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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第二章 魔女編
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8.愛されなかった少年



「めっちゃ詳しく語ったな。」

「てめーが聞きたいつったからだろ。」

「このあとどうなったの?」

「少女は憤怒の王に進化して、とある旅人に拾われていろいろなことしてここに至るってわけだ。てめーはどうなんだよ。」


「僕は、普通の生活を送っていると、この世界に召喚されて洗脳されそうになって、その人に従っているところを拉致されてここにいるのか?」

「何で疑問形なんだよ。」

「自分で言ってておかしいなって。」

「本当にそれだけか?」

「うん。」


 テラはじっとコージを見つめた。

「そんなに見つめられると照れるんだけど。」

 テラはそれでもやめなかった。そして、やっと口を開いた。

「じゃあ何でてめーはそんな全部を諦めたような顔をしてるんだよ。」


 コージは驚いた。そんなことを言われたことなかったからだ。そんなに自分を見てくれた人はいなかった。だからこそすべてを諦めていたのだが。



 コージに居場所はなかった。ラブラブな両親の間に生まれたのはいいのだが、この親、子供よりも伴侶を大事にしていたのだ。まさに熱が冷めることがない理想的な夫婦だった。それゆえ、子供のことはどーでもよかったのだ。端的に言うと育児放棄である。コージは両親には全く愛情を注がれなかった。



 唯一、コージをまともに見てくれたのはおばあちゃんだった。コージがおばあちゃん子になったのはいうまでもない。しかし、そのおばあちゃんが中一の時に他界してしまった。それ以来、コージの居場所は存在しなかった。学校では、いつも寝ていると先生と生徒に馬鹿にされた。それでも頭はよかったので、進学校に通うことになったのだ。


 そして、高校になってから、さらにコージの居場所はなくなった。いつも授業中寝ているのに、テストはできるコージを妬む人や軽蔑する人がさらに増えた。しかし、コージは

すべてを諦めていた。だからどうでもよかった。どうせ、誰もまともに相手をしてくれないと決めつけて。


 村八分されている中で話しかけてくれる人は何人かいた。その一人が、祐天寺雫という美少女だった。彼女は学級委員をしており、クラスの中核を担っていた。コージにとってはどうでもよかったのだが。なぜか、コージに話しかけてきた。コージはいつも面倒だったので生返事しかしなかった。そう言えば、彼女も召喚されていたような気がする。今もまだ洗脳されて王城にいるだろう。コージにとってはどうでもいい話である。



 そして、目の前にいる彼女もコージにとってはどうでもいい存在だったのだ。さっきまでは。



 ふとコージは考える。彼女なら僕をきちんと見てくれるのではないか。コージは愛情に飢えていた。親を筆頭にほとんどの人に無視されてきたことの反動だろう。それでも、コージは人を信用できなかった。テラロッサと同じように。もちろん、親を殺されたりはしていないが、甘い言葉に何度騙されたことか。その人たちはただコージを利用しようとしていただけであった。



 テラロッサとコージの境遇は少し似た者があった。一人は愛情をすべて奪われ、人間を信用できなくなった。そして、一人は誰にも愛されることがなく、人を信じられなくなった。世の中の理不尽が引き起こした結果だった。だからこそ、テラロッサはコージに惹かれたのかもしれない。彼女はそれを自覚はしていないものの。


 一つ、この人を信じてみようと思った。騙されてもいい。それならまた人を信じなくなるだけだから。これがコージの最後の決断だった。


「なあ、いつまで考えてるんだよ。」

 テラロッサがフォークでソーセージをいじりながらコージに尋ねる。

「ごめん。」

 コージの顔色はよくなっていた。

「てめー、なんかましな目になったじゃねーか。」


 もちろん、テラロッサはコージの考えを知る由もない。だが、直観的に何かが変わったことを理解した。

「そうか。」

 それは疑問ではなく、肯定だった。


 そして、二人は新たな道を歩み始めたのだった。


次はライちゃんの話に戻ります。


いつも読んでいただきありがとうございます。


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