戦闘
処刑台が片付けられ、闘技場には俺と光司が残される。
俺たちは互いに20メートルの間をおいて対峙した。
「では、これから勇者と偽勇者の決闘をはじめる」
司会の宰相の言葉に従い、俺たちは互いの魔法剣を交差した。
「てめえを殺して、俺は絶対に元の世界に帰ってやる」
光司はそう啖呵を切る。
「果たして俺を殺せるかな。くくく……なぜ俺がこの場を設けたかわかるか?お前だけは俺の手でなぶり殺しにしてやりたかったからだよ」
「ほざけ!」
激昂した光司は、フレイムソードで切りかかってくる。俺はレーザーソードで迎え撃った。
「ヒャッハー!いい気分だぜ!」
酒に酔っているのか、奴は滅茶苦茶に切りかかってくる。俺はその勢いを抑えきれず、防戦一方になった。
「はっ。魔王と粋がっているが、その程度の腕なのか」
光司の言う通り、剣の腕前については俺は奴にははるかに及ばない。
レイバンの知識を利用して体を動かしているが、剣を防ぐのが精いっぱいで攻撃に転じることができなかった。
「おらよっ!」
光司のフレイムソードが俺の体をかすめ、焦げ臭い臭いが立ち上る。
俺の劣勢を感じ取った民たちからは、早くも不安そうな声が上がった。
「お、おいおい。ライト様は負けるんじゃないか?」
「あの剣の腕……やっぱり勇者は光司なんじゃないか?」
そんなささやきを聞いたのか、光司はさらに調子にのって攻め立ててきた。
「おらおらおら!」
狂ったように剣で押し込んでくる。
鍔迫り合いとなり、フレイムソードの熱い熱が俺の頬を焦がした。
「思い知ったか。これが勇者の力だ」
「……確かに大したものだ。神が選んだ真の勇者はお前だったんだろうな」
光司の煽りに、俺はそう答える。
「今更思い知っても許さねえ。このまま切り殺してやる」
「……だが、神が選んだ真の魔王は俺なんだよ。『闇爪』」
俺は足の指から闇の爪をはやし、奴の脛を思い切り蹴とばした。
「いってえ!」
光司は痛みのあまり飛びずさり、俺から距離を取る。その脛からは、禍々しい爪が棘のように突き刺さっていた。
「それは闇の魔力を込めた爪だ。刺さったままだとそのうち毒が全身に回るぞ」
「くそっ!」
光司は闇の爪を抜き、患部を炎で焼いて止血する。
「てめえ、剣での勝負じゃなかったのかよ。卑怯者め」
「残念だが、お前に有利な勝負をするつもりはない」
俺は光司に向かって手のひらを向ける。
「くらえ!!『光線銃』」
俺の手のひらから出た無数の光の弾が発射され、光司の全身を打ち抜いた
全身に焼け焦げをつくった光司は、ボロボロになってもなおも立っている。
どうやら火属性の魔力を持つ奴は、光線による熱にも耐性があるみたいだった。
「て、てめえ、よくもやりやがったな……こうなったら」
奴はフレイムソードをしまい、両手の手のひらを合わせる。その手の間には、莫大な炎の魔力が集まっていった。
「お、おい!あんな膨大な魔力が爆発したら……」
「この闘技場自体が崩壊するぞ」
それをみた民たちがパニックに陥っていた。
「愚かな。自分ごと爆発するつもりか?」
「心配ねえ。爆発の威力は全部てめえに振り向けてやる」
光司は俺に向けて、手の先を開いた。
「これが俺の切り札だ。極大炎魔法『指向性衝撃火砲』
膨大な炎の衝撃波が一直線に地面を削りながら俺に迫ってくる。
俺はよけきれず、まともに炎の衝撃波に呑み込まれてしまうのだった。




