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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第二章 魔女編
18/106

5.大罪王



「ねえ、ヴィレンド。こいつ全然起きないよー、叩き起こしちゃおうか?」

「うーむ、流石は怠惰と言うべきか。そうじゃな、全員揃ったことだし起こしてしまえ。」

 ヴィレンドは待つのが面倒になったのか、ベルの提案を承認した。ベルとヴィレンド以外にももうすでに四人席についていた。


 その部屋は豪華なシャンデリア、そして大きな壁画があり、ドアと反対側には大きな窓ガラスが外の景色が見えた。部屋の中央には大きな円卓があり、椅子が七つ用意されていた。

ベルは津田浩二をお姫様抱っこするように席に座っていた。そして、時折彼の黒い髪をいじったり、ほっぺたをつねったりして、


「うふふ、かーわいい。」

 と妖美な笑みを浮かべていた。



ベルは身長は百六十センチくらいで美しい青いドレスを着ていた。そして、その容貌は途轍もなく美しかった。流れるような金髪に端正な顔立ち、そして少し大きい胸。大人らしい、すこしエロいオーラを出しており、ほとんどの男性の目は彼女にくぎ付けになってしまうほどの美しさであった。

そして、彼女に言い寄られて耐えきれた男性は数えるほどしかいないらしい。その他はすべて彼女の虜となり、永遠の忠誠を誓う羽目になってしまうのだ。

それが彼女のスキル:色欲だ。そして、目の前の獲物がベルに引っ叩かれて、目を覚ました。

「いってーな。」

 津田浩二はそう言って目を見開いた。そして、そこにいる絶世の美女に目を奪われた。そして、ベルは浩二にキスをしようとその紅の唇を彼の口に近づける。


 しかし、そこで浩二は本能的にそれを回避し、ベルの膝から脱出する。

「ベル、いきなり誘惑するのはやめてやれ。」

 ヴィレンドの反対側の席に座っていた、黒いスーツ姿のダンディなおっさんがそう言った。


「ええ、この子かわいいからしもべにしようと思ってたのに。」

 ベルは少ししょんぼりする。

「どうなってるの?」

 浩二は状況が全く読み込めてなかった。気を失って、気が付いたらここにいたのだ。しかし、数日前にもこのような経験をしてるので慌てることはない。

「とりあえず、座るのだ。」

 ヴィレンドはベルと彼の間の空席を指した。ここに座れという意味なのだろう。浩二(以下コージ)は遠慮もせず座った。


「では、わしが説明するかの。その前にわしは傲慢の王、ヴィレンドじゃ。わーははっは。」

 ヴィレンドと名乗った、水色の髪、水色の目をしたおじさんは大声で笑った。どうやら陽気な人らしい。コージは何で笑ったのか疑問に思ったがとりあえず聞き流す。

「お主、スキル:怠惰を持っているのだろう?」

「はい・・・」

 コージは恐縮して答える。この人には逆らえない気がした。


「この世界にはいくつかの伝説スキルがある。どれもすごいものなのだが、その中でも一線を画すのが大罪系スキル、すなわち、傲慢、嫉妬、色欲、暴食、強欲、憤怒、そしてお主が持つスキルである怠惰じゃ。」

 なるほど、自分の持っていたスキルはとんでもなくすごいものだとコージは理解する。


「その大罪系スキルを持っているものを大罪王と呼び、大罪王の会議というのが催されるのじゃ。」

「だから、僕が連れてこられたというわけか。」

「そう、この会議発足以来、怠惰は取得条件が厳しすぎて誰も取得することができなくてな、ずっとその席が空席だったんじゃ。」

「なるほど、この会議の目的は?」

「主に秩序の維持じゃな。あとは同胞どうしで集まるということじゃ。」

「ふーん。」

「ねえ、ヴィレンド、そんな話どーでもいいから、この子が参加するかきこーよ。」

 ベルがテーブルに肘をつき、催促する。

「では、コージよ、お主はこの会議に参加するか?」

 いや、めんどそうだけど、この流れは参加しないわけにはいかないよな。

「あれれー、なに迷ってるのかな?君には決定権なんてものはないんだよー。ヴィレンドが優しいから聞いてあげてるだけだからね。」


 この少女怖い。普通に脅迫してくるって、絶対にたぶらかされないようにしようと心に誓うコージであった。実際、彼女の誘惑や色欲に抵抗している時点でコージはすごいのである。普通の人ならすでに虜となっているところである。


「わかったよ、参加すりゃいいんだろ。」

 コージは仕方がなく参加することにする。しかし、結果的に彼にとってはあの王城にいるよりかは、よかったのである。

「うむ、では異論のあるものは?」

 誰も何も言わない。大丈夫なようである。

「では、これにてこの会議はコージを入れて七人となる。」

 みんなが拍手した。


 ここで、ひとまず大罪王の会議の概要を説明しておこう。これは、大罪系スキルを持っている個人が参加するものであり、強制力は個人に対してのみ有効である。全会一致制で議案が可決された場合それは大きな意味を持つことになる。


「では、自己紹介じゃな。わしはしたからベルからするのじゃ。」

 ヴィレンドに言われてベルは席を立つ。いつ見ても美しい。

「はいはーい、私はベルで色欲の王だよ。大罪王の会議のアイドル的存在だよー。よ、ろ、し、く、ね。」

 なんか口調は少し腹立たしいが、かわいさ、美しさがそれを上回る。


 次に席を立ったのは、黒いワンピースを着たお姉さんだ。いつもしかめっ面をしているようだが、彼女も美しい。漆黒の瞳とロングヘアをしており、黒がよく似合っている。肌はそれとは対照的に白く、みずみずしい。

「俺はテラロッサ、憤怒の王だ。まあ、精々がんばれ。」

 何を?と思ったが、コージは黙っていた。たぶん自己紹介が面倒臭かったのだろう。わかる、その気持ち。


「私の名前はロージョと申します。一応暴食の王をしております。」

 テラロッサの横に座っていた。みたからに紳士なおじさんが立ち上がり、礼儀正しく挨拶をっした。彼は黒のスーツに黒のネクタイ、黒の帽子をかぶっていた。そして、その左手には杖を持っている。顔立はイケメンであり、丸眼鏡をかけていた。そして、目につくのがあごひげ、典型的な紳士みたいな感じである。


 次に席を立ったのは、瞳、髪ともに紺色をしたお姉さんだった。優しそうな顔をしており、コージは好感を持った。彼女は白いワンピースを着てテラロッサとは真逆であった。ここにいる女性は三人だけだったが、全員美女、美少女であった。

「私は嫉妬の王、レヴィアタンよ。この中では一番古参かしら。おーほっほほ。」

 そう言って、彼女は微笑んだ。よさげな人であるが、計り知れない気がした。


 最後はめちゃくちゃマッチョなお兄さんだった。彼は柔道着のような白い服を着ていたが、それがはちきれそうになるくらい筋肉が発達していた。彫が深く、険しい顔をしていて、常にコージは威圧されているような感覚だった。

「俺様の名前はウォレスだぜ。強欲の王だ。これからよろしくな。」

 ウォレスは見た目に反してノリがよさそうで優しそうな人だとコージは思った。


 

「おい、お主も自己紹介じゃ。」

 コージは完全に油断していた。コージは何も考えていなかったが、みんなの自己紹介が必要最低限にも満たないものだったので、安心して適当に自己紹介をした。


「僕は津田浩二です。実感はないですけど、怠惰の王・・・らしいです。最近この世界に召喚されました。えーと、よろしくお願いします。」

こうして全員の自己紹介が終わった。




「では、次の議題じゃ。コージは見ての通りレベル5、まだまだひよっこで死にかねない。そこで、コージの教育係を誰かに任せようと思うのじゃが、やりたいものはいるか?」

 ヴィレンドがそう言った瞬間、待ってましたと言わんばかりにベルが席かすごい勢いで立った。

「はい、はい、はーい。私やりまーす。いっぱいかわいがってあげるからね、うふ。」

 コージは勘弁してほしいと思った。よくわからないが嫌な予感しかしないのだ。確かにベルは絶世の美女であるのだが、何か嫌だった。

「おい、ベル、てめーこいつをおもちゃにするんじゃねーだろうな?」

 コージが拒否権を発動する前にテラロッサがベルを止めに入った。

「そのつもりだけど、何?」

「流石にそれはねーだろ、ひよっことはいえども大罪王だ。てめーの言いなりにすることはできねー。」

「確かにその通りじゃな。ベルに育てられたら、コージがかわいそうじゃ。」

「えー、みんなひどい言いようだよ。まるで私が悪者みたいじゃないー。」

「・・・」

「俺が引き取るでいいか?」

 テラロッサがそう言った。

「あれれー、テラ、今日はやたら積極的だね?もしかして、この子に惚れちゃったー?ねえ、惚れっちゃったの?」

「うっせ、殺すぞ。」

「きゃあーこわーい。」

 ベルがテラロッサをからかった。


「俺が引き取るでいいか?」

 テラロッサがもう一回そう言った。

「テラが本気だ。まあ、仕方がないなー。私がテラの恋路を応援してあげるよー。」

「そんなんじゃねーっつーの。」

「はいはい。他の人は異論ある?」

 誰も何も言わない。

「では、テラで決定じゃな。よろしく頼むぞ。」

「わかったよ。」

「今日はこれで終わりじゃ。解散。」

 ヴィレンドがそう言うと、みんなは席を立ち部屋から出て行った。残されたのは、テラロッサ、ベル、コージ、ヴィレンド、レヴィアタンだけだ。


「あれだよー、テラにエッチなことされそうになったら、私を呼んでねー。助けてあげるから。」

「うっせーな、そんなことするわけねーだろ。行くぞ。」

 テラロッサは強引にコージの手を取って、その場を離れて、ベランダに出る。

「じっとしてろよ。」

 テラロッサはそう言うと、コージを抱きかかえてそのまま勢いよく飛び出す。

「ああ、行っちゃた。まあ、テラが興味を持つなんて珍しいよね、ヴィレンド。」

「そうじゃな。何か思うところであったのじゃろ。」


「それにしても、召喚者ね・・・」

「そう言えば、あやつも異世界から来たと言っておったな。」

 ヴィレンドとレヴィは話をする。

「召喚者ってわたし初めて見たかも―。」


「たしかに珍しいわね。それよりも大罪王の会議って盗み聞きされていいものなのかしら?」


「ふふふ、そうだね。そろそろ出てきてもいいんじゃない?No.6、いや、セイちゃん?」

「わしも気づいておったがの。」

 本当に気が付いていたのかは疑わしいところである。

 物陰から全身紺色の和服を着た忍びが音を立てずに出てきた。

「なんの用なのかなー、ぶっ飛ばしちゃうよ。」

 ベルは普通に脅迫する。


「・・・私は仕事で来た。」

 その忍びは少し低い声で答えた。しかし、その声から判断する限り女性なようだ。

「相変わらずほとんど無口じゃな。あやつがお主を気に入る理由がわからん。」

「・・・さようなら。」

 そして、その忍びは跡形もなく姿を消したのだった。


「ねえ、ヴィレンド、セイちゃんって本当に敵じゃないよねー?」

「彼女はあやつの勘解由使の一人、あやつと敵対しない限り心配はない。」

「ほんとー?じゃあ何で私たちをつけていたのかな?」

「それは、あやつが召喚者を探しているからじゃろ。」

「ふーん、それって弱み握れちゃうよね。今この世界にあいついないしさ。」

「これから、大変なときにさらに問題を起こすのではない。そんなことをしたら、勘解由使全員を敵に回すぞ。」

「一回やってみたいけどねー。」

「わしはもしそうなったらあやつ側につくからな。」

「私もそうするかしら。」

 レヴィはヴィレンドに同意した。

「じゃあ、やめといたほーがいいね。」

「本当にやったら洒落にならんからな。」

「わかってるよ、ヴィレンドは冗談も通じないの?」

「わーはっはは、そんなことないぞ。」


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<豆知識>(全く話に関係ありません。)

ゴルジ体ってなあに?


 皆さんはゴルジ体という言葉を聞いたことがあるだろうか、単細胞編では少し登場したが、まあ、覚えてる人はほとんどいないだろう。中学校で習うらしいが、知らない人の方が多いだろう。

 ゴルジ体とは細胞小器官の一つで主にたんぱく質の修飾などを行う。修飾は小胞内で行われ、それらの小胞が細胞膜に運ばれて、エキソサイトーシスすることによってそのタンパク質が細胞外に分泌されたり、膜上のタンパク質として働く。それゆえ、ゴルジ体は内分泌系の細胞や神経細胞などに多く発達して見られる。


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