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男子大学生と謎のおにぎり

作者: ミカヅキグマ

 なろうラジオ大賞2応募作品です。


 尊は悩んでいた。何故なら大学からアパートに帰ると自室のドアノブにレジ袋がかかっているのが見え、中を覗いたらおにぎりが入っていたからだ。それも大きめのが3つだ。


(食べても平気だよな?)


 部屋に入る前に周囲を見渡したが、怪しげな人影はなかった。

 ここは大学から歩いて5分ほどだが、少し奥まった所にあるので人通りが少ない。周囲も古そうな民家があるぐらいだ。


 尊は机に置かれたおにぎりを見ていたら、腹が鳴ってしまった。

 腹を壊したりした時のために胃腸薬を用意し、毒だった場合に備え、おにぎりについてのメモも残した。


「いただきます」


 危険かもしれないが尊は空腹に耐えられず、おにぎりを頬張った。


「っ!!」


 尊の全身に衝撃が走った。


「うまいっ!!」


 あっと言う間におにぎり3つを食べてしまった。中身も鮭、昆布、おかかと全て違った。


(食費が浮いた)


 誰だか分からないが尊は心から感謝した。




 尊が帰宅するとおにぎりが置かれている日々が続いた。今日もおにぎりを楽しみに帰宅したが、ドアノブにはレジ袋がかかっていなかった。


(残念だなぁ)


 いつしか、おにぎりが楽しみになっていたので尊はがっかりした。何度か自分で作ってみたが、あんなに美味しいおにぎりは作れなかったのだ。




 おにぎりが置かれなくなってから1ヶ月ほど経ったある日、尊がいつものように大学から帰宅すると、いつもは見かけない中年女性が歩いていた。

 誰だろうとは思いながら、通り過ぎようとした時だった。


「あの、すみません。もしかしてドアノブにおにぎり入りの袋があったりしませんでしたか?」

「ええ、そうですけど…」


 中年女性から話を聞くと、尊の部屋におにぎりを置いていたのは彼女の母親だそうだ。


「俺をお兄さんと勘違いして?」

「はい」


 彼女の母親は認知症気味で尊を息子と勘違いし、食に困らないようにと毎日おにぎりを届けたのだそうだ。


「兄は若い頃に亡くなったのですが、母は忘れてしまったみたいで…」

「それで、お婆さんは今どこに?」


 お婆さんは持病の悪化と認知症が進行したため、近くの病院に入院したそうだ。


「俺、会いに行きますよ」

「いいんですか?」




 尊はそのまま病院に行った。

 病室に入ると一人の老婆が横になっているのが見えた。


「お母さん。兄さんが来てくれたわよ」


 老婆は少し目を開けると、驚いたように尊を見た。


「っ母さん、おにぎり美味しかったよ。ありがとう」


 そう尊が言うと老婆は微笑み、目から涙が零れた。




 1000字にまとめるのって、大変ですね。最後も老婆ではなく、お婆さんにしたかったのですが字数が足りず……。字数の都合で主人公も一文字の名前にしました。某王子が出演されていた刑事ドラマでの役名を拝借いたしました。

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