8.愛されなかった少年
「めっちゃ詳しく語ったな。」
「てめーが聞きたいつったからだろ。」
「このあとどうなったの?」
「少女は憤怒の王に進化して、とある旅人に拾われていろいろなことしてここに至るってわけだ。てめーはどうなんだよ。」
「僕は、普通の生活を送っていると、この世界に召喚されて洗脳されそうになって、その人に従っているところを拉致されてここにいるのか?」
「何で疑問形なんだよ。」
「自分で言ってておかしいなって。」
「本当にそれだけか?」
「うん。」
テラはじっとコージを見つめた。
「そんなに見つめられると照れるんだけど。」
テラはそれでもやめなかった。そして、やっと口を開いた。
「じゃあ何でてめーはそんな全部を諦めたような顔をしてるんだよ。」
コージは驚いた。そんなことを言われたことなかったからだ。そんなに自分を見てくれた人はいなかった。だからこそすべてを諦めていたのだが。
コージに居場所はなかった。ラブラブな両親の間に生まれたのはいいのだが、この親、子供よりも伴侶を大事にしていたのだ。まさに熱が冷めることがない理想的な夫婦だった。それゆえ、子供のことはどーでもよかったのだ。端的に言うと育児放棄である。コージは両親には全く愛情を注がれなかった。
唯一、コージをまともに見てくれたのはおばあちゃんだった。コージがおばあちゃん子になったのはいうまでもない。しかし、そのおばあちゃんが中一の時に他界してしまった。それ以来、コージの居場所は存在しなかった。学校では、いつも寝ていると先生と生徒に馬鹿にされた。それでも頭はよかったので、進学校に通うことになったのだ。
そして、高校になってから、さらにコージの居場所はなくなった。いつも授業中寝ているのに、テストはできるコージを妬む人や軽蔑する人がさらに増えた。しかし、コージは
すべてを諦めていた。だからどうでもよかった。どうせ、誰もまともに相手をしてくれないと決めつけて。
村八分されている中で話しかけてくれる人は何人かいた。その一人が、祐天寺雫という美少女だった。彼女は学級委員をしており、クラスの中核を担っていた。コージにとってはどうでもよかったのだが。なぜか、コージに話しかけてきた。コージはいつも面倒だったので生返事しかしなかった。そう言えば、彼女も召喚されていたような気がする。今もまだ洗脳されて王城にいるだろう。コージにとってはどうでもいい話である。
そして、目の前にいる彼女もコージにとってはどうでもいい存在だったのだ。さっきまでは。
ふとコージは考える。彼女なら僕をきちんと見てくれるのではないか。コージは愛情に飢えていた。親を筆頭にほとんどの人に無視されてきたことの反動だろう。それでも、コージは人を信用できなかった。テラロッサと同じように。もちろん、親を殺されたりはしていないが、甘い言葉に何度騙されたことか。その人たちはただコージを利用しようとしていただけであった。
テラロッサとコージの境遇は少し似た者があった。一人は愛情をすべて奪われ、人間を信用できなくなった。そして、一人は誰にも愛されることがなく、人を信じられなくなった。世の中の理不尽が引き起こした結果だった。だからこそ、テラロッサはコージに惹かれたのかもしれない。彼女はそれを自覚はしていないものの。
一つ、この人を信じてみようと思った。騙されてもいい。それならまた人を信じなくなるだけだから。これがコージの最後の決断だった。
「なあ、いつまで考えてるんだよ。」
テラロッサがフォークでソーセージをいじりながらコージに尋ねる。
「ごめん。」
コージの顔色はよくなっていた。
「てめー、なんかましな目になったじゃねーか。」
もちろん、テラロッサはコージの考えを知る由もない。だが、直観的に何かが変わったことを理解した。
「そうか。」
それは疑問ではなく、肯定だった。
そして、二人は新たな道を歩み始めたのだった。
次はライちゃんの話に戻ります。
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