4.地獄へようこそ4
地獄は一言でいうと快適ではなかった。まあ、快適だったらそれはそれですごいんだけど。まずは辺りに漂う腐卵臭。これが結構きつい。温泉とかに行ったらするあの臭いだ。とにかく臭い。
「この臭いやばくない?」
「つらいのは最初だけだよー、すぐ慣れるって。」
「そうだな。」
ベルもヴィレンドもすっかり慣れてしまっているようだ。まあ、いつかはなれるだろう。
そして、このじめじめとした空気。まじで髪がぼさぼさになるんですけど。男子だったからなんも思わなかったけど、髪が長いってそれだけで結構大変なんだな。
しかも、じめじめしている上に暑い。梅雨の日で暑い日みたいな感じかな。まじで、この時点で地獄なんですけど。
そりゃ、地獄だからそうなんだけどさ。
「レイがさっきいたところはリスポーン地点だよー。」
ベルが地獄の説明を始めた。
「リスポーン地点?」
「えっとねー、地獄では八つの試練があってねー、それをクリアしたらこの世界から出ることができるらしいの。」
「もっとも、今までクリアした者はいないそうだがな。」
「それ、私が言おうと思ってたのにー、もう。」
「すまんな。」
「ヴィレンドの言う通り、クリアした人はいないのー。そして、一つの試練をクリアしても、次の試練で死んじゃったら、また最初から始めないといけないんだよねー。」
そもそも、地獄って死んで生き返れるってこと?永遠に出られないってことかな?それだったらまじで地獄だな。
「死んで生き返られるの?」
「そもそも、俺らは死者だからな。これ以上死ぬことはないぞ。」
え?僕死んでたんだ。普通に衝撃事実なんですけど。えっ、じゃあ試練突破したら生き返られるみたいな感じかな。でも、ベルはこの世界から出られるしか言ってないからな。
うーん、正直全然わからん。
「それでねー、一応地獄では四人でパーティを組んで試練に挑むことができるの。別に大人数がいいっていうわけじゃないんだけどね。私とヴィレンドはパーティを組んでて、見事にやられちゃってリスポーン地点に戻ったってわけ。」
へー、やっぱこの二人仲いいんだ。パーティ組むほどだもんね。
「俺はこいつが組んでくれって言ったから、仕方なく組んでやってるだけだ。」
「はあ、そんなことないでしょ。ヴィレンドが最初に言い出したんじゃん。」
いつもこんな感じなのかな。たぶん、こんな感じなんだろうな。見てて面白いからいいけど。
散々言い合ったあと、ベルが話を戻した。
「それでなんだけどー、レイ、私たちのパーティ入らない?」
「俺も入ってほしいぞ、ベルとばっかり一緒にいるとつまらんからな。」
「はあ?ヴィレンドの意見は聞いてないんだけど。」
「その話、我も乗せてはくれないだろうか?」
急にレイの後ろから声がする。
そこには、ちょび髭のおじさんが立っていた。
「ねえ、あなた誰?」
ベルはすかさず聞く。
「我はアドルフだよ。一人でここまで来てしまって何が何だかさっぱりだ。」
アドルフは少し笑ってそう言った。
「うーん、三人だとバランス悪いからいいけどさー、何者なの?」
「我は我だ。それだけだよ。」
「答えになってないぞ。」
ヴィレンドが少し怒ったような口調で言う。
しかし、アドルフはひるむことなく堂々としていた。
「まあ、いいんじゃない?ここには悪人しかいないんだしさ。レイはオッケー?」
「うん、いいと思うよ。」
「感謝する、レイ・・・そして・・・」
「ベルだよー。」
「ヴィレンドだ。」
ヴィレンドだけが不満そうな顔をしていたが、二人の決定に反対することはなかった。
こうして、四人のパーティが結成されたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
恐らく明日はお休みさせていただきます。




