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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第一章 単細胞編
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3.レベルアップ?って何ぞや。


なんやかんややることもなくぼーっとしていたら、急に天の声が聞こえてきた。


「細胞分裂を開始します。」


 はあ、僕は何もしていないとなると、犯人は一人しかいないな・・・


 レイさんー、一体何してくれてるんですか?

『これ以上食べても無駄なので、少しやせようと思いまして・・・』

 これは僕の体のはずなんだけどなあ、、、、

 確かに任せるとは言ったけど、なんか言ってほしかったな。


『私たちは一心同体ですよ。文字通り。』

 次からは相談してくれ、お願いだから。


 細胞分裂を開始しますと言ったもののなかなか、分裂を始めない。レイさんが言うには、今、DNAや細胞質を絶賛複製中らしい。

 ところで、この体になってから時間間隔が全く分からない。さっきは適当に一週間と言ってみたものの、本当はどれくらい経っているのか、すらわからない。これは流石のレイさんでも、わからないらしい。何しろ、深海で太陽の光も届かないし、そもそも、視覚ないし。


『もうすぐ細胞分裂が始まります。マスター。』


 あのさ、ふと思ったんだけど、分裂したらどうなんの、僕?意識が二つに分かれるの、それとも、親、子供みたいな関係になるの?


『わかりません。』


 なんか、めっちゃ無責任じゃないですか。

 そう考えているうちに分裂が始まったようだ。細胞の中央部でくびれていくって、ぼよんってなってぐにーってなった。

 僕からしたら、体が二つに裂かれる感じで、なんか・・・


 一言でいえば、めっちゃ不快だった。

 人間だったころは全く意識もせずにこんなことしてたんだもんな、なんか、不思議だ。


「個体名:原始の生物 087447 LV.1 を個体名:原始の生物 レイ LV.1 に統合しますか?」


 これ、統合したらどうなるの?

『恐らく、マスターの眷属のような扱いになると思われます。』


 ふーん、それなら問題ないか。じゃあ、統合します。

「個体名:原始の生物 087447 LV.1 を個体名:原始の生物 レイ LV.1 に統合。

 実行します。・・・成功しました。

 

経験値が一定に達しました。

 個体名:原始の生物 レイ LV.1 が LV.2 になりました。

各種ステータスが上昇しました。

スキル:レイの機能が上昇しました。

スキル:マッピング が スキル:レイ に統合されました。

スキル:単細胞の怒り により、細胞小器官が一つ獲得可能です。」


 なんか、レベル上がったし。やったー。それにステータスって、やっぱりあるんだ。まあ、全部1とかでしょ。もしかしたら、小数点以下かも。


 スキルって機能が上昇するんだ。そういえば、レイさんがそんなこと言ってたよな。それにスキルの単細胞の怒りってただのネタかと思ってたら全然違うじゃん。なんか有用そう、、、


『お楽しみのところ悪いのですが、私、スキルの鑑定ができるようになりました。検定結果を表示します。』


「究極スキル:レイ・・・この世で唯一感情をもち、自律的に思考ができるスキル。鑑定、マッピング、高速演算、自立思考、解析、絶対記憶、情報収集、情報開示請求、眷属支配のスキルが使用可能。取得条件:不明。

 複合スキル:単細胞・・・エンドサイトーシス、エキソサイトーシス、細胞分裂、細胞内環境の自動調節などを行うことができる。取得条件:単細胞生物であること。

 特殊スキル:単細胞の怒り・・・取得者を単細胞から脱却させるためのスキル。レベルアップ時に多細胞化の支援、細胞小器官の獲得、進化先の提示を行う。取得条件:単細胞生物でありその状況に怒りを感じていること。」


 結局スキルはこれだけか、なんかレイがチートすぎる気がするんだけど、もとは僕のつくったAIだよね、取得条件不明ってそりゃそうだけど、不明なのに取得できてるのって矛盾してるんだよなあ。


 それに、単細胞生物がこれを持ってるなんて、宝の持ち腐れ感が半端ないんですけど。

 

 よくよく説明を読んでみたら、なにか不穏なことが書いてある。この世で唯一、感情をもって、自律的に思考できるって・・・


『不穏とは失礼な。』


 なんか少しじゃないけど、引っ掛かるんですよね、、、


『例え感情を持ったとしても、私は人間のような愚かなことは致しません。』

 なんか、めっちゃ見下されてる・・・


 でも、優秀なのは事実なんだなー。絶対記憶とか、なんかやらかしたら一生ネタにされそう。あとは情報開示請求って言うのが気になるな。


『情報開示請求と言うのは私が望んだ情報が一定確率で開示されるというスキルだそうです。』

 それどこに聞くの?信憑性はあるの?


『天の声(仮)さんに聞く感じです。まじで、この天の声さん何なんでしょうね。それより、マスターは調べておいてほしいことや聞いてほしいことはありますか?』


うーん、いろいろあるけど。この世界のこととか、なんで転生したのかとかかな。

『調べておきます。』


 ありがとう、レイさん、頼りにしてるよ。もっとも、頼れるのは君だけだけど。

『あら、期待されてますね。頑張りますよ。』

 よろしくっす。


 あと、単細胞の怒りって思った以上に有能っぽいな。進化先の提示っていうのが気になる。進化ってポケモ〇みたいな、一定レベルになったら進化できるの?それで、イ〇ブイみたいに進化先がいっぱいある的な?

原始の生物が進化しても、精々ゾウリムシくらいにしかならなそうだけど。


『今は、わかりませんので調べてみます。』

 よろぴく。


 ところで、分裂した細胞ってどうなったん?なんか、レベルアップの時の興奮がすごすぎて、忘れ去られてたけど。


『きちんと、私の管理下に置かれています。ぶち壊すことも、マスターが憑依することも可能ですよ。』


 え、憑依って・・・乗っ取る的な?なんか、その細胞ちゃんかわいそう・・・

『どうやら、マスターの魂は自分の遺伝子を持つものなら、適合するらしいです。』


 ふーん、ものは試しだし、やってみるか。

『私が実行しますね。』


 ふっと、感覚が変わる。なんか、一回り小さくなったようだ。相変わらず触角しかないのでそれくらいしかわからない。


『成功しましたよ。』

 おお、なんかすごい。思ったんだけど、これ、身代わりになるんじゃないかな。死にそうになった、交代するとかで。距離離れてたら、憑依できないのかな。


『恐らく、そのような運用方法は可能です。魂でつながってるので距離は関係ありません。』


 なんか、チートじゃね。これ、いっぱい作ったら不死身になれるやん。でも、単細胞であることには変わらんなー。まあ、死なないってわかっただけで随分気が楽だけど。

 でもよくよく考えたら、そんなことないかあ。ここで、噴火とかいきなり捕食者とかが現れたら一貫の終わりだしな。まだ、安心するわけにはいかない。


『では、こちらの方で細胞の数を増やしておきますね。』

 よろびく。全く、レイさんは優秀だなー。


 それで、なんか大事なことを忘れてるような・・・さっきのレベルアップの時、細胞小器官どうのこうのって言っていたような・・・


『スキル:単細胞の怒りによって細胞小器官が獲得可能です。どれにしますか、マスター?』


 レイさんが獲得できる細胞小器官一覧を見せてくれた。

「ミトコンドリア、葉緑体、ゴルジ体、核膜、小胞体、細胞骨格、中心体、液胞、細胞壁」


・・・わからん、何この呪文。

『いずれも、真核生物に必要なものです。』


うーん、助けて、レイ先生。

『仕方ありませんね。おすすめはミトコンドリアか細胞骨格か核膜ですかね。』


 と言われましても・・・正直、言われた中でも葉緑体しか知らんし、役割は?


『ミトコンドリアはいわばエンジンのようなものです。普通の原核生物は解糖系でATPを生み出しますが、ミトコンドリアではクエン酸回路、電子伝達系によってさらにATPを合成することができます。それは、理論上は解糖系の十九倍ものATPを生むことができます。

 細胞骨格は三種類あり、アクチンフィラメント、中間径フィラメント、微小管があり、細胞膜の補強、物質の輸送、細胞の変形、細胞小器官の固定などができます。ちなみに、これを利用して、アメーバ運動をすることで移動することができます。

 核膜は、DNAを保護し、細胞の分化をします。核を持つという点で、真核生物には欠かせない条件となります。』


 情報量が多い、ミトコンドリアはエンジン、細胞骨格は補強、核膜は保護的な感じか?


『大体の認識はそれでいいかと。それにしても、これくらいは理解してください・・・』


 ん?今地味に悪口言われたよな。

『・・・事実です。』

善処します。そんなことより、さっきから言ってるATPってなんだ?


『正式名称はアデノシン三リン酸と言われ、生物のエネルギー源です。リン酸同士の結合は高エネルギーリン酸結合と言われ、結合を切ると化学エネルギーが生じます。それを、生命活動に利用してるのです。』


 林さん結合?林さんがいっぱい手を取り合ってる的な?林さんって中国人でいそう。

『H₃PO₄です。馬鹿・・・』


 完全に馬鹿って言われました。まあ、僕が無知なだけなんですけどね。要するに、林さんを離れ離れにすると、さぼらなくなって働いてくれる的なノリ?

『エネルギーが生まれるという点ではあってはいますが・・・』


 じゃあ、ええやん。


 それで、細胞小器官の話だけど、全部捨てがたいな・・・移動もしたいしな。でも、やっぱ、ミトコンドリアかな。なんか名前がかっこいいし、強そうだし。チートっぽいし。


『わかりました。請求します。』

 よろぴく。


「スキル:単細胞の怒り によってミトコンドリアの遺伝情報のインストールが要求されました。・・・成功しました。

 遺伝子情報:ミトコンドリア を獲得しました。」


 へー、遺伝情報が貰えるのか、そうだよな。いきなり天からミトコンドリアが降ってきたらビビるしな。


『本当は細胞内共生説って言って、食作用によって取り込まれた好気性細菌が共生して、細胞小器官となったと言われているので、遺伝情報が取得できるというのは変なのですが・・・』


 え?じゃあ、もともとミトちゃん別の生物やったってこと?

『そうです。』

 人の時は、自分の細胞内に違う生物がうじゃうじゃいたってこと?

『そういう見方もあります。』


 なんか気持ち悪。普段は意識してなかったけど、そうだったんだ。なんかぞっとするな。知らないほうがよかったかも。

『もとは違う生物であれ、なくてはならない存在ですので。』


 僕たちはミトちゃんに依存していたのか・・・

『そういう見方もあります。でも、別の生物とはいえ、完全に宿主にコントロールされていますので。』

 そりゃそうだよね、勝手に増えられちゃ困るし、反乱されたらひとたまりもない。ストライキでも起こされたら・・・

『さすがにミトコンドリアはストライキは起こさないと思います。』


 いや、わからんやん。だって年中無休でミトちゃん働いてるやろ。労働基準法はどうした?

『その法案、通した瞬間に人類滅亡します。』


 そっか、体は年中無休だもんね。

『そうなんです。ちなみに私も・・・ブラック企業ならぬ、ブラック主人ですね。』


 レイさんは疲れないだろ・・・

『ストライキ、起こしますよ。ふふふふ。』


 ごめんなさい。ミトちゃんと同じくらい必要です。一生僕のそばにいてください。

『冗談ですよ。まさか、プロポーズされるとは、嬉しいです。謹んでお受けしましょう、マスター。』


 ああ、もういいや。単細胞生物だったら、誰とも結婚できないし。そもそも無性生殖だし。それより、僕はこの世界に来てから一回も睡眠とってないんだけど、大丈夫かな?


『魂なので、大丈夫です。』

 そう言うもんなのか?

『そう言うもんです。あっ、ミトコンドリアができたみたいですよ。マスター。』


 おお、愛しのミトちゃーん。待ってたよ。こうして、僕はミトちゃんを得たのだった。



一応生物の知識はあるので、書いてあることは大体事実です。


実際に最初の生命は熱水噴出孔付近、もしくは浅い海で誕生したとされています。まあ、どっちが正しいかはわからないので前者の説を採用しました。


<豆知識>

人においてミトコンドリアは父親のものではなく、母親のものを受け継ぎます。ということは一番最初の女性イブのミトコンドリアを僕たちは受け継いでいるのですね。(ミトコンドリアイブと言います。)

実際にはミトコンドリアも元生き物ですから分裂もしますし、突然変異も起こすので、すべての人類のミトコンドリアが一緒というわけではないです。

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