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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第三章 多細胞編
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2.結構前進?




「えー、こちら、海底四十メートルの浅瀬からお伝えしております、レイと・・・」

『レイです。』

「本日はレイレイコンビでお伝えいたします。まずはですね、見てください。この鰯の群れをいやー絶景ですね。」

 目の前には、渦巻いた鰯の群れが広がっていた。それはまるで一つの生き物のように一体となって行動していた。

『そうですね、これは群れをつくることで捕食者から食べられないようにするという目的があると考えられています。』


「なるほど、独りぼっちでいるよりも、みんなといたほうが楽しいですからね。」

『なんか理解してないですよね?群れでいると大きな魚に見えるので食べられにくくなるということです。』

「ほうほう、前世でいう労働組合みたいなものですね。」

『例えが絶妙でちょっと風刺している感がありますが、大体合ってます。』

「ということで、僕もこの群れに混ざりたいと思います。」




・・・どうして、混ざれるかって?それはですね、僕は何と鰯まで進化したんですよ。いやー、読者が驚いている顔が目に浮かびますね。自分もやっとここまで来たかという感じなんですけどね。


 本当に大変だった。単細胞から海綿そしてそこから円口類のヌタウナギのような生物になって、そこからいろいろあって鰯まで進化しました。やっと脊椎動物になった。本当に喜びでいっぱいだ。


 そう奥さん魚類ですよ、魚類。あの食卓に並ぶ数々の魚料理の一品になれるんですよ。まあ、人間に食べられたくはないけど。


 正直、ほとんどレイさんのおかげなんだけど。だって僕は言われるままに進化先を選択して、言われるがままに眷属増やして、食べ物食べて生活してるだけだもん。怠惰とでもなんとでもいうがいい。なにしろ怠惰のスキル持ちだからな、はっはは、と開き直るくらい、レイさんに頼りっぱなしだ。ただし、怠惰だが暇すぎた。結局毎回毎回思考低下をしてもらって体感ではそんなに経っていない感じだ。


兎に角、ここまで来れたのはレイさん様様である。ということで、いつもありがとう、レイさん。


『てへへ、私は当たり前のことをしただけです。』

 気のせいだろうか、レイさんがデレているような。

『気のせいです。』


 魚に進化して思うことはいろいろあるがまずは、動けるって素晴らしい。元々人間ということもあり、動けないのは地味にストレスだった。本当に寝たきりの人は尊敬します。全国の寝たきりのじっさん、ばっさんに敬意を表します。この世界いるかは知らんけどさ。


 あとは、目があるって素晴らしい。確かに魔法感知で見ることはできる。しかしやはり自分の目で見て体験する。当たり前だったが、そのありがたみが身に染みてわかった。そしておかえり、嗅覚と味覚と聴覚。まあ、食べてるのはオキアミで少しエビみたいな味がするだけだけど、嗅覚は素晴らしい。もしかしたら、人間の時よりもいいかもしれない。人間の時は海の中で匂いなんてしなかったけどさ。


 聴覚は微妙だ。かろうじて聞こえるくらいであまり影響はない。しかし、念話とレイさんが話しかけてきてくれているとき以外は全くの無音生活を送っていた僕にとっては大きな変化だった。いや、本当に五感のありがたみが感じられた。


 感じるって素晴らしいな。この世界をもっと広げてくれる。


 あとはいろいろスキルを獲得した。


 ステータスはこんな感じだ。


「個体名:原始の生物マイワシ レイ LV.20

スキル:レイ、下剋上、熱耐性(上)、毒耐性(上)、高圧耐性(上)、痛覚耐性(下)(new)、怠惰、暴食、傲慢、嫉妬、蘇生、再生魔法(下)、闇魔法(極)、系統(古細菌、真正細菌、原生生物)、遠視(new)、超音波(new)

称号:怠惰の王、暴食の王、傲慢の王、嫉妬の王、単細胞の王、野心家、蘇りし者、再生の支配者、強運

眷属数:1,526,700,000

ステータス:HP-10 MP-10 PA-11 MA-1 PD-2 MD-4 SP-4 LP-16」



「普通スキル:痛覚耐性・・・痛覚に対する耐性を獲得。取得条件:一定時間以上痛い思いをすること。

 普通スキル:遠視・・・遠くが見えるようになる。取得条件:ずっと遠くを見つめること。

 普通スキル:超音波・・・超音波を感じたり、発したりすることができる。取得条件:長時間超音波にさらされること。」


 新しく獲得したスキルに大したものはないけど、この超音波が海底のマッピングに大いに役に立っているそうだ。何せ、僕は何もしていないが、レイさん曰く作業効率が何重倍にも早くなったらしい。



レイさんと会話をしていると一斉に鰯の群れが瓦解して、みんな一目散に逃げて行く。

 ちょっと、みんなどこ行くんだよ。僕だけ置いて行くな。


しかし、周りの鰯たちは必死の表情だった。自分が鰯だということもあり、鰯同士の区別ができるようになった。まじでどうでもいい特技だけど、鰯は人間と同じで一匹一匹が違っている、ということが分かった。

 それにしても、さっきの子可愛かったな、なんて思ってしまうので、自分でもどうかしていると思う。はやく人間になって普通の美的感覚を手に入れたいものだ。


『この世界の美的感覚は場所によっても違いますし、時代によっても異なり、マスターの美的感覚が標準的なものであるとは限りません。それにマスターは雌ですし・・・』


 そう、まじで。どうにかしてほしい。なんか二分の一の確率で雌になってしまった。そのおかげでオスが鬱陶しい。鰯の中では魅力的な方なのかなと思い始めている。


 ちなみに性別は進化の際に変えることができるらしい。そこで雄にしてもらってもいいけど・・・まあ、それはやめておこう。


 それに美的感覚についてはレイさんの行っていることは一理ある。だって江戸時代の見返り美人図とか見ても全然美人とか思わないし、本当にあれが出て来たら逆に怖い。ましてや、平安貴族の美人さんとかがいたら、もしかしたら化け物だと思ってしまうかもしれない。




 何事も川の水のようにとどまることはないのだなと無常を感じていた僕に何かが話しかけてきた。まあ、予想はついてるし、さっきレイさんから連絡入ってだけどね。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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