第二歩 新しい武器
ゴブリンの亡き骸を引きずりながら森を歩いていると遠くの方で煙が上がっているのが見えた。
おそらく集落か何かがあるのだろうと思い、そこに向かって歩いていった。
煙が上がっているところに近づいていくにつれてある違和感に気づいた。
そこは人間の集落ではなく、ゴブリンの集落だったのだ。
「あー、こっち来なきゃよかった」
俺がそう思ったのも無理は無い。なぜならそこにはさっきまで見ていたゴブリンとはどう見ても違うやつがいたからだ。
体が緑色で額に角があるところまでは同じなのだが、身長がおよそ2メートルほどあり腕が長く拳が脛の真ん中位まである。
そしていかにもヤバそうな武器を肩に担ぐようにもっている。
形状はどう見ても日本刀のそれなのだが、かなり禍々しいオーラを出している。
刀身は真っ黒なのだが、刃の部分だけ血を連想させるほど赤黒く光っている為、そういうオーラが出てるように見えているのか、本当に出ているのか。
ここで「鑑定」と叫べばアレらが何か分かるかもしれないが、多分出ないだろう。
試したわけでは無いが、ただ何となくできないと思う。そんな気がする。
普通ならすぐ逃げるのが正しいのだろうが、俺はあの武器が気になって仕方がなかった。
最初にあれだけ悩んで選んだ刀が今は折れて使えない状態だからなのか、それともあの日本刀に魅入っているからなのか、
「欲しい」
その言葉を発したのが自分であることに気付いた時、少し驚いた。
別に全く物欲が無い訳ではないが、ここまで「欲しい」と思ったことが今までに無かったからだ。
「……まぁ、いっか」
あまり深く考えないようにしようと呟き、どうやってアレを手に入れるかを考えた。
ぱっと見強そうな奴はあの武器を持っている奴だけで、後は普通のゴブリンが6体だけだ。
「あのデカイのと戦うのに集中したいからその他の小さい奴を先にやりたいな」
と思いながら策を立てていく。
「一か八かだな」
色々考えてある一つの策に賭けることにした。
「よし、まずはあの辺に」
と魔法杖を構えて叫んだ
[落雷]
すると少し離れたところにガシャアアンと小さな雷が落ちた。
それに気づいたゴブリン4体が雷が落ちた所に走っていく。
「4体か、まぁそんなもんか。本当はデカイ奴以外全員来て欲しかったが」
そうして集まった4体に向かって、また魔法を放った。
[凍結]
するとゴブリンの足元から氷が広がり4体の下半身を固めた。
「やっぱ全身とまではいかなかったか。想定内だけど」
すぐに弓を取り出してゴブリンに向けて矢を放った。
何本も外れたり急所を外れたりしたがひたすら矢を撃ち込んだ。なにせ相手は動けないから。
「次は残りの2体とデカイ奴だ」
と息を整えて魔法杖を構え、[凍結]を使った。
3体の足元が凍り動けなくなったのを確認し、すぐさま剣を手にして走った。
混乱している一体の普通のゴブリンの首を後ろから切り落とし、そのまま残りの普通のゴブリンめがけて剣を投げた。
投げた剣は綺麗に頭に刺さり残りはデカイ奴だけとなった。
「とりあえず一つ目の壁クリア」
そう言いながらすぐに大鎚を取り出しデカイ奴めがけて振り抜いた。が上手く持ち上がらず足元を攻撃してしまった。
当然氷が砕け、動けるようになってしまった。
「クソっ、ミスった」
そう言いながら奴を見上げると日本刀を大きく振りかぶっていた。
咄嗟に大鎚で受け止めたが、奴の力なのか、日本刀の性能なのか切断され、左肩から右脇腹にかけて切られた。
幸いすぐに後ろに飛んだ為両断とはいかなかったが、それでも動けなくするには十分な深手を負った。
「がはっ」
と口から血が出てきた。内臓をやられたのだろう。少なくとも口を切ったというレベルの吐血ではない。
すぐに傷薬を取り出し使用した。
すると面白いように傷口が治っていった。だけど痛みは引かず、若干貧血気味であった。
「全快じゃ無いがコレでまだ動けるな」
と切られた大鎚を捨て槍を構えた。
大剣と槍と弓と魔法杖、どれを使うか悩んだが槍を選んだ。
弓と魔法杖は接近戦に向かないし、大剣よりも槍の方がリーチが長いからだ。
奴は腕が長いのが厄介だが意外と動きが遅い為、そこに上手く付け込めばいける気がした。
「グォオオオオオ」
と叫びながら走ってくる奴めがけて地面の土を投げた。
上手く顔に当たり一瞬動きが止まったところで奴に接近して心臓めがけて思いっきり突いた。が浅かった。
ドガッと奴の腕に吹き飛ばされ木にぶつかった。
「クソッ、いってーな、うん?」
と右の方を見た。
そこにはさっきゴブリンに投げつけた剣があった。
吹っ飛んだ先にそのゴブリンがいたのだろう。
迷わずその剣を握りしめ、走った。
全身に痛みが走ったが迷わず突き進んだ。
「でりゃああああ」
と叫びながら奴の喉元めがけて差し込んだ。
そしてすぐに離れて奴の背後にまわり、大剣を取り出して頭に叩き込んだ。
何度も何度も切りつけた。背中、腕、足にも切りつけた。
何度切りつけたか分からない。無心に、がむしゃらに。そして奴が倒れた。
安心したのか、疲れたのか、怪我のせいなのか、俺も倒れた。
「んっ、イテテ」
とゆっくり起き上がった俺はさっきまで起きていた出来事を思い出してすぐさま立ち上がった。
そして全て終わったことを確認して、また座り込んだ。
「あー、死ぬかと思った。あっそうだ、日本刀!」
どこだどこだと探すと奴の右手の近くにあった。
「あったあった、どれどれ?」
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【妖刀 龍滅】
黒龍の首を断ったとされる刀 刀身が黒いのは黒龍の呪い、刃が赤いのは刀自身が血を吸う為だとされている
[武器効果]
敵を斬れば斬るほど強度と鋭さが上がる
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「……なんか凄いの手に入ったな。コレ【りゅうめつ】であってんのかな?」
「まぁともかく壊れた刀の代わりが手に入って良かった良かった」
とふと顔を上げるとそこに建物があった。
全然気づかなかったが、高床式倉庫みたいなものがそこにあった。
「……お宝あるんじゃね?」
とちょっとした期待を持って、軽い足取りで中に入った。
そこには水や食べ物、薪、薬らしき物と武器があった。
「おぉ、わりと嬉しい物が揃ってるな」
とすぐさま手持ちに入れた。そして要らなくなった武器をそこに捨てた。
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【旅人の剣】
旅人が好んで使う剣 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【旅人の大剣】
旅人が好んで使う大剣 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【旅人の槍】
旅人が好んで使う槍 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【旅人の大鎚】
旅人が好んで使う大鎚 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【旅人の弓】
旅人が好んで使う弓 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【旅人の魔法杖】
旅人が好んで使う魔法杖 素材が軽くそこそこ丈夫な為長持ちする
[武器効果]
なし
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【アフィス】
レベル15
武器熟練度
[剣]レベル5
[大剣]レベル7
[刀]レベル3
[長柄武器]レベル4
[大鎚]レベル4
[弓]レベル9
[魔法杖]レベル7
スキル
[器用貧乏]
武器熟練度がレベル50まですぐに到達するがそれ以降はまったく伸びない
所持品
[旅人の剣][旅人の大剣]
[妖刀 龍滅][旅人の槍]
[旅人の大鎚][旅人の弓]
[旅人の魔法杖][回復薬]
[傷薬][解毒薬][包帯]
[水][携帯食][干し肉]
[硬いパン][薪][火打ち石]
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倉庫から出て、ゴブリン達を手作りの縄で結んでいる時に思った。
「……さっきからなんとなく手持ちから物を出し入れしてるけどどういう仕組みなんだろう?」
虚空庫的な奴かなと考えているとふとあることが頭をよぎった。
「コレ、ゴブリンも入れれるんじゃね?」
入った、いとも簡単に。
所持品にゴブリンとホブゴブリンと縄が追加された。
はじめまして、3つ目の投稿で初めて前書き、後書きを理解した男【コウ部長】です。
超不規則投稿になると思いますが、暇つぶしに読んで頂けると嬉しいです