! パーティメンバーの奴もやけど大変そうだったな」


 と、わかったような或いは関心したような声を出すアスラ。彼らに、


「捗っているようだな」

 と、紫蘭が声をかけた。


「感情とかでも左右されるんすねーーって納得」とアスラ。


「それを歌にして魔法を使うのが獣人だからな。落ち込むと魔法使えんらしい」

 と、紫蘭が付け加え「へーこわ」とアスラが言う。


「師匠は? 俺たち天人みたく後天的な奴すよね?」


 俺は…と、紫蘭が言う前に、

「彼は君たちのようなもの。

 それよりも歪かもな。

 ……

 …………いや。すまない……あとは本人から聞いてくれ。

 

『契約』は元々魔力をもたず、魔法が使えないから不便だろうとその国を司る竜が全ての人間と契約を結んで獣人との均衡を取ろうとしたのが発端なはず……。


 その辺のことは私ではなく、多分火竜や天竜とかの方が詳しかろう。

 私が生まれた時既に『契約魔法』はほぼ廃れていた。魔石があったし、権力者が牛耳りたいと言う気持ちもあったろう。それでもちゃんと国を創り守る者としてあったおかげか、いっぱい社を立ててもらっている」

 と、少し照れる。


「お参りしてっけど、そんなのに教えてもらってたんだな、俺」と頭をかく。

 

 ふ、と笑って、

「ありがとうな。

 私はあれを建ててくれたのに恋した。

 ……が最後。私は一人だけ契約した」

 と、関所の上。

 枢機卿たちがいる部屋あたりを見上げた。


「……ああ。ローゼンベルグか」

 奴が社を建てたとはなと紫蘭が一緒に見上げる。


 ━━そんなしみじみされても、千年近くかそれ以上生きたらこうなんのか。俺も。

 しかし契約かあ……。俺もそれ知ってたらまた違ったのかな。

 やっぱ俺の。俺たちのこれは異色なんだろうな。


 とアスラは手に炎を持ちながら思った。

 そういえば、と。


「? 師匠も同じようなもん? ってことは『契約魔法』してたってことすか?」


 聞き流しそうになったそれをしみじみし始めた紫蘭に聞いた。

 関所の騎士が鍛錬を始めたため、鍛錬場の隅のベンチに行く。そして、彼らの動きを見ながら

(早速俺の見て実践してみようって感じか? わかるわかる。俺もやりたいけど、……今はこっち)

 と紫蘭の次を聞く。

 

「俺は先天的なものだ。……と言わなかったか?

 昔は血が魔力の源だと言われていた。

 まあ、種族によっては血を元に魔法を繰り出すものもいる……だからこそ人間もそう思っていて、近親での婚姻が当たり前でな。

 生まれつき魔法は出せたが短命だったり心身に障害を持つ者が身内に多かったのだ。だから断絶した。

 俺はミゼーアに治療してもらったからな」


 と、うっとり目を閉じる。

 奥さんのお話になり長くなりそうな気配がしたのでそれを切るようにアスラが「ふーん。そうなんすね。…アレ? ……これ聞いたすかね? ま。いっか」と頭を撫で、「またお手合わせして下さいっす。後天的なのが強いか先天的な奴が強いか気にならないすか?」

 と、燃え尽きないヤル気を焚べる。


「ふ、戦う口実にするな。俺はやだ」

 笑いながら紫蘭は断った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こんばんは! 成る程、魔石だけでなく竜も重要のようですね。 淡々と進むけど、物語全体がある種の虚無感の ような雰囲気を放っているところがまた良いです。
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