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Cocytus  作者: みらい
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第七話


 アスラが竜に魔法のレクチャーをしてもらっている中。

 紫蘭が「久しいな。内緒話か」と密談中の枢機卿のたちに挨拶に来ていた。どちらも昔からの周知で、紫蘭の扱いに小慣れたアスラ以上に手玉に取る。

 大体の枢機卿がそれだからかあまり近寄ろうとはしな


「おお! 久方振りだな」

「お疲れ様」

 と、労ってから、「嫁さん共々息災の様だな」


「聞けば愛しい愛しいスライムたちの相手をしている様だな。感心感心!!」

 と、紫蘭を見るやおじさんらしい挨拶で褒め貶すローゼンベルグ卿。

 紫蘭がたまに身分を隠してギルドに依頼を受けに来る事があった。夫婦でただ遊びに来ていた時もあったがその都度上手い具合にお願い事(いらい)を聞かされていた。律儀なのか、結局紫蘭は引き受けていた。

 その相変わらずの面倒臭さに紫蘭は「はぁ……」とこめかみを押さえ、

 

「ミゼーアならば、全て受け入れられる。あのスライムもそうであったらな」

 と、適当に受け止め「それに、俺がやらんといかん気もしてな」と呟く。


「正義感があるのかないのかわからんな君は」

 と、呆れ笑い肩をすくめる二人。


 ━━枢機卿。

 騎士団と同じく十二人いる内の二人。

 彼ら枢機卿たちの方が実質的な権力がある。そして魔石無しで魔法が使え、半不老。楽で権力持てるからと、枠はあるがこちらを選ぶ者も多い。

 もちろん実力主義であるので十二人それ相応に魔力もあり、魔石を用いたものでもない。それぞれ魔法の使い方も全く違う。

 例えばローゼンベルグ卿は竜と契約を結んでいる。ザレンの方は、火竜から力を貰っていた。


「どうだった? 森は」

 と、水晶を転がすザレン。


「俺でさえ、長時間いるのはキツイのだ。他はもっとだろう」


「中々に魔石採掘は遠いな……」

 と、少し残念がるザレン。


 それに、「防護服でも着て、一応毒耐性の魔石でも付けようか?」と、ローゼンベルグが提案する。


「うむ。それもありだな……」

 と、また二人して話し合う。

「いや、溶かす奴も前回見かけたぞ」と紫蘭が口を挟む。

 それを聞いて、また話し合いが始まる。

「耐性系の魔石じゃらじゃらつけるか?」「コストはマイナスだろうな」「良い物を採掘さえすればプラスにはなりそうだが……」とどうにか金にしようとする。

 

 紫蘭は貰った茶を啜りながら、

(これはアスラもミスったと思ったろうな……

 俺はまだ見知っていて気も知れたジジイどもだがアスラはまだまだ社交ならば媚びる方だろう。面倒くさかったろうな……

 ふっ、後で煽ってやろうか? 気分の優れん俺を使った罰をあげないとな)

 と、面倒だからこっち行く選択をした弟子を笑う。


「そうそう」


 と、一度会話を止め、ローゼンベルグ卿が紫蘭を見て、

「アクア卿がまた水の使い手を集めて、自身が統括する第二部隊に配属しているらしいぞ? 何か知っているか?」

 と、内部の面倒な事を紫蘭に注意、質問してきた。


「権力争いなんぞはそっちでやってくれ。何度でも言おうか? 俺はミゼーアのためにしか動かんからな」と紫蘭。


 騎士団及び枢機卿は星座や月日。干支…元はもう覚えていいない者が多いらしいが、そういう物を見立てて一二部隊編成されていた。

 その部隊━━特に第五部隊までは一人二人の枢機卿で管理しており警備、任務。研究や偵察、暗殺などなど様々な役割を持っていた。

 その枢機卿の一人アクア卿とこの二人は第二、一部隊管轄だからと言うこともあり、競い合っていた。


「それは知っているぞ。

 まあ、奥さんのケツ追うだけが取り柄なのは一途でいいが、そこにいるのは奥さんのためだろ?」

 と指摘するのはローゼンベルグ卿。

 二人共に行動していた時期を知っているからこそ助言をしてくれる。紫蘭も面倒くささも相まって仏頂面ではあるが、聞いていた。


「それならその席をしっかり守るのだな。研究のせいで亡くなった奥さんを守れなかったからそうなるのは分かるが……」と、追い討ちをかけられる。


「……はあ、」と紫蘭が是非した様な面倒くさそうにも捉えられるため息を。

 

「相変わらず痛いところを突く……」

 そう言うと「分かったならいい」とローゼンベルグ卿がにっこり笑う。

(……面倒だが、ミゼーアの席を奪われるのも不快だ。

 こいつらの言うことも一理ある。

 仕方ない)


 彼らがここまで親身になるのは紫蘭が倒れた時。

 丁度ミゼーアから回復の魔石を取れないかと実験をしていた当時の研究部。

 魔道機器の暴発により、彼女は亡くなった。

 そのあとは浮遊の魔石として残されていた。

 何故浮遊のみしか残らなかったのか、未だに調査しているが不明であった。

 

 この爆破事件の際二人の枢機卿━━当時はヒラだったが、救えなかったのを後悔していた。また紫蘭も彼女の家で療養しており動けない程だった。駆けつける事が出来なかった彼が一番後悔しているのではと、老婆心ながら心身共に気にしており彼を(いじ)りながらも多少なりとも心配していた。

 

「大丈夫だ。ちゃんとミゼーアを悪く言った国は十字軍が滅ぼしてくれた。その土地は帝国が使えば良い。後は任せたぞ」


「お、おお。流石十字軍だな。働かせすぎじゃないか? 土地は、……そうだな。植民地にするかな」

 と、ローゼンベルグ卿。

 

「奴らもこれで分かったと思うのだが……。

 今のところ十字軍の元教育している様だから、……植民地にするなら土台はちゃんとしておかないとな。

 地方の教会の者達もの威光、聖女様への信仰心をもっともっと布教して貰わねばな。まあ、俺も昔はある意味布教していた事になるのかな……?

 あれは、そう。まだ聖蛾(せいが)教会と言う基盤もない、まだいるかもわからない神に祈っていた時代……

 あれは俺がミゼーアのところへそのよくわからん神信仰しているから入ってくれと、通い婚していた時……」

 と、うっとり瞳を閉じ熱弁し始めた。

 ━━やばい、長くなると察した枢機卿たち。


「え――……、加熱しておるところすまないが……、胡蝶蘭とか言うの、君じゃないよな?」とザレンが聞く。


 それに紫蘭は、口を挟まれた事にムッとして「なんだそれ。今はミゼーアの……」と答えたが、「いや、こっちも重大案件だ!!」と頑張って話を逸らした。

 逸さなければ、三日三晩語られる可能性さえあるから。

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