勇者の遊興
俺の思惑は当たり、それから何人もの貴族に因縁をつけて、大金を巻き上げることができた。
「大変失礼いたしました。これはお詫びです」
「世界を救ってくださった勇者様への、感謝の気持ちです」
どいつもこいつも俺が絡んでやると、恐れ入って金を出すのが気持ちいい。ボガードのバイトに比べはるかに効率がいいしな。
味を占めた俺は、貴族だけじゃなくて富裕な商人もターゲットにする。金をだししぶる奴に対しては、その代わりに娘を差し出させてやった。
そうしていると、なぜか俺が街を歩いているだけで皆がおそれて近寄ってこなくなった。
「勇者が来たぞ」
「みんな、家に入れ。ちょっとでも因縁をつけられると、娘をさらわれるぞ」
そんな噂が広まって、俺の姿をみるだけで民たちは逃げでしてしまう。
困ったな。こうなると、新しい可愛い子を探せないぞ。
何しろ俺の顔をみるだけで貴族も平民も逃げていくので、新しいメイドを探すこともできなくなったのだ。
それでも因縁をつけられる相手をさがして歩いていると、ある娼館の前でずんぐりしたドワーフの男に声をかけられた。
「これは勇者さま。ようこそいらっしゃいました。いい子がいますよ」
ヘラヘラと笑いながら客引きしてくる。無視して歩き去ろうとしたが、その男はやけにしつこかった。
「新しい奴隷が入荷したんですよ。なんと合法ロリッ子ですよ。しかも誰の手もついてない清らかな乙女です」
「ロリッ子かぁ……」
そういえば、ドワーフの女はロリッ子が多いと聞く。たまには気分を変えて、人間じゃない女にも手を出してみるか。
「決まりましたね。一名様ごあんなーい」
男に導かれて店内に入る。出迎えたのは、中学生くらいの元気少女だった。
「お兄ちゃん。初めまして。来てくれてありがとう」
無邪気にニコッと笑って手を引いてくる。最近、すれっからしの女ばかり相手していたんで、たまにはこういうのも新鮮でいいな。
「さ、お部屋に行こ!」
俺はそのロリッ子に手を引かれて、部屋に入っていった。
そして数時間後、俺は満足して娼館を出る。
「よかったぜ。これはチップだ」
「わーい。お兄ちゃん。ありがとう。チュッ」
ロリッ子ドワーフは俺がくれてやった金貨を無邪気に喜んでいる。いい子だな。これから贔屓にしてやるか。
頭をひとつ撫でて、俺は屋敷に戻っていった。
光司が帰った後、娼館ではドワーフの男とロリドワーフの娘が笑いあっていた。
「お嬢、うまくいきましたわね」
男はロリッ子に笑いかける。
「ああ、あなたにも苦労をかけました」
ロリドワーフは、大人っぽい口調で男をねぎらった。
「ふふふ。奴は女好き勇者として有名ですからな。ですがお嬢、よろしいのですか?あんな奴に身をささげて」
「かまいません。わがドワーフ一族は未だ蛮族扱いされており、一つにまとまることもできていません。それは、王家となるべき特別な血を引く存在がなかったせいです」
ロリドワーフは、外見に似合わない幼い容姿ながら、大人びた笑いを浮かべる。
「ですが、これで勇者の血を盗むことができました。やがてこの血が王家として崇められ、ドワーフの各部族を統一することになるでょう。そうなれば、わがドワーフは繁栄することができます。やがては人間やエルフを制して、ドワーフが世界を征服することもできるでしょう」
奴隷のふりをして人間の王国にやってきたドワーフ族の姫は、夜の闇にまぎれてひそかに王都を脱出する。
やがてその血筋が、未来において新たな戦乱を招くことになることは、この時点では誰も知る由はなかった。