火刑
「うっ……ここは……」
俺が作った磔台の上で、国王が目覚める。
周囲には奴の妃や姫たちが、同じように十字架にかけられていた。
「お願い!助けて!」
「なんでもするから!私たちが悪かったわ!」
きらびやかなドレスを着た妃や姫たちが、磔にされて泣きわめている。
その下では、大量の薪が積まれていた。
「貴様……わが妻や娘たちに何をするつもりだ……」
意識を取り戻した国王が問いかけるので、俺は答えてやった。
「この光景、思い出さないか?お前の命令で、俺の家族が火あぶりにされた時を再現してみた」
それを聞いた国王が、ブルブルと震えだす。
「まさか……やめてくれ。それだけはしてはならぬ。復讐するなら、予にするがよい。妻や姫たちだけは助けてくれ」
「……俺もそう願ったよ。だけど、お前は薄笑いを浮かべて見物するだけで、その願いを受け入れなかった」
俺は国王の家族がかけられている十字架の下の薪に、『光線銃』を当てて火をつける。
「や、やめろーーーー!」
「特等席でじっくりと家族が焼かれるのを見ているがいい」
勢いよく薪が燃え上がり、妃や姫が着ている煌びやかなドレスに火が燃え移る。
奴らはあっという間に炎に包まれていった。
妻や娘が消し炭になったのを見て、国王は涙を流す。
「さあ、これで王国はお前一人になったな。どんな気分だ」
俺がそう煽ってやるが、奴は聞いていなかった。
「なぜだ……なぜこんなことになったのだ……予は正しかったはずだ……王として王家の権威と国の安定を守るために、涙を呑んでライトを冤罪に落としたはずだ……それがなぜこんなことになったのだ」
いつまでも自問しているので、俺はさっさと奴を処刑することにした。
十字架にかけられた奴の右足の小指にむけ、範囲を絞ったレーザー砲を打つ。
「熱い!痛い!」
小指が焼き千切れる激痛を感じて、国王が正気に戻る。
俺は奴の傷を確認してみる。奴の右足の小指は、鋭利な刃物で切られたかのように綺麗に失われており、傷口からは血も出ていなかった。
「俺の『レーザー』は物を焼いてもほとんど煙が出ない。そして出血も傷口が焼かれてふさがってしまう。この意味がわかるか?」
俺の言葉に、国王は恐怖に震える。
そもそも火刑は残虐な刑ではあるが、実はほとんどの場合罪人は焼かれたことが原因で死ぬのではなく、煙によって窒息死する。火は自らの罪を清めるという意味もあるのである
しかし、煙を立てずにじわじわと焼き殺されるのでは話が違ってくる。罪人の苦痛は想像を絶するものになるだろう。
「まずは右足からだ」
俺の手から出た細いオレンジ色の光が、国王の右足の指を順番に焼いていく。
右足が終わったら左足、それが終わったら手の指と、体の先端から一寸刻みで焼かれる苦痛に国王は苦しみもがいた。
「も、もうやめてくれ……殺してくれ……」
四肢を失った時点で、国王は泣いて俺に懇願する。
「まだまだだ。自分が俺にしたことを、じっくり後悔して死んでいけ。次は目だ」
結局、国王が死ぬことができたのは、胴体の半ばまで焼き尽くされた後のことで、そのころには目も耳も口もすべて失っていた。