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どうして僕が単細胞に?  作者: 稗田阿礼
第二章 魔女編
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1.歪んだ愛

すこし、過激な描写があるのでご注意ください。短めです。

 私の両親は殺し屋だった。と言っても、まだ父は生きている。母は私が小学四年生の時に死んだ。その時の私は死因を知らされなかった。

 その当時の記憶はほとんど残っていない。ただ覚えているのは胸にぽっかりと穴が空いたような虚無感と深い悲しみだけ。私たち家族にとって母とは偉大な存在だったのだろう。




 その虚無感と悲しみを紛らわして、少しでもその穴を埋めようと、私と父は無意識的に行動した。その対象が父は私であり、私はつーちゃんだった。


 父は私を母の代わりにしようとして殺し屋になるための教育を私に施した。大きくなって母親に似てくるほど、父はより熱心に私に殺しの技術を身につけさせた。




 そして、私はつーちゃんを溺愛した。溺愛という言葉はあっていないかもしれない。本人が気づかない程度に。いつも一緒にいたし、いろいろなところへも一緒に行った。


 父の教育の賜物であろうか、私は中学二年生にしてすでに一人前の殺し屋となっていた。昼間は学校、放課後はつーちゃんと一緒に過ごし、夜は大体殺しの仕事をこなしていた。


 はじめて人を殺したときの感覚は今でも覚えている。一言でいえば、快感だった。人の命を奪うときほど自分の生の素晴らしさを実感することはないと思う。生温かい血の感覚、べとべととまとわりついてくるその感覚が私は好きだった。人を殺しているとゾクゾクする。私は生粋の殺し屋なのかもしれない。父母ともに殺し屋の子は先天的にそういうものが備わっているかもしれない。


 それはともかく、母を失った私を癒してくれるものは人を殺すこととつーちゃんであった。私はどちらか失うと精神状態がおかしくなってしまうだろう。そもそも、人を殺すことに快感を覚える時点で精神状態がどうかしていることは自分でもわかっている。しかし、それでもやめられないし、やめられる状況ではなかった。父が強要してくるからだ。




 父の私に対する愛は歪んだものだった。母の代わりなるように、母の道具や衣服を着せたりしていた。


 それ以上に私のつーちゃんに対する愛は歪んでいた。人を殺すことに快楽とつーちゃんに対する愛が混ざり合ったのだ。その結果、殺したいほど好きという感情になった。


 何度もつーちゃんを殺す妄想をした。どんなかわいい表情で私に殺されるのだろう。どんなに血を流してくれるだろう。殺しても私を愛してくれるだろうか。それらのことを妄想することが私の生き甲斐になっていたと言っても過言ではない。


 そんな感情とは裏腹に私は無邪気な幼馴染を演じ続けた。私は知っている、授業中にふと私の方を見ているのを。私は知っている、体育の時間に君の視線が私を追いかけていることを。私は知っている、勉強が苦手な私のために授業を一生懸命聞いていることを。私は知っている、君が私のことが好きなことを。

 そのことを知らないふりをして、私は仮面をかぶった。




 たぶん、付き合ったら私はつーちゃんを殺してしまうだろう。無邪気に笑う君を何度刺してみたいと思ったことか。何度、君が私の家に泊まりに来て寝ているところを殺したいと思ったことか。何度、君のふとしたとき浮かべる頬笑みを見て君に恋をしたことか。




 君を殺したいほど愛している。




 たぶん、私がプロポーズするときはこう言うだろう。たぶん、私がこう言っても、君は優しいから受け入れてくれるだろう。たとえ、私が殺し屋だったとしても。









「つーちゃん、つーちゃん」

 私は屋上から落ちていった、幼馴染の名を叫んだ。地面のアスファルトに彼の血が広がっていく。まだ生きているようだが、死ぬのは時間の問題だった。どうしてこんなことになったのかは自分が一番よくわかっている。


 私の望んだ殺し方じゃない・・・


 もちろん、自分が間接的に殺したのは確かだった。しかし、私の望んだ殺し方ではなかった。


 私は身体能力が高いので、大体なんでもできる。いつも殺しをするときの感覚で屋上の手すりの上を歩いたのだった。彼はそんなことは知らないので必死に駆け寄って来てくれた。気がゆるんだのだろう。私はその瞬間バランスを崩した。これで、私が落ちて死んだのなら、それは自業自得だろうし、もちろん、そんなことはないのだが、私とって予想外のことが起きた。


 彼は自分のことは構わず、バランスを崩した私を助けるために自ら手すりに飛び乗った。そして、私を屋上のほうに押した。

 私は屋上の床に倒れ込んだ。そして、彼はその反動で四階建ての校舎の屋上から、地面へと落ちて行った。

 私が慌てて手すりの下を覗く。そこに、その光景があったのだ。

「おい、堤。大丈夫か?」

 隣で、堤の親友が叫ぶ。しかし、返事はない。



 その時だった。彼の倒れた地面に白く光り輝く魔法陣が現れたのは。そして、それは私と、その親友の床にも現れた。しかし、私はそのことにも構わず。彼の名前を叫び続けたのだった。大きな後悔とともに。


今日の豆知識はお休みです。それにしても、だいぶサイコパスなことを書いている気がします。

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