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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第二章 魔女編
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6.意外にやさしい?




 コージは何が何だかわからなかった。突然美女に抱っこされ、そして空を飛んでいる。風が痛い。そして、かなり上空を飛んでいるらしく寒い。しかし、コージのことはお構いなしにテラロッサは飛んでいる。

 この世界って空も飛べるんだと思った。そして、下を見て背筋がぞわったとした。彼らは上空五千メートルくらいのところ飛んでいた。少し行くと、海が見えてきた。そして、その海を越えた先がテラロッサの住処だった。


 そこは、一面真っ白の世界だった。文字通りに。コージは今にも凍え死にそうだった。

「さ、さ、さびい・・・」

「大丈夫だ、すぐに熱耐性を取得できるぞ。」

 何その脳筋みたいな考えと思ったが、コージは寒くてしゃべれない。


 テラロッサは雪原の中、震えて冷たくなっているコージの手を握って、彼女の住処へと向かった。

 雪原の中に大きなログハウスがぽつんと一つだけ建っていた。


 その中は、本当に暖かった。薄着でいたコージは家に入って暖炉を見るなり、すぐさまそのもとへと駆け寄り、自分の身を温めた。

「おい、まずは風呂に入れ。汚れるだろ。」

 コージは汚物扱いされるのは気に入らなかったが、風呂で暖まりたかったので素直にテラロッサに従った。脱衣所で服を脱ぎ、お風呂に入ろうとした。しかし、そこにはからの浴槽があるだけだった。浴場は広く、普通の部屋一つ分くらいあった。その分お風呂も広々としていた。


「どんだけ、早くはいりてーんだよ。」

テラロッサはコージが裸にも関わらず、気にせず脱衣所の扉をがらっと開けて入ってきた。

「ちょ、ちょっと、何してるんですか?」

 コージは後ろを向く。

「お湯を入れてやろうと思ってきたのに、いらねーのか?」

「いや、いります。入れてください。」

 テラロッサは水魔法と熱魔法を融合してお湯を沸かし、ドバーと浴槽にお湯を張った。

「ありがとうございます。」

 この世界は便利だなと思いつつ、お礼を言った。

「おう。」

 テラロッサはそう言って出て行った。



 コージはお風呂に入ってふうと息をついた。本当によくわからない。異世界に召喚されて、人殺しをさせられて、拉致された。そして、こうして美人の家の風呂に浸かっている。本当に世の中何が起こるかわからないものである。


「着替え、置いておくぞ。」

 脱衣所でテラロッサの声がした。

「ありがとうございます。」

 コージは意外にテラロッサは優しいのではと思った。見ず知らずの自分を世話してくれるくらいには。コージの中でテラロッサの評価が少し上がった。


 鑑定で自分のステータスを見てみる。

「個体名:人間 津田浩二 LV.4 スキル:精神攻撃耐性(中)、熱耐性(下)、怠惰、安眠、鑑定、鑑定妨害、精神魔法(中)、火魔法(下)、水魔法(下)

 称号:怠惰の王、睡眠の王

 ステータス:HP-140 MP-140 PA-170 MA-120 PD-70 MD-80 SP-7 LP-130」


 いつ見てもすごいよな。まるでゲームの世界だ。コージはゲームが好きだった。それ以上に睡眠が好きだったが、その次くらいにゲームが好きだった。だから、何もわからない見知らぬ土地に来ても少し興奮していた。もっとも、ずっと眠そうにしているので誰にもわからない。

 魔法って頑張れば使えるようになるのか?それに鑑定って、まさにゲームだな。


 ためしに浴槽の水を鑑定してみた。

「水 温度40度 成分 ナトリウムイオン(微量)、塩化物イオン(微量)、その他。」


「おお!」

 思わず声を出してしまう。結構詳しいんだな。このようにして、コージはのぼせるまで周りのものを鑑定しまくった。


 そして、お風呂からでて、タオルで体を拭いた。そして、ふとテラロッサが用意した着替えを見る。

「へ?」

 拍子抜けしてしまった。そこには、パンツ、下着、ワンピース、靴下が置いてあった。

「・・・全部女性用じゃねーか。」

 コージは愚痴った。いや、もしかしてこれはテラロッサの趣味なのか?男性に女性の格好をさせるのが流行っているのか?

 しかし、コージの服はすでに回収されており、どこにも見当たらない。仕方がなくコージは用意されたものに着替える。流石に裸で出て行くのは気が引けた。


「おお、思ったより似合ってるな。」

 リビングに戻るとテラロッサがご飯の準備をしていた。おいしそうな料理がテーブルの上に並んでいる。

「何で女性物だけ・・・」

「あん?文句あんのか?俺しか住んでねーから女もんしかねーんだよ。明日買いに行ってやるから我慢しろ。」

「はい・・・」

 コージはすっかり萎縮してしまっている。テラロッサも同じ格好でお揃いだなと思った。


「なに突っ立ってんだ?飯いらねーのか?」

「いります。」

 本当になんか理不尽だな。コージは席について、ご飯を食べ始めた。

「うまい・・・」

「そりゃ、毎日作ってるからな。」


「ここはどこですか?」

「ああ?ここは俺の家だよ。」

「そういう意味じゃなくて、世界のどこですか?」

「ああ、それなら・・・」

 テラロッサは光魔法で世界地図を映し出した。コージは一度王城で世界地図を見たことがあったが、それよりも正確なものであるようだった。

「ここだ。」

 テラロッサは地図の一番下のほうの大陸の半島を指した。表示にはその大陸は氷大陸と呼ばれている。ほとんどが南極圏にあり、地球の南極大陸に似ていた。通りで寒いわけだった。

「何でこんなとこに?」

 どう考えてもアネクメーネだった。

「人がいないからだ。」

「・・・」

 それは誰もいないからさぼっていても何も言われない。だから、ずっと寝ていてもいいということなのでは?


 コージはすぐに楽しようと考えてしまう。

「ずっと寝てるのはなしだぞ。」

 心を読んだ?コージは急に怖くなった。

「はじめに言っておく、俺は人間がだいっきれーだ。だから、極力人とは関われねーようにしてる。だからここにいる。それだけだ。」

「はあ、」

「今回は気まぐれでてめーの世話をすることにしたがな。」


 本当に気まぐれなのか、などとコージは思った。

「そう言えば、テラロッサさんはどうやって憤怒の王になったのですか?」

 コージは恐る恐る聞いてみる。できれば逆鱗には触れたくない。テラロッサは、食事している手を止める。

「テラでいい、俺とお前は対等だ。敬語も使わなくていい。そんなことしてたら他の大罪王になめられるぞ。」

「はあ・・・」

 テラは少し黙っていた。そして、話始めた。


<豆知識>

アネクメーネって何ぞや?


 まず、用語自体は地理の用語で意味は人が住めない土地、つまりは栽培限界より北限や砂漠などのことである。これとは逆に人が住める場所はエクメーネという。ちなみに南極や砂漠に人は住んではいるが、一時的にしか住んでいないのでアネクメーネという。

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