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グリュックとルストのものがたり

作者: 兎月 晃

お城を出たいグリュックと夜を飛び回るルストの一夜限りの物語。

とても とても くらいよるでした。

ちいさな おひめさまは おしろのベランダにでて そとを ながめていました。

「こんばんは うつくしいおひめさま」

おひめさまは おどろきました。

だって だれもベランダにはいないと おもっていたからです。

「おどろかせて ごめんね

ぼくの なまえは ルスト(たのしさ) きみのなまえは?」

まっかなマントをつけた ルストは ちょっとだけながいきばをみせて わらいました。

「わたしの なまえは グリュック(しあわせ)よ」

グリュックも えがおになりました。

「ルストは おしろで なにをしていたの?」

「ぼくは よるの おさんぽをしていたんだ」

ルストは たのしそうに こたえます。

「いいな わたしも よるのおさんぽに いきたいな」

グリュックは ルストが うらやましく かんじました。

「わたしは おしろからでたことが ないから……」

グリュックが あまりにも かなしそうでしたから

「じゃあ ぼくと よるのさんぽに いかないか?」

ルストは げんきよく グリュックを さそいました。

グリュックには えがおにもどって ほしかったのです。

「いっしょに いきたいけれど それは ……」

おひめさまが “むり” と いうまえに ルストが てをつないできました。

それから ふたりは おしろのベランダから とびおりました。

グリュックは おどろきすぎて こえもでません。

でも、ルストが マントをひろげると ふたりは そらをとんでいました。

「こんなのはじめて!」

グリュックは はながさいたような えがおになりました。

いつのまにか くらかったそらには おつきさまが かがやいていました。


あかるい もりのなかにある みずうみに ふたりはおりました。

オオカミにクマ ウサギやリスが そばに よってきました。

ほかにも たくさんのどうぶつたちが あつまってきました。

ルストは あつまってきた どうぶつたちと おはなしを しているようです。

でも、グリュックには なにをはなしているのか わかりません。

だから さっきまでの たのしさが うそみたいに かなしくなりました。

それに きがついたルストが あわてて イヤリングを とりだします。

ルストは グリュックのみみに イヤリングを つけてあげます。

すると グリュックにも どうぶつたちのこえが きこえてきました。

おどろきと うれしさから グリュックのかおは ゆきどけの はるのようです。


ふたりは ほかのばしょへも いきました。

こんどは おおきなウサギにのって おおきなおやまの どうくつへ。

そこでは ちょっとふとっちょな ちいさいひとが かべをたたいていました。

ルストが ちいさいひとから なにかをもらいました。

それを グリュックに みせてくれました。

ちいさいほうせきは おほしさまみたいに ひかっていました。

ルストは グリュックのイヤリングに ほうせきをつけました。

「きれいなほうせきを ありがとう!」

グリュックは とても よろこびました。

ルストも いっしょに よろこびました。

ふたりは とても あたたかなきもちに なりました。


ひがしのそらが すこしだけ あかるくなりはじめました。

まっくろだった おそらが すこしずつ オレンジいろに そまります。

グリュックは はじめて おしろをはなれて とおくまで きました。

「もう かえらないと……」

とても かなしそうに グリュックが いいます。

「もう かえさないと……」

とても ざんねんそうに ルストも いいます。

ふたりは かえりたくない と おもいました。

それでも ふたりは おしろまで かえってきました。


「また あえる?」

グリュックが ちいさいこえで ききます。

ふたりは みつめあい そっと くちづけを かわします。

「とても とても くらいよるに おつきさまが かおをだす まえに」

ルストは たのしそうに こたえると ベランダから ひとり とんでいきます。

グリュックは そのこたえをきいて しあわせなきぶんに なりました。

イヤリングが とりたちの うたを つたえていました。


絵本をイメージして仕上げました。

子供の想像力を頼りに具体的な表現を避けています。

何となく夜の住人とお姫様の淡い恋愛を感じて頂けたなら

この物語は成功したのかなと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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