23.地獄からの旅立ち
「それはのう・・・少し複雑なのじゃ。」
うーん、僕的にはライちゃんがいる世界・・・つまり地球に帰りたいんだけど。そういえば、レイさんがなんか言ってたような気がする・・・あんま覚えてないけど、重要な何かを。
「私はレイと同じ世界に行きたいな。どうせ元いた世界に戻ってもやることないし。」
「それはまあ、良いのじゃ。じゃが、元いた世界に戻すとなると面倒でのう・・・地獄へ送ったのに戻ってきたら神としてはたまったもんではないじゃろう?」
まあ、そうだけどさ。
「正直、レイとヴィレンドは大丈夫なのじゃ。2人は冤罪のようなものじゃしな・・・問題はアドルフなのじゃ・・・お主の罪は大きすぎる。元の世界に戻すわけにはいかんのう・・・」
「我は・・・レイと同じ世界でいい・・・」
本当は元の世界に戻りたかったようだ。だが、その選択肢がアドルフにはなかった。仕方なく、ベルと同じ世界にいくことになった。
「じゃあ、全員同じ世界にいくで良いかのう・・・」
「ちょっと待った、俺とレイは同郷なのか?」
「そうじゃ、お主らは同じ世界の神によってここに送られたのじゃ。まあ、その神が頭がおかしいだけなのじゃが・・・」
「大変申し上げにくいんだけど・・・僕は僕の好きな人がいる世界に帰りたい。」
「どう言うことだ?」
アドルフとヴィレンドが聞き返す。
「少し、記憶を覗かせてもらうかのう・・・」
ロッギは僕の頭に手を当てて、僕の記憶を読み取っていた。普通なら人の記憶を覗くと頭がキャパオーバーになるが、さすがは神。そんなことにはならなかった。
「ふーむ・・・お主、普通ではないな・・・」
いや、普通に生きてきたつもりなんだけどね・・・・気がついたら地獄にいたんだよね。
ベルが隣で1人でゲラゲラと笑いを堪えきれないでいる。
「そんな、面白い?」
「普通に生きてて地獄にくることはないよ。」
そう言ってベルは笑い続けた。
「お主の好きな人の魂を検索にかけてみるか・・・」
えっ、そんなことできんの?地獄でもIT化が進んでんのかな。普通にロッギさん、デジタル弱そうだけど。
ただ、ロッギは何かデジタル端末を取り出したわけでもなく、その場でぼーっとしていただけだった。
「ふうむ、よくわからんが、その魂はお主が地獄にきた前の世界におるぞ。」
「えっ、ライちゃんも異世界転生を?」
「正確に言うなら異世界転移じゃな。まあ、これでわしの手間は省けたのう・・・全員同じ世界に送ればいいだけじゃからな。」
そういえば、時間はどうなるんだろう?レヴィアタンとかに会えるのだろうか、それにレイさんもどうなっているか心配だ。
「この世界の時間軸は完全に狂っておってのう・・・よくわからんことになっておるのじゃ。できるだけ、お主がいたころの近くの時代に送ろうと思っているのじゃが、誤差はでる。それは勘弁するのじゃ。」
うーん、普通に困るけど・・・無理なものは無理なのだろう。元の世界に返してくれるだけどもありがたいと思わなきゃね。
「そういえば、僕とヴィレンドをここに送った神さまはどうするの?また、送り返されたら困るんだけど。」
「それは大丈夫じゃ、わしがお主らに手出ししてはいかんと伝えておくからのう。」
それなら安心だ。
「ありがとうございます。」
「やはりお主に地獄は似合わんな。」
「ですよねー。」
「自分で言っちゃう?」
ベルはそう言って大爆笑していた。
「ほれ、そろそろ送るぞ。」
「はーい。」
ベルはまるで遠足にいくような幼稚園児のように元気に返事をした。
「ベル緊張感なさすぎ、嬉しいのはわかるけど。」
ロッギは指を鳴らす。
そして、こう言ったのだった。
「達者でな。」
そこで、僕たちの意識は無くなった。
短かったですが、地獄編はここまでです。次回は魔女編の続きになります。楽しみにしていてください。
いつも読んでいただき有難う御座います。




