表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/90

暗闇


「おらっ!しっかり働け」

「ぎゃははは。てめえの仕事場はここだぜ」


俺の子分たちに連れられて、ライトが村はずれの湿地帯に連れていかれる。


そこは、村の生ごみや糞尿を肥料に変える「肥溜め」だった。


「てめえはここで、糞尿まみれになって肥料を作り続けるんだ」


俺が冷たく言い放つと、ライトは恨めしそうな顔で俺を見上げた。


「モ、モーリス、なんでこんなことをするんだ。俺の幼馴染なのに……」

「ああ?幼馴染だとぉ?身分をわきまえやがれ」


俺は思い切り蹴り上げて、奴を肥溜めの中に突き落とす。


「いつまで勇者気分でいやがるんだ。てめえは今や平民ですらねえ奴隷の身分だ。村長の息子である俺様とは、天と地ほど差があることをわきまえるんだな」

「う、ううう……」


俺の言葉を聞いたライトは、肥溜めの中で泣き始める。


「あははは、無様だな」

「村の女たちもつれてこようぜ」


子分たちは、村から以前は奴を勇者様ともてはやしていた女たちを連れてくる。

肥溜めの中で泣き続けるライトをみた女たちは、軽蔑の視線を向けた。


「なにあれ。汚い」

「私たち、あんなのを勇者だと思っていたの?騙されたわ」


女たちの嫌悪の声を聴きながら、俺は悦に入る。


「お前たちもこいつを見てよくわかっただろう。ちょっと魔法をつかえたり、勇者扱いされたからっていい気になって都会にいくと、足元すくわれてこうなるんだ。やっぱり、人間は大それた夢なんてみずに、こつこつと畑を耕すのが一番なんだよ」


「本当ね。こいつに憧れていたのがウソみたいだわ」

「やっぱり男は真面目なのが一番よね。モーリス様って素敵」


女たちの賞賛の声を聴きながら、俺はひたすらいい気分にひたっていた。




檻に入れられて、どこかに運ばれていく


(今度はどこに連れていかれるんだ……)


そうおもって恐怖にふるえていたが、馬車から降ろされて周囲を見渡した俺は心から安堵した。


(ああ、モース村だ……故郷に帰って来たんだ……)


幼いころ、優しくしてくれた村人や幼馴染の顔が脳裏に浮かぶ。


(ここでなら、おだやかに過ごせるかもしれない)


しかし、そんな俺の期待は、村長の息子であるモーリスの目を見た瞬間に吹き飛んでしまう。


奴の目に浮かんでいたのは、俺に対する嫉妬を晴らせると喜びに満ちていた。


「偽勇者さんよぉ。よくこの村に帰ったこれたなぁ」

「てめえのせいでこの村は、偽勇者の故郷だなんて不名誉な汚名をかぶせられたんだ」


そんな言葉とともに殴りつけられ、血反吐を吐いて俺は肥溜めに突き落とされてしまう


彼らは幼馴染である俺に対してもまったく容赦せず、

それから毎日、モーリスの手下となった村の男たちに痛めつけられるのだった。


「あんたのごはんよ。わざわざ持ってきてあげたんだから、感謝して食べなさいよ。ほーら」


俺の世話を申し付けられた女たちは、わざわざ腐らせた残飯を肥溜めの中に撒いて、俺に食べるように強制した。


屈辱に身を震わせながら、糞尿にまみれた残飯を食べるのを見て、女たちは嫌悪の声をあげる。


「見て。本当に食べているよ」

「人間、あそこまで堕ちたくないよね」

「あはは。勇者を騙った偽物にふさわしいわ」


以前は俺の気をひこうと媚びへつらってきた女たちは、手のひらを返してあざけりの声をなげかける。


故郷にもどっても、俺に同情してくれる人は一人もいなかった。むしろ村の名前を汚した偽勇者として、より過酷な責め苦を与えてくる。


それでも俺は、自ら命を絶つことをしなかった。


(神はきっと見ていてくれる。いつかは冤罪が晴れて、俺の名誉が回復される。勇者とは神のしもべだ。神が見捨てるはずがない)


心の中で神に祈りながら、自らの勇者の血によりいつか奇跡が起こることを信じて歯を食いしばって耐える。


そんなある日。俺はモーリスたちに連れ出された。


「なあ、こいつを照明係として、最近見つかった村はずれのダンジョンにつれていかねえか?」

「え?でもダンジョンの中にはモンスターがいるんじゃねえか」


モーリスの言葉に、取り巻きたちは尻込みする。


「バカめ。勇者様が魔王を倒してくれたおかげで、モンスターはこの世界からいなくなったんだぜ。今なら宝を漁り放題だ」

「あ、そうか」


こうして、俺は照明係としてダンジョンに連れていかれる。


久しぶりに入ったダンジョンは、当然のごとく真っ暗闇に包まれていた。


「ぶ、不気味だな……」

「ひびってんじゃねえよ。ほら、明かりを灯せ!」


モーリスに尻を蹴とばされた俺は、残された魔力を振り絞って頭から光を放つ。


「ははは、ハゲ頭がよく光っているぜ」


モーリスたちに小突かれながら、俺はダンジョンに潜っていくのだった。




俺たちは、ダンジョンを進んでいく。


モーリスの言う通り、モンスターなどは一切出ず、最初はビビっていた村の男たちも、だんだん緊張が解けて雑談を交わしながら進んでいった。


「このダンジョンは。できたばかりだから誰も入ってないよな」

「ああ、俺たちが一番乗りだ。きっとすごい宝があるぞ」


そんな風に軽口をたたきながら、どんどん深く戻っていく。

やがてダンジョンの最深部にたどりついた。


「ここにお宝があるんだな。せーの」


モーリスが扉を開くと、広い漆黒の中間に玉座があり、そこに一枚の黒い衣がかけられていた。


「あ、あれは……もしかして魔王が着ていた「復讐の衣」か?」


俺のつぶやきに、モーリスたちは目を輝かせる。


「なに?魔王のアイテムなら、きっと高く売れるぜ」


俺を突き飛ばし、我先にと玉座に群がるモーリスたち。彼らが衣を手に取った瞬間、部屋の床に魔法陣が浮かび、中から狼型の巨大モンスターが現れた。


「ば、馬鹿な、モンスターはこの世界からいなくなったはず」

「ま、まさか、この衣が異界から呼び寄せて……うわぁぁぁぁ」


『復讐の衣』を放り投げ、モーリスたちは逃げ出していく。


「ま、待ってくれ……」

「うるせえ!てめえがおとりになれ!」


なんとか立ち上がった俺の前で、モーリスにより部屋の扉が閉められてしまう。

絶望のあまり振り返ったおれが見たものは、よだれを垂らして近寄ってくる狼の姿だった。


よんでいただいてありがとうございます


既刊案内


反逆の勇者と道具袋


挿絵(By みてみん)


https://www.cmoa.jp/title/1101158644/


貴族のお坊ちゃんだけど世界平和のために勇者のヒロインを奪います

挿絵(By みてみん)

https://www.cmoa.jp/title/1101157774/


無駄の従者にして闇の黒幕

挿絵(By みてみん)


https://www.cmoa.jp/title/1101234719/


 






面白ければ、評価やブックマースをお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=569357356&s
― 新着の感想 ―
[気になる点] 村外れのダンジョンと書いてあるのに『魔王の着ていた復讐の衣』とかさぁ・・・・・・。話ガバガバすぎへん?村外れにいた魔王・・・・・・
2023/04/17 09:33 テロミスクッキー
[気になる点] 追放作品にありがちなモブ達のチープな掛け合いは何なのか。ウケ狙ってるだろ。なんだよ「モーリス様って素敵」って笑。
[一言] ハゲに何か恨みが(ノ∀`)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ