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契約

俺の名前はライト。勇者の血を引く存在だ。


そんな俺は現在、モーリスたちにおとりにされて、狼のモンスターに体を齧られている。


すさまじい痛みと共に、俺の胴体から血が流れる。


そんな俺が感じていたのは、手を差し伸べてくれない神への怒りだった。


(なぜだ!なぜ神は助けてくれない。冤罪をかぶせられた時にも、家族が処刑されたときにも、神に救いをもとめて祈ったのに。なぜ神はこんな理不尽をゆるしているんだ)


体を襲う激痛の中、どれだけ神に祈っても救いはもたらされない。勇者の力に覚醒することもない。俺の思考は闇に染まっていった。


(それとも、勇者たちが正しいというのか?皆に愛され、支持されているからといって、どんな理不尽でもまかりとおってしまうのか)


俺の中で、神と正義への信頼が揺らいでいく。


(誰でもいい。俺に復讐のチャンスをくれ!俺はどうなってもかまわない。奴らに復讐を!誰でもいい!)


神への絶望から、存在するかどうかもわからない何かにい祈りを捧げ続けるライト。


すると、突然体を襲っていた痛みが消えて、何かがふわりと自分の体を包んだ。


「こ、これは……?」


それを見ると、漆黒の闇が具現化したような黒いローブだった。


いつのまにか狼のモンスターは消えており、闇の力によって体の傷がいえていく。


『我が名は『復讐の衣』。次の宿主は貴様か?」


自らを覆う衣から、そんな思念が伝わってきた。


「宿主だって……?」

「そうだ。我は神々が作り出した、ただ一つの「正義」を制する為の伝説のアイテム。『正義に立つ側が行った理不尽』に対する是正としてこの世に存在する。我と契約するなら、汝の望みをかなえよう」


衣から歴代の宿主ー『魔王』と呼ばれた者たちの無念が伝わってくる。


それによると、先代の魔王は数百年前に人間族に理不尽に滅ぼされた『魔族』という種族の最後の生き残りだったという。その復讐のために、人間たちを襲っていたのだった


「魔王にそんな事情があったのか……」


今まで人間こそが正義であり、それを苦しめる魔王が絶対悪だと思って勇者パーティに協力していたライトは、心から後悔した。


「人間なんてクソだ!もし人間が正義だというなら、俺はその正義を否定する。俺は魔王の跡をついで、人間に復讐する」

「いいだろう。ただし……」


衣から冷たい思念が伝わってくる。


「復讐を果たした後、汝も自分が為した理不尽の報いを受けて滅びるだろう。それを受け入れるか?」

「望むところだ」


俺がそういったとたん、「闇の力」が体内に流れ込んでくる。


「光」と「闇」が融合し、やがて一体化していく。やがて俺の体はダンジョンの闇と同化していった。




「はぁはあ……ここはどこだべ」


オラはモランジョ。モーリス様の一の子分だ。だけど周囲には誰もいない。闇の中で一人ぼっちだ。


ライトの役立たずを照明係にしてダンジョンに潜ったはいいものの、モンスターに襲われて命からがら逃げだしたところだ。


だけんど、このダンジョンに照明がないことを忘れていただ。まるで暗い迷路みたいな内部を逃げ回っているうちに、すっかり仲間たちと離れてしまっただ。


「こんな暗かったら、自分がどこにいるかもわからねえだ。モーリス様はどこだべさ……」


不安な気持ちを感じながら手探りでダンジョンを進んでいくと、前の部屋からオレンジ色の光が漏れていることに気づいた。


「たすかっただ。きっとモーリス様たちだ。予備のランプを用意していただな」


ほっとしながら近づいていくが、何か様子がおかしい。よく見ると。オレンジ色の光は部屋の中央の玉座から放たれていた。


そこには黒いローブをまとったライトが座っていて、じっと目を閉じている。


「こ、これは、さっきの部屋だか?」


どうやら、オラはさんざん走り回った結果、元の場所に戻ってしまったらしい。


だけんど、ラッキーだべ。モンスターもいないみたいだし、あとはライトの役立たずに出口まで案内させよう。ついでにあのアイテムもオラのもんだべ。


「いつまで寝ているんだべ。この役立たずが。さっさと起きるだ」


ライトの体をゆすって起こそうとしたとき、奴の目がカっと開かれ、ものすごい力で腕をつかまれた。


「な、なんだべ。ライトのくせに反抗するだか?モーリス様にいって、もっときついお仕置きを……ぎゃああああああああ」


ライトの手から、なにか禍々しい力が伝わってくる。それはオラの腕に入り込み、光の道筋にそって全身をかけるぐった。


「あばばばばばは……」


すさまじい痛みとともに、オラの体が焼け焦げていく。目がはじけ飛び、口から煙がでるのが自分でもわかった。


「ははは、これが勇者の力か。異界の言葉で「電気ショック」というらしいな」


ライトの声が聞こえた瞬間、心臓が破裂し、オラの魂がどこかに吸い込まれていくのを感じた。


「素晴らしい。素晴らしいぞ。これが魔王の力か。人間はモンスターを倒し、その恨みの念や魂を吸収することでレベルアップする。それに対して魔王は、人間の恨みの念や魂を吸収することでレベルアップするのか」


闇の中に吸収されてしまったオラの魂に、ライトの高笑いが聞こえてくる。


「面白い。ここから出たら、人間を殺して殺して殺しまくってやる」


その言葉を聞いたのを最後に、オラの魂は闇に溶けていった。


よんでいただいてありがとうございます


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[気になる点] まだ五話しか読んでないのに誤字が多くそのたびに 二度見したり詰まったりする 報告するには面倒な量なので投稿する前に確認して欲しい
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