4.草原の民2
「お邪魔します。」
私は暖簾のようになっている入り口からテントに入る。
テントの中は思っていた以上に広かった。キッチンもテーブルもベッドも何もかもが揃っており、何不自由ない生活ができているようだった。キッチンといっても竈と台があるだけだが。
「まあ、かけろや。」
リアノは私に一枚の座布団のようなものを渡してそう言った。床には絨毯が敷かれていたが、みんな土足で上がっていた。
「あなた、この方は?」
キッチンで料理の支度をしていたリアノの奥さんが尋ねる。
「ちょっとな・・・気にせず進めておいてくれ。」
「あらあ、晩御飯は一人前多くつくらないとね。」
奥さんはのんびりとした声でそう言って料理に戻った。
「聞かせてもらうぞ、嬢ちゃんの事情を。流石に俺もどこの馬の骨かわからんやつを泊めるほどお人よしじゃねえ。」
リアノは神妙な顔をしてそう言った。
たぶん、助けてる時点で十分お人よしだと思うけどなあ。私だったら助けないか殺すかどっちかだし・・・
でも、これは話さないわけにはいかないわね・・・別に真実を話してもいいけれども信じなさそうよね・・・
「わかりました・・・信じてもらえるかわかりませんが話します。」
私も真面目な表情をつくってみる。私は演技が得意だ。誰もが助けたくなるようなか弱い女子を演じることなど造作もないことだった。
と言っても草原に捨てられたとかは信憑性がない。そもそもこの時代の文化を知らない私が下手に嘘をつくと嘘がばれる。ここは完全なる異邦人を演じるしかないのだ。
「私は・・・私は・・・気が付いたら草原にいたんです。教室で話してると急に意識がなくなって・・・どうしたらいいでしょう?」
私はそう言って泣き出した。
「私・・・不安で不安で・・・」
「すまんな・・・嬢ちゃん。」
「あなた何泣かせているのよ!この子が可哀想じゃない。」
私は心の中でニヤリと笑う。これで信用は得られた。これ以上事情を聞かれることはないはずだ。
私は少し経ってから嘘泣きをやめた。
「落ち着いたか?」
「すみません・・・取り乱してしまって。」
「問題ない・・・俺も悪かったしな。それより、お嬢ちゃんは迷い人だな。」
「迷い人?」
「俺も会ったのは初めてだが、この世界とは別の世界からやってくる人がいるらしい。帝国が熱心に保護してるらしいからな・・・」
「じゃあ、ここは異世界?」
私は芝居を続ける。それにしても転生者という概念が存在するは流石魔法がある世界だね。地球だったら変人として切り捨てられるのに。
「そう言うことになるな。」
私はまた悲しそうな表情をする。
「まあ、なんだ、俺たちが世話をしてやる。」
「いいんですか?」
私は目を潤わせながらそう聞いた。
「ああ、いいぞ。」
「ありがとうございます。」
「そう言えば、さっき龍の住んでいる場所に行きたいと言っていたが・・・何でだ?」
うっ、鋭いところをついてくる。何なら言わなきゃよかった・・・
「私のもといた世界では龍は何でも叶えてくれる存在でしたので・・・」
「ほう・・・」
「私を龍のいるところまで連れて行ってくれませんか?」
「嬢ちゃん、それは無理だ。それにこの世界の龍は嬢ちゃんが想像してるようなものじゃない。」
「それでもいいんです。どうか、お願いできませんか?」
私は上目遣いでおねだりする。
「あなた、いいじゃありませんか。どうせ途中までは行くのですし。」
「わかった、だが、俺たちにも生活がある。俺たちが移動するタイミングで移動して、それに途中までしか行けんがいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
こうして、私は草原の民と一緒に行動することとなったのだった。
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