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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第一章 単細胞編
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2.単細胞って何食べんの?

 ああ、お腹空いた。単細胞生物ってお腹すくんだな。まじで、何も見えないし、におわないし、聞こえないし。でも、感じはいい。なんかお風呂に入ってるような気分だ。唯一触角だけはかろうじてある気がする。


『気持ちがよいのはここの海水温が四十度前後で安定しているからだと考えられます。』

 そう言えば、深海の温度って摂氏四度くらいだったはず・・・何で、四十度?

いくら熱帯でも、深海の海水温は他の緯度とはあまり変わらないのだ。


『マスターがいる環境は熱水噴出孔と言われる場所で常に四百度の熱水が湧き出ている場所です。』

 熱水噴出孔、何それおいしいの?

『まあ、海底火山の小っちゃい版です。』


 えっ、そんなとこいて大丈夫なの?

『実際の熱水が出てるところからはだいぶ離れているので大丈夫です。それにここは生物にとって、とても恵まれた環境と言ってもいいでしょう。』



 へ、なんで?

『まず、水温が四十度と言う、酵素活性が一番良い温度です。そして、深海なので捕食者が少ないということ。さらに、ここには生命活動に必要な有機物が余るほどあるということです。』


 うんよくわからんが、なんかラッキーみたいだな。意外に悪くない?いや、でも、転生したんだからな。もっと当たりでもよかったのに。せめて、目に見えるサイズであってほしかった・・・しかし、何を言っても変わらん、なら、この状況は大不幸中の幸いと言うべきだろうか、もちろん、不幸99対幸い1だけど。


『それ、どう見ても、ただの不幸な人じゃないですか。』

 いいかい、レイさん。世の中には言っていいことと悪いことがあるのだよ。


『はいはい、そうですか。』

 なんかAIにあしらわれるとムカッとくる。それはひとまず置いといて、単細胞生物ってどうやって食事するの?


『それはですね、じゃがじゃが・・・』

 もう、そういうのいいから、さっさと教えて。

『冷たいです・・・マスター。』


 拗ねちゃった?このAI感情豊か過ぎません?下手したら、僕よりも自己主張しているような・・・


『食べる方法ですね。』

 なんか元に戻った。

『それは、すなわちエンドサイトーシスです。』


 ナニソレオイシイノ?


 って言うか、インターネットもないのにさっきからレイさんいろいろ教えてくれるのはなんでだ?

『それは私が有能だからです。』

 確かに有能であることは間違いないのだが・・・なんか腑に落ちない。まあ、これも気にしたら負けな奴だ。ということで、エンドサイトーシスとは何ぞや?



『よくぞ、聞いてくれました。エンドサイトーシスとは外界からの物質を細胞内に取り込むことです。食作用と飲作用に分かれ、食作用は比較的大きいものを食べるとき、飲作用は小さいものや液体を取り込むときに使われます。』


 ほうほう、まあ、要するに細胞が食べるってことですね。じゃあ、用語要らなくね。

『それは地球の生物学者たちに文句を言ってください。』

 そうですよね、グッチっても仕方ないですよね。で、具体的にどうするの?今のところ、体を動かすこと自体出来ない気がするけど・・・


『普通は膜状のリン脂質がへっこんで、その中に入った液体を中に取り込むんですけど、もしかしたら、スキルとかあるかもしれません。』

 そっか、スキルか、なんか一番異世界じみてるよな。ここが地球じゃないってことは天の声で察したからな。


 スキル:エンドサイトーシスを使用。と念じてみる。


「複合スキル:単細胞 のエンドサイトーシスを使用します。」


 おっ、なんかうまくいった。その瞬間、僕を包んでいた細胞膜が形を変え始めた。そして、膜の一部が細胞内に取り込まれる。なんだかくすぐったい気分になった。


「続いて、複合スキル:単細胞 を用いて、リソソームを合成し、摂取した物質を分解しますか?」


 なんか、スキルが提案してきた。そうか、食べるだけじゃダメなのか。となると、します。と念じる。


「複合スキル:単細胞 を用いて、リソソームを合成し、摂取した物質を分解します。」


 なんか、しゅわーって言った気がする。分解が終了されると体を作る成分へと作り替えられていく。


「経験値を獲得しました。」


 !!経験値やと、これはゲーマー心をくすぐるな。まあ、ゲーマーではなかったんだけどね。ゲームはほどほどにしてたけど、こうなるんだったらもっとしといたほうがよかったのかな?


『わかりません。』

 そうでしょうな。一応、経験値って何?

『経験値とは敵を倒したときなどにゲームなどで得られる、ポイントみたいなものです。一定の値を超えるとレベルアップができ、個体が強くなることがあります。』


 敵倒してなくね?そこら辺の物食べてるだけじゃん。というか、今、僕何を取り込んだの?言われるままにスキルを発動させてしまったけど、そこら辺の物勝手に食べて大丈夫なの?


『問題ありません。熱水噴出孔付近では盛んに有機物が合成されています。例えるなら、ワイン風呂に入って、そのワインを飲んでいるような感じです。』


 なんか、微妙な例えだな・・・なんか、衛生的に良くなさそう。

『安心してください、マスターは小さいのでどんなに頑張っても他の生物を食べるようなことはありません。』

 ならいいけど・・・


 そう言えば、さっき鑑定したとき、さりげなくレベルって出ていたような気がする。その時、天の声が聞こえてきた。


「個体名:原始の生物 レイ LV.1 スキル:レイ、マッピング、単細胞、単細胞の怒り」


 あれ、鑑定発動させてないのに・・・

『私が発動させてみました。』

 へ?そんなことできるの、なんか有能じゃね。知ってたけど。


『もっと、褒めてくれてもいいんですよ、マスター。』

 わー。すごいすごい。


 それはそれとして、さっきなんか、突っ込みどころ満載だったような。まあ、LV.1は良しとして、スキル:レイって何よ。

『てへ、たぶん、私この世界に適用するためにスキルになったようですね。』


 だから、感情があるのか・・・て、スキルが感情持ってどうるんや。ていうか、しゃべれるスキルも十分おかしいと思うけど。

『それは、誉め言葉として受け取っておきますね。』


 とまれこうまれ、今まで助けてきてくれたから、感情を持っても、ありがたいことには変わりない。

『それは嬉しいですね。』

 


とりま、それは置いといて、スキル:マッピングって何ぞや。スキルって鑑定できないのかな?

『やってみましたが、今はできないようです。個体レベルが上がれば可能かもしれません。マッピングは名前から推測する限り、自動的に地図を作ってくれる機能だと思われます。』

 なんか、便利そう・・・って、移動できない僕にとってはあまり意味がないような・・・ないよりかはましだ。うんうん。


 そのあとは、レイさんが勝手に単細胞スキルを駆使して、僕からしたら、自動的に体内に栄養が入ってくるようになった。分解し終わると、いちいち、天の声が、

「経験値を獲得しました。」

って言うのが少しうざいけど、仕方ない。そういう世界なのだから。

 

これで、僕の空腹は解消された。というか、なんか常時レイさんがエンドサイトーシスしてくれるおかげで、体が大きくなっていくのを感じる。聞いてみると三マイクロメートルだったのが、経った一週間くらいで五マイクロメートルまで成長したらしい。恐るべし、レイさんパワー。


『肉眼で見てもまだ見えませんけどね、、、』


 知っとるわ、シャラップ!


<筆者のつっこみ>

主人公の知識の偏りがすごい気がします。

何で深海の水温が4度くらいなのは知ってて、ミトコンドリアは知らないの?


あんまり気にしないでください。



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