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脱出

「お、お待ちください!私たちはあなたの味方……」


何か騎士たちが必死に弁解しているが、俺は最初から決めていたんだ。


最初に俺を冤罪に陥れ、石を投げた王都の民だけは、俺が一人ひとり直接殺してやるとな。


「勇者が狂いおった!者ども!ライトを殺せ!」


国王はそう叫びながら貴賓席から立ちあがる。


闘技場を警備していた騎士たちが一斉に襲い掛かってきた。


「死ね!」


きらびやかな鎧をまとった騎士たちが、決死の表情で剣を振るうが、俺がレーザーソードを振るうたびに何の抵抗もできず胴体ごと切断されていく。


たちまち闘技場は騎士たちの血で染まった。


「うわぁぁぁぁぁ!」


それを見た民たちは、我先に出口に殺到し、闘技場は大パニックに襲われる。


「どけ!陛下が先だ!」


「しったことか!もううんざりだ!もう俺はこの国から逃げる!」


逃げ出そうとする民たちと、国王を先に逃がそうとする騎士の間でもみ合いになり、中には切り殺される民たちもいた。


「ふふふ、逃げろ逃げろ。後からゆっくり追い詰めてやる」


混乱の中、俺は一人ずつ逃げ遅れた民を殺していく。


「お、俺は関係ない!」


「勇者様!助けて!」


「違うんだ!俺は騙されていたんだ!」


民たちは俺に殺される間際、必死に言い訳をして命乞いをしてきたが、俺は許す気はなかった。


「俺は覚えているぞ。俺が冤罪をかぶせられ、弾劾された時にいかに嬉しそうに罵声を浴びせてきたか。家族が殺される時に、いかに拍手喝采を浴びせてきたか」


そう、あの時の民たちの顔。正義の立場にたって弱者を迫害する表情。俺はおまえたちを一人も許しはしない。


焦らず一人ずつ民を切り殺していく俺。ようやくすべての民が逃げ出した後には、闘技場には数百人の死体が転がっていた。


「どうやら国王は逃げ出したみたいだな」


貴賓席に転がっている王冠を見て、俺はニヤリとする。


「いいだろう。奴がここに戻ってくるまで、しばらく預かっておくか」


王冠を拾い上げ、俺はゆっくりと闘技場を後にするのだった。




予は国王ルミナス。今はライトの襲撃に怯え、城門を閉ざして城に立て籠もっているところじゃ。


城下町からは、民たちがライトになぶり殺しにされる叫び声が聞こえてくる。


「王様!助けてください!」


「城に入れてください」


大勢の民が城門に押しかけているが、予は騎士たちに命令して門を厳重に閉ざした


「あの……よろしいのでしょうか?民を見捨てることになりますが!」


「黙っておれい!」


余計な差し出口を叩いた騎士団長をしかりつけ、傍に控えていた大臣の一人に聞く。


「……なぜ民たちは城に押し寄せているのじゃ。さっさと王都から逃げればよいものを」


「はっ。それが……ライトが張った光の結界によって王都は包まれてしまいました。出ようにも、結界に阻まれて出られないのです」


それを聞いて、予はため息をつく。


「予は魔王というものを見誤っておったのか。勇者と同じく、厚遇すればこちらになびくものと思っておったが。まさか利も情も無視して民の虐殺に走るとは」


「……恐れながら、今までライトが各都市でやってきた虐殺を見れば、それは甘い考えだったのかと」


またもや騎士団長が余計な口を叩くが、予には怒鳴る気力も残っていなかった。


そうしているうちに、城門のほうから叫び声が聞こえてきた。


「ライトが来た!」


「押すな!早く門を開けろ!」


そんな声が聞こえてきて、護衛した兵士たちが悲痛な顔をして耳をふさぐ。


ベランダから恐る恐る城門を見下ろすと、両手からレーザーソードを生やしたライトが民たちを虐殺していた。


「悪かった!謝るから!」


「お、俺は最初からお前のことを勇者だと……」


「お願い!子供だけは助けて!」


いかなる言い訳も命乞いも聞き入れず、愉悦の表情で民を殺していくライト。その姿は、まさに魔王である。


予は虐殺される民を見ているのが耐えられず、玉座に戻って頭を抱え込む。


「ど、どうすればいいのだ!ライトはすぐにでもここにやってくるぞ」


謁見の間にいた貴族たちが、青い顔をして騒ぎ出した。


「……やむを得ん。脱出する」


予は断腸の思いで、王都を捨てることを決意する。


「……ですが、どこへ行けば?」


「この地はライトにくれてやり、我らはエルフ王国のあった大陸まで逃げる。そして新たな勇者を産み育て、いつの日か奴に復讐するのじゃ!」


予がそう言い渡すと、貴族たちの顔にわずかに希望の色が浮かんだ。


「では、さっそく」


「うむ」


メイドや騎士たちが慌ただしく動き、城に残されていた金貨や宝をまとめる。


予の妃や姫たちにも、粗末な服に着替えさせ、最低限の荷物だけ持って行くように言い含めた。


「陛下、シャルロット姫が自室から出ようとしません。『勇者に捨てられた』とつぶやくばかりで」

「放っておけ。奴にかまっている暇はない」


予はそう言い捨てると、大急ぎで地下通路に潜る。


「忌まわしい魔王め。今は王国を滅ぼしたと悦には入っているがよい。悪が栄えた試しはなし。我らはいつかきっと、新たな勇者を擁して戻ってくる」


予はそう心に決め、暗くて狭い地下通路に入るのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] バリアが地下迄、届いてる可能性は考えないんだろうか? もし、エルフの大陸迄、逃げられてもダークエルフが待ってるような。 国王だけライトに献上して、残りの王族、貴族は血液供給用に生かされるか…
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