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儀式

私はメイドたちに導かれ、教会に入る。


黒で統一された教会に入ると、出席していた生徒たちが一斉にこっちを向いた。


「はあはあ……」


「たまらん。いい匂いだ……」


「私たちにも分け前はあるのよね」


なんだか変なささやきが聞こえるが、私は気にせず王子の隣に進み出る。


黒のタキシードを着た王子は、この上なく美しかった。


「コーリン。美味しそう……じゃない。綺麗だよ」


「王子、ありがとうございます」


頬をそめて王子を見上げたとき、ハゲ頭に黒い聖職者の服をきた初老の神官が教会の扉をあけた。


付き添いとして、同じように黒い修道女服を着たルルが隣にいる。


生徒たちはその神官を見るなり、一斉に頭を垂れて敬意を払った。


「あら……あの神官は誰かしら。見た事ないわね」


「ああ、王都から特別に呼んだんだ」


王子の言葉に違和感を覚える。今この学園都市は結界が張られているのに、どうやって入ってこれたのかしら。


神官とルルはそんな私の不審な視線を無視して祭壇に立つと、高らかに宣言した。


「それでは、ただ今からケッコン式を始めます」


それを聞いた生徒たちは、ワーと歓声を上げた。


「静かに。こほん。王子リュミエールよ。汝は賢者コーリンの主として、その血を最後の一滴まで愛することを誓いますか?」


「誓います」


ちょっと変わった宣誓の言葉だったけど、王子は堂々と答えた。


「では賢者コーリンよ。汝は王子リュミエールの僕となり、肥えるときも痩せるときもその身を捧げると誓いますか?」


変な言葉ね。だけどまあいいわ。


「誓います」


私が宣言したと同時に、ルルが声を張り上げた。


「今、魔王様の前で宣誓が行われました。これで賢者コーリンの血は、我々のものです」


それを聞いた生徒たちは、一斉にたちあがる。その目は飢えた獣のように光っていた。



「魔王に誓ったって?どういうことなの!」


「ふふふ。こういうことさ」


初老の神官が光に包まれていく。その光の中から現れたのは、黒いローブを纏ったハゲ頭の男だった。


「ラ……ライト!」


「久しぶりだな。会えてうれしいぜ」


ライトは今までみたこともないような邪悪な笑顔を浮かべて、手を差し出してくる。


反射的に下がろうとしたら、王子にがしっと腕を掴まれてしまった。


「離して!」


必死に振り払おうとするが、ものすごい力で離してくれない。


この力……まさか?


「魔王様の御前だ。おとなしくするんだ」


そういって笑う王子の口元からは、長くて鋭い牙が生えていた。


まさか、『ヴァンパイア』?人間が魔物化した、最悪のモンスター?


「ライト、王子を殺したのね!」


「違うね。僕は彼に救われた。同胞に対して裏切りを重ねる汚らわしい人間から解脱して、モンスターへと転生できたんだ。これで彼への友情を取り戻すことができた」


王子はそういって邪悪に笑った。


いけない!ヴァンパイアは人間の天敵ともいえる魔物だ。奴らは人間そっくりな姿をしているので、たやすく村や町に入り込み、人々を襲う事で仲間を増やしていく。


たった一匹入り込んだせいで、街ごと滅んだ例もあるほどだ。


でも、どうして?ここは聖水結界で守られているはずなのに?


「あんた!どうやってこの学園都市にはいってきたのよ」


ライトを睨んで詰問するが、奴は皮肉げな笑みを浮かべていた。


「聖水結界のことか?あんなもの、今の俺にとっては脅威でもなんでもないさ。風で霧を散らせばいいだけだ」


ライトの体に風がまとわりつく。


「あんた、その力は……」


「お察しのとおり、レイバンの力だ」


ライトが右の手のひらをかざすと、そこにレイバンの顔が浮かんだ。


「コーリン……逃げろ。こいつに殺されたら、魂まで支配されて永遠の苦しみが……」


レイバンの顔は苦しみにゆがんでいた。


「デンガーナもいるぞ。お前に会いたがっていた」


続いて、左の手のひらにデンガーナの顔が現れる。


「なんでうちだけこんな目に……コーリン。あんたのせいや。あんたもこっちに来い」


デンガーナからは、恨みと妬みがこもった視線をなげかけられた。


このままだと私も同じ目にあう。なんとかしてこいつを殺さないと!


「みんな!やっておしまい!」

振り返って貴族の生徒たちに命令するが、彼らはうっとりとライトを見つめていた。


「おお、我らが(マスター)


「なんなりとご命令を」


ライトをあがめる生徒たちの口元には、鋭い牙が光っていた。


「残念だったね。この学園都市にいる者は、君を除いてすべて仲間になったんだ」


王子が嘲るように告げる。


「だけど、ライトを虐待した君は仲間にする価値すらない。僕たちの食糧になるだけだ」


「ふ、ふざけないで!」


私は王子につかまれた腕に、水魔法をかけてなんとか逃れようした。


「離して!『沸騰(ボイラー)


王子の手の血液が気化し、千倍にまで膨張する。右腕ごと爆発して砕け散った。


どう、これが賢者の魔法よ。私は触れるだけであらゆるものを水蒸気爆発させることができる。これなら、たとえ魔王といえども敵じゃないわ!


解放された私は、一気にライトに迫る。


ライトの体に手が振れる瞬間、奴の体から突風が吹いて私を押しとどめた。


「おっと。『風盾(フォースガード)』」


奴を取り巻く風のせいで近づけない。この力……まさか、取り込まれたレイバンのもの?


「おとなしくしてもらおうか。『土重力(グラビティ)』」


ライトが放った土魔法により、私はなすすべもなく地面にたたきつけられた。



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