26.レヴィアタンとカタラード2
最初に仕掛けたのはレヴィアタンだった。彼女はまず口を大きく開けて、瞬時にブレスを放った。そのブレスはカタラードに向かっていくが、彼はそれを見抜き、回避する。
最初から本気出したのに、避けられるはムカつくかしら。でも、最初から本気で行かないとすぐにやられてしまいそうだわ・・・
「最初から随分派手に仕掛けてくるではないか!」
どうやら、カタラードはこの状況を楽しんでいるようだった。
「相手が相手だからかしら・・・」
レヴィアタンはレヴィアタンでまだ返事をする余裕はあった。
「では、次は我が攻撃しようではないか。」
カタラードも容赦はしなかった。いくら格下だとは言っても相手は自分に次ぐ実力を持っている古の龍の一柱、油断していてたら一溜りもない。
両者の間には妙な緊張感が漂っていた。それは親愛にも近いような、憎悪にも近いような、それでもって敵味方両方を寄せ付けないような緊張感であった。
あそこに割り込んでいったら、確実に殺されるというような空気が辺りを覆い尽くしていた。それほどまでに2人が自身の尊厳を懸けて勝負をしていたのだった。
カタラードは予備動作を全く悟らせずにブレスを放った。それに加えて、多数の氷魔法を展開して、レヴィアタンに集中砲火したのだった。
あまりにも一瞬のことだったが、レヴィアタンはそれを察知してスレスレでその方位陣から脱出し、至近距離で黒いブレスを放った。
そのブレスはカタラードの左の翼の先端に直撃したのだった。
カタラードはそのまま体勢を崩すがなんとか持ち堪えたようだった。
「ほら、人の姿の方が避けやすいかしら。」
レヴィアタンは涼しげな顔をして、カタラードを挑発する。
内心ではヒヤヒヤしていたのだが、それを表には絶対に出さない。
「ふむ、貴様がいうことも一理あるな。だが、ブレスの威力はかなり落ちているようだが?」
2人ともお互いを挑発し合うが、2人ともそれに乗るほど馬鹿ではなかった。
最初にダメージを与えたのはレヴィアタンだったが、それはカタラードにとって致命傷とはなり得なかった。それはただのかすり傷程度にしかならなかったのだ。
つまりはレヴィアタンにはカタラードに致命傷を与えることができないということが証明されしまったのだった。
カタラードがこのことに気付くのも時間の問題かしら・・・それまでなんとか時間稼ぎをしないといけないわね・・・
レヴィアタンにできるのはレイの準備が整うまでの足止めだけだった。
「本当に自分の無力さに腹が立つかしら。」
レヴィアタンは誰にも聞こえないような声でそう呟いた。事実、レイが一回死にかけたのもレヴィアタンのせいのようなものだった。今回はレイが悪いが、もともとどうにかしないといけない問題だったのだ。それを先延ばしにして解決をレイに結局委ねてしまったのも、レヴィアタンだった。
カタラードが羨ましいかしら・・・
レヴィアタンは昔から嫉妬深かった。それは周りの龍たちが自分のもっていないものを持っていたからであったが、今は自分に満足していたのだった。友達はレイしかいないものの、それだけで十分過ぎるくらい幸せだったのだ。
「やはり、あなたを倒すしかないかしら・・・」
レヴィアタンはそういうと、闇魔法で黒い霧のようなものを生み出した。
「なんだ、これは?」
黒い霧は瞬く間に辺りを覆い尽くしてしまった。もちろん、レヴィアタンとカタラードは霧の中だった。
「自分で確かめるかしら。」
レヴィは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
その霧はゆっくりとカタラードの周りに集まり始めた。カタラードは魔力感知を頼りいブレスを放つが、レヴィはそれを華麗に避ける。ブレスが通ったところは一旦は腫れ上がるが、またもやそれは黒い霧に覆われる。
「うっ、体が思うように動かない・・・いや、時間が遅くなっている?」
「そうかしら。」
レヴィはカタラードの動きが鈍った瞬間を逃さなかった。彼女はすかさず暗黒弾をカタラードに向かって打ち込んでいく。
カタラードは全部を避け切ることができずに被弾してしまう。
「貴様!」
カタラードはダメージを受けているようだった。この機を逃すまいとレヴィは総攻撃を仕掛ける。ブレスと無数の暗黒弾をカタラードに向かって放つのだった。
またもや、避け切ることができずに先ほどよりも大きいダメージを受けてしまう。
しかし、カタラードは冷静だった。そして、気がつけたのだ。レヴィアタンが焦っていることを。
なぜ、こんなにも焦る必要がある?時間制限がある魔法なのか、それとも初見だけしか効かない魔法なのか?それならば、何か対処方法があるはずだ・・・
カタラードの勘は鋭かった。伊達に龍王をやっているわけではないのだ。
考えている間にまたもやレヴィアタンの攻撃が来る。この感覚に慣れてしまえば、避けれないことはないが、無数の暗黒弾を全て避け切ることは無理だった。
何か、何か手がかりはないのか・・・
そこでカタラードは気がついてしまった。自分が防戦一方だということを。最初に霧の中から攻撃したときに霧が少し晴れたことを。もし、全身を覆うように攻撃をすれば、霧が晴れるかも知れないということを。
「今に見ておれ・・・」
カタラードは自分の周りに風魔法を放つ。その瞬間、黒い霧がだんだんと晴れていったのだった。
「気づかれたかしら・・・」
レヴィアタンはこの結果を当然だとは思っていたが、あまりHPを削れなかったので少し悔しく思っていた。
「貴様にしてはなかなかではないか。」
逆にカタラードは思ってる以上にレヴィアタンが強いので、苛立ちを覚えていたのだった。
2人ともその内内の思いを表情には決して出そうとはせず、そのまま戦いは続いていくのだった。
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