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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第二章 魔女編
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3.人殺し




 こうして、私の新たな生活が始まったのだった。わかったこととすれば、第一王女のミルフィがかけた洗脳はあまり強くなく、命令されているとき以外は自由らしい。しかし、自由なときでも、ミルフィのことを疑問に思うようなことはないようだ。これは他の召喚者と会話をしてわかったことだ。


 実際に自由に王城内を歩いてよく、訓練中以外はある程度好き勝手なことができる。一日のスケジュールとしては、朝メイドに起こされ、朝食をとり、午前中は魔法の座学で午後からは実践練習だ。剣士組のほうはずっと体を鍛えているようだ。しかし、王女は忙しいのか、訓練を時たま見に来るくらいでそれ以外は目にすることはない。


 座学に関しては興味深いことがあった。魔法はスキルを使って発動することができるが、発動できる魔法には個人差があるし、MPが足りなければ発動することはできない。ただ、発動することはなく、必ず発動範囲や初速度、射角、威力などを調整する必要がある。これは感覚でやるらしいが、とても難しい。種々の魔法を見せてもらい、それを少し試してみる。

魔法系スキルは誰かの魔法を見て、それを実践しようとして素質があれば、その魔法スキルの下が取得できる。逆に言えば、見て覚えられるということである。

 私は講師の人が実演した魔法スキルすべてを取得することができたが、中には一部取得できてない人もいた。午前中までは、よかったのだ。


 午後は一言でいえばシュールだった。私たちは広場に集められた。そこには、王女と何人かの兵士たちそして、手足を手錠で縛られたみすぼらしい格好をした人々がいた。


「さあ、あなたたち今から奴隷を殺しなさい。」

 ミルフィ王女はそう言うと去っていった。私は耳を疑ったが、とりあえずみんなと同じように、はい、と返事をしておいた。

「並べ。」

 一人の兵士が列を作るように促す。そして、その兵士は先頭の人に剣を渡した。あの人は確か、小村なんたらとか言ったはず。私は同じ学年ではあったが、流石にフルネームは覚えていなかった。そして、兵士は近くにいた奴隷を無理やり連れてくる。


「いやです。やめてください。私はまだ・・・」

 その奴隷は私たちと同じくらいの年齢の女性だった。

「いやーー。」

 その女性は大声で泣きわめく。

「おい、お前。はやくこいつを殺せ。」

 兵士が先頭の小村君を催促する。小村君は嫌な顔をする。やはり、王女の洗脳は心までもは支配をしていないようだった。しかし、やらざるを得ないのは確かだ。


 小村君はその女性に哀れみの目を向けながら、手に持った剣を振り下ろす。

 女性の泣いている声はもう聞こえない。小村君の剣そして、彼自身に少しの返り血がついている。小村君の顔は真っ青になった。そして、頭を抱える。

「終わったなら、服を着替えてこい。」

 兵士は小村君から剣を取り上げ、お付きのメイドに引き渡す。どう考えても、彼の精神状態は普通ではなかった。体全体が震えていたし、まるで何かにとりつかれたような顔をしていた。



 私は久しぶりに人が殺されるのを見た。自分ではよく殺してはいるけど。そして、この世界の命の軽さを知った。そして、もしかしたらこの世界は私に合っているのではないかと思った。


 こうして、私は何人もの奴隷が目の前であっけなく私たちによって殺されていくのを見た。女性は特に命令されたことだとはいえ、自分がしたことを恐ろしいと思い。泣き崩れた者や、その場で失神してしまった者もいた。中には、それを見て吐いていた人もいた。


それでも、私はおかしくなることはない。こういうのは、慣れているし、どちらかと言えば好きだからだ。そして、気が付くと自分の番になっていた。


 どうして、私たちに人殺しをさせるのだろう。奴隷という労働力を殺すのは普通に考えたら意味不明だ。しかし、その理由は私が人を殺したときにわかった。


「はい、次。」

 私に、赤い血が滴る剣が渡される。鉄の匂いがする。私の目の前でまだ幼い子供が泣き叫ぶ。

「やだよー、ママー、うえーん。」

 一瞬で楽にしてあげるからね。


 

 そう思って、剣を振り下ろす。その少年の首がスパッと宙を舞い、切り離された胴体と首の部分から紅の血があふれ出す。そして、私にもその血が飛んでくる。手が血で染まっていく。そして、中途半端に乾いて、べとべとと少し黒味がかかった赤へと変化していく。


 私は人を殺すことにためらいも罪悪感もない。むしろ清々しくさえもあった。そして、私の頭の中に声が聞こえてくる。


「経験値が一定に達しました。

個体名:人間 近重来葉 LV.1 がLV.5になりました。

 各種ステータスが上昇しました。

 スキル:叡智 の機能が上昇しました。

 スキル:人殺し を獲得しました。」


「個体名:人間 近重来葉 LV.5 

 スキル:叡智、光魔法(下)、水魔法(下)、闇魔法(下)、結界魔法(下)、防御魔法(下)、精神攻撃耐性(下)、HP自動回復(下)、MP自動回復(下)全魔法耐性(下)、全自然影響耐性、時間魔法(下)、人殺し 

称号:時の支配者

ステータス:HP-50 MP-320 PA-10 MA-300 PD-10 PD-20 SP-50 LP-200 」


 なるほど、この世界は人を殺すことで経験値を確実に手に入れることができるらしい。王女が私たちに人殺しをさせたのも納得がいくわね。


それにしても私はいつの間にこんなにスキルを取っていたのでしょうかね。

『必須スキルはあらかじめ入手しました。』

 叡智さんの仕業ってことね。納得納得。あのさ、結構不名誉なスキルがあるんだけど、スキルって処分できないのかな?


『スキルの処分は基本的にはできません。』

 一応方法はあるんだね。結局、この人殺しって何なの?


「特殊スキル:人殺し・・・人を殺すときに得られる経験値が二倍になる。取得条件:一定数の人間を殺すこと、もしくは、人殺しに快楽を覚えること。」


 何でしょう、これは。快楽を覚えるって無遠慮な言い方だな、本当のことかもしれないけどさ。


 私の思考はここで邪魔をされた。

『警告:高エネルギーの生命体がこちらに向かってきています。到着予定はあと三秒程度です。』


 それ、私にどうしろというのさ。


どっかで見たことのある展開な気がする・・・


いつも読んでいただきありがとうございます。

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