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召喚

俺は『召喚の間』で、光司の行方を探る。


「『検索(サーチ)』」


シャルロットの召喚魔法の記憶から、奴がいる異世界にアクセスする。


すると、ベッドに拘束されて様々な実験を施されている光司の姿が宙に浮かんだ。


「再生力指数は70メタフル。指を切られた程度だと、また生えてくるのね」


小指を切り落とした美人が、興味深そうに生えてくる指を観察している。


「炎耐性は90プロムかぁ。なかなかのものね。皮膚のサンプルを培養してみようかしら。新しい耐火服に応用できるかもしれないし」


ガスバーナーで体をあぶった後、焦げた皮膚をはがされている。


「ふーん。体温が39度以上には上がらないように、体内の抗体が自動調節しているのかな。これはいい反応ね。新しい解熱剤を開発できるかもしれない」


故意に熱病菌を投与され、発熱に苦しむ光司の体からは大量に血が抜かれていた。


「なるほど……光司は元の世界でも受け入れられず、すでに地獄に落ちているというわけか」


さすがの俺も、異世界の容赦ない人体実験に苦笑を漏らす。


「だが、この程度の地獄では生ぬるい。奴には真の地獄というものを味わわせてやる」


俺はそう決めると、無人となった王都を使って光司を追い詰める環境を整えるのだった。



俺は光司。以前は勇者だったが、今はただの実験動物だ。


異世界管理局を名乗る謎の組織に囚われて以降、俺はありとあらゆる実験を繰り返されていた。


「今日は耐寒実験をしてみようね」


ある時は、ベッドに縛られたまま巨大な冷凍室に何日も放置されたり。


「新しい炎属性の魔道武器を開発しているんだ。君の火魔法を移植させてね」


頭に変なコードを付けられて、無理やり変な銃に魔法を込めさせられたり。


毎日が苦痛の連続で、俺は死にたいとすら思うようになってきた。


「頼む。殺してくれ」


水走に向かってそう懇願するが、薄ら笑いをうかべて拒否される。


「駄目よ。君は街で無秩序に魔法を放ち、何百人もの民間人を殺したんだもの。後始末にいくら国家予算が使われたと思っているの」


それを聞いて、俺は絶望する。


(こ、こうなったら、再召喚されるしかねえ。俺をもう一度召喚してくれ)


あの異世界にはシャルロットがいるはず。魔王となったライトに対抗するためには、きっと俺の力が必要なはずなんだ。


その祈りが通じたのか、ある日ついにその時が訪れる。


いつものように実験を受けていると、ふいにベッドの周囲に魔法陣が浮かんだ。


「こ、これは異世界召喚?いい、実に刺激的!この魔法陣を解析すると、こっちから異世界に行くことも可能になるかも」


狂喜してパソコンにかじりつく水走に、俺は恨みを込めて吐き捨てる。


「待っていろ。次に戻ってきたときは、お前たちを皆殺しにしてやるからな」


その言葉を最後に、俺の体は魔法陣に呑み込まれていった。



明るい光を感じ、俺の意識が戻る。


周囲の光景には見覚えがあった。壁一面に白い文字で計算式のようなものが描かれた部屋の中にいた。


それは、俺が最初に異世界に召喚された時のものと全く同じだった。


「やはり俺の力が必要になって再召喚されたみたいだな。だけど……シャルロットはどこだ?」

以前は祭壇の前には俺を召喚したシャルロットが跪いており、周囲には神官や騎士たちが控えていたはずだ。


しかし、辺りには誰もおらず、俺を召喚した者の姿も見えない。


「誰もいないはずがない。誰かが俺を召喚したはずだ」


不安を覚えながらも、恐る恐る祭壇から降りて部屋を出てみる。やはりここは人間の王国の城らしく、見覚えがある廊下に出た。


しかし、今はしんと静まり返っており、廊下には埃が積もっている。どうやら何日も掃除がされてないようだった。


「ちっ。本当に誰もいないのかよ」


王城の中は物が散乱しており、まるで廃墟のようである。


「……やべえ。酒が飲みたくなってきた」


元の世界で変な薬を打たれて禁断症状はおさまっていたが、やはりあのコカワインの味は忘れられない。


「たしか……シャルロットはコカワインをため込んでいたよな」


俺と一緒に浴びるように酒を飲んでいたので、あいつがボカードから大量に買っていたのをしっている。


酒を求めてシャルロットの部屋に行くと、そこには若い女の腐乱死体があった。


「しゃ、シャルロットなのか?」


さすがの俺も驚いてしまう。死体は姫だけに許される豪華なプリンセスローブを着ていて、顔もシャルロットに似ている。


「い、いったいどういうことなんだ。シャルロットに召喚されたんじゃないなら、誰が俺を呼んだんだ」


部屋にある酒をかき集めて、俺は一目散に逃げだす。


城から出ると、門の所には大勢の民たちの死体が転がっていた。


「うっ……くせえ……」


死体には何かで切られたような跡があった。男も女も子供も情け容赦なく殺されている。


「ま、まさか、これをやったのはライトなのか?」


不安に駆られた俺は、一気に城下町を駆け抜ける。街はあちこちに死体が転がっていて、ひどい有様だった。


「やべえ!ここにいたら、俺も殺されてしまう」


死に物狂いで走り、ようやく王都の出口まで到着する。


しかし、王都の周囲はオレンジ色の結界が張り巡らさけていて、出る事ができなかった。


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