17.氷龍ベリーズ2
やっぱ目の前で見るとでかいな。レヴィアタンもでかいけど、陸上だからかな、迫力がある。氷龍ベリーズは黄色のぎろぎろとした目で僕を威圧した。まるで下等生物を見下すように。
実際そうなんだけどさ。それでも、倒さないといけないんっすよ。悪いけど。
すべてはレイさんが悪い。僕にもこの氷龍にも罪はない。だが、この世界は弱肉強食。勝ったものが正義なのだから、勝つしかない。
氷龍ベリーズは一瞬驚いた表情をした気がする。一応トカゲだから同じような生物の表情はなんとなくわかる。ただ、確実にとは言えない。
ベリーズはブレスを吐く予備動作をする。僕は考える前に体が動いていた。
そして、僕の真横に氷の柱が出来ていく。僕は回避直後に距離を取ろうとするが、氷龍ベリーズはそれを許さなかった。
すかさず魔法で大量の氷の刃を作って、それらを僕の方に発射してくる。僕は超人的な素早さで確実に一つずつ避けていくが、避けるので精一杯だ。ここで、攻撃が来たら・・・・
ねえ、ちょっと待ってよ。ね、攻めた僕も悪いけどさ、反撃してコテンパンにしようとするって大人げないと思うなあ。
そして、すかさず飛んでくるブレス。
まじでなんなん?MP無尽蔵?こっちは二発しか撃てんというのにさ。これがいわゆる経済格差と言うやつだな。
『違います。』
あれ、レイさん突っ込む暇あんの?
『ないですけど、流石にこれは見過ごせません。』
仕事に集中してください。
『ブーメランですよ。』
そして、氷龍ベリーズは直接殴りかかってきた。
魔法がダメなら物理は脳筋すぎん?
僕はやっとのことで、その物理攻撃を避けて宙に舞った。しかし、それがベリーズの狙いだったのだ。
この小賢しい龍め。向こうはたぶんこの小賢しい下等生物がとか思ってるんだろうなあ。
空中では動きにくい。そこに目を付けられたのだった。
まずい。非常にまずい。これはダメージ覚悟でどうにかするしかないか。いや・・・
ベリーズが大きく口を開けて至近距離でブレスを放とうとする。
攻撃は最大の防御って誰かが言ってたよな・・・うん、信じよう。一か八か知らんけど。
いけ、暗黒球二発分の魔力を込めた暗黒球。
僕は目の前で暗黒球を発動させて、ベリーズの口に向かって撃ち込んだ。これで、相殺してくれればいいんだけど・・・
ベリーズはなりふり構わずブレスを放った。
白いブレスと黒い暗黒球とが正面衝突した。しかし、その結果は火を見るよりも明らかだった。
暗黒球はよく頑張ったと思う。何しろ最初の一秒くらいは食い止めたのだから。その一瞬で僕は何とか体を逸らすことができた。
うっ、下半身が全く動かない。痛みすらも感じない。それは地面に落ちた瞬間に砕け散ったのだった。
幸い?にも下半身だけが凍るだけで済んだ。いや、絶対幸いじゃない。でも、痛みがないのはまだよい。そのおかげで意識を保つことができている。
しかし、僕はもう瀕死の状態だった。辛うじて意識があるだけ。次の攻撃で絶対にやられてしまう。あっ、僕の人生ここまでか・・・・
やっぱ順当に人間目指してた方がよかったのかな。馬鹿なことをしたもんだ・・・欲をかいていなければ、もう一回ライちゃんに会えたかもしれないのに。
ああ、僕は愚かな人生を送ってしまったものだな。何一ついいことをしていないし、自分のためにしか、生きてこなかった。たとえ、いいことをしたとしても、それはただの偽善。ライちゃんに会いたいのも、それを目標としたのもただの自己満足のためだった。
たぶん、ライちゃんの心の中では僕はすでに死んだ存在なんだろうな。もう、過去の。思い出したくもない存在なんだろうな。
『感傷に浸っているところ悪いですが、準備ができたので発動しますか?』
ここは邪魔しちゃダメでしょ。まあ、死活問題だから許す。
やってしまいない、レイさん。
『ははあ。』
ノリいいな。死に際なのに。
氷龍ベリーズはすっかり僕を追い詰めた気分だったのだろう。そして、油断したのだろう。
ベリーズの頭の上に見覚えのある黒い球が現れる。ベリーズは現れた瞬間に気が付いて、即時離脱しようとする。
しかし、時すでに遅し。ブラックホールはベリーズを逃さなかった。それは、彼の一部の飲み込みながら拡大していった。
「ぎゃああああ。」
ベリーズの断末魔が辺りに響き渡る。そして、ブラックホールは彼のすべての飲み込み、そして、あっけなく消えてしまった。
「経験値が一定に達しました。
・・・
個体名:原始の生物 レイ(トカゲ) LV.80 がLV.100になりました。
各種ステータスが上昇しました。
スキル:レイ の機能が上昇しました。
進化条件を満たしました。
これより、強制進化を開始します。
個体名:原始の生物 レイ(トカゲ) が 原始の生物 レイ(暗黒龍)ヘ進化します。」
そして、僕は勝利の美酒を味わう暇もなく進化が開始したのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。