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大群

「はっ」


誰かに呼ばれた気がして、俺の目が覚める。


しかし、辺りには誰もいなかった。


「気のせいか……」


気を取り直して、どう宗教都市エルシドを攻めるか考えてみる。


「あの光の矢は、『輝きの球』による光魔法だろう。たしか教皇は、闇に染まったモンスターたちを自動迎撃できると話していた」


エルシドにつれてこられた時、俺を民衆の前でさんざん盗人としてさらし者にしながら、『耀きの珠』を自慢していた。


「善良なる神の信徒たちよ。今ここに汚らわしい盗人から『輝きの珠』を取り返した。これでエルシドは再び神のご加護を得られるのだ」


聖堂騎士団に散々殴られて、ボロボロになった俺を土下座させながら、太った教皇マルタールは『輝きの珠』を大灯台の祭壇に設置する。


「おお、我らが教皇様!」


「これでエルシドは安泰だ」


再び大灯台に輝きが戻ったのを確認して民衆は安堵するとともに、俺に罵声を浴びせてきた。


「この背教者め!」


「『輝きの珠』を盗むとは、神をも恐れる暴挙だ!」


それから俺は、大灯台の前で何日もさらしものにされ、石を投げかけられて唾を吐きかけられた。


この街の住人たちは、さんざん苦しめて殺さないと気が済まない。


だが、『輝きの珠』があるかぎり、無理やり侵入しようとしても迎撃されるだけである。


「なんとかして、宗教都市エルシドに入り込まないとな。ここは急がば回れだ」


そう思った俺は、必要なモンスターを創り出すためエルシドから離れて各地のダンジョンを回るのだった。




「ふう。結構大変だったな」


俺は世界中のダンジョンを回って、そこに生息するダンジョンラットを集めていた。


勇者の道具袋の中には、何百万匹ものラットでいっぱいになっている。


「よし。こいつらに闇魔法をかけて……『魔化(イビルフィギュア)』」


俺の闇魔法をかけられたラットたちは、黒く染まり、より狂暴になっていった。


同時に、その体についている蚤も有毒化していく。


次に、蚤の中にある細菌に、風属性と水属性を付与すると、異世界の歴史上、最悪の感染被害をもたらした病魔が完成する。


この病気はポーションでは治療できず、体液による接触感染と呼気による空気感染の両方で広げる事ができる。


あっという間にエルシドは死の都市になるだろう。


「さあいけ!黒き死の使者たちよ」


俺の命令を受けたダンジョンラットの大群は、エルシドに向けて侵攻を開始した。




ワシは教皇マルタール。この世で一番尊い聖人である。


執務室でマリアから献上された「コカワイン」を飲んでいると、慌てた様子の枢機卿が入ってきた。


「き、教皇猊下、一大事です!」


「なんだ!そうぞうしい!」


慌ててワインの瓶を隠して怒鳴りつけると、奴は必死の形相で告げてきた。


「『耀きの珠』が暴走しています!」


「なにっ!」


慌てて大灯台に昇ってみると、祭壇の上に安置していた「輝きの珠」が狂ったように光の矢を乱射していた。


「これはどういうことだ!」


「そ、それが、ダンジョンラットが大群でせめてきておりまして……」


枢機卿が双眼鏡を差し出してくる。ひったくるように手に取ったワシは、街の外を見て絶句する。


何万匹ものダンジョンラットが集まっており、まるで黒い絨毯のようにエルシドを取り巻いている。奴らはエルシドに向かって突撃を繰り返していた。


闇のモンスターを自動迎撃する設定の『耀きの珠』は、ラットに反応して聖なる矢を打ち続けているが、焼け石に水状態でとてもすべては浄化できそうにない。


それに、このままでは『耀きの珠』が壊れてしまう。やむなくワシは枢機卿に命令した。


「『輝きの珠』を祭壇から外せ」


「しかし、このままではラットがエルシドに侵入してしまいます」


異議を唱える枢機卿を殴りつけ、そばに控えている聖堂騎士団に命令した。


「市街に侵入してくるラットは、聖堂騎士団が駆除せよ。あの汚らしい魔物を大灯台に近づけるな。奴隷どもを使ってもいい。一匹残らず始末せよ」


「は、はいっ」


慌てて騎士たちが駆け出していく。


ワシは手の中の『耀きの珠』を抱きしめると、大灯台の奥深くに避難するのだった。



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