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開かずの匣

作者: 高橋誠

SCPっぽい何かです。


 『とある女性の手記』


 私は、私達は大きな失敗を犯した。

 最初は興味本位だった……しかし気がつけば何かに心を支配されたかのようにアレに夢中になってしまった。

 気が付いた時にはアレを掘り起こしてしまったのだ。

 厳重に封印が施されていたのにも関わらず、私達はその封印を解いてしまった。

 

 ソレはただただ黒い箱であり、外見上はそれ以外の特徴をもたない。

 しかし、その箱を一度でも視界に収めてしまえば、いやがおうにもその箱を開けてしまいたいという欲求に駆られてしまう。

 私たちは便宜上、ソレを匣と呼称することにした。


 匣の特徴を以下に記述する。

 上記でも述べた通り、匣の外見はただの黒い箱である。大きさは縦横高さ全てが二十センチ程度のサイズです。

 黒い箱と記載したが、これは異常なまでに黒く染まっており、試しに匣に強い光を当てたところ、その光が吸い込まれたかのように、一切の光を受け取らなかった。


 この匣の異常な点は、匣を見た者に対し、匣への執着を強烈までに強くすることである。

 まるで自分の子供のような愛情で、まるで愛する人への独占欲の如き執着心であの匣を見てしまう。

 これは自分だけの力では抗えず、私達は第三者からの精神カウンセリングをもって一時的に症状を抑えるに至った。

 一時的ではあるが、匣の影響から逃れた私達(私含め計五人)の結論としては、あの匣は開けてはならないということである。


 匣の正体は不明だが、恐ろしい存在であることだけは私たち全員の見解一致であった。

 無償の博愛を奉げたくなる匣だが、その本質は別にあると私たちは考えた。

 つまるところ、上記の特性は副産物であり、匣の本質はその中身にあると推測したのである。

 

 以上が私達、考古学調査班が遭遇した謎の匣に対する見解である。

 私たちはこの匣の危険性を考慮して、これをもう一度封印することを試みた。

 私たちが彫りだす以前はなにか呪術的なもので封印処置を行っていたようだが、私達にはそうしたチカラはない。

 よって物理的に見れることがないように、出土した地点よりもより深い地中に埋めることにした。

 この処置がどれだけ効果があるかは不明だが、ひとまずは匣が誰かの手に渡ることはなくなっただろう。

 研究所に戻ったら、複数の専門家を集めてもう一度あの匣を調査する必要性があるかもしれない。



 『追記』


 私は勘違いをしていた。

 あの匣は見たものにたいして効果を及ぼすのではなく、存在自体を認識しただけで、匣にたいする執着心をもたらすのだ。

 事実、匣を直接見ていない研究所の仲間たちが次々とアレに対する執着心を見せるようになってしまった。

 中には匣に影響を受けた精神と、もともとの自我が相反した結果自殺をした者や、精神崩壊を引き起こしてしまった者も存在する。

 早くあの匣をなんとかしなければ…………。



 『追記2』


 私以外の研究員は全員いなくなってしまった。

 死んだ者や精神崩壊を引き起こした者、あるいは行方知らずになってしまった者も存在する。

 それでも私はあの匣の調査を続けた。

 匣に対する執着心を学術的興味に置き換えることで、なんとか自我を保っている状況だ。

 しかし、それももう長くはもたない。

 だからこそ、私は私が知りえた真実をここに記そうと思う。


 あの匣は最初の推測通り開けてはならないものである。

 あれはギリシア神話に語られる厄災の箱……すなわちパンドラの箱と呼ばれるものである。

 神話においてはアレを開けてしまった結果、世界にあらゆる災厄が振りかかったと語られているが、ソレは間違いである。

 匣は開けられてはなかった。


 否。

 本来開けるべきタイミングで匣を開けることができなかったのだ。

 

 詳細までは分からないが、アレは人類に災厄を振りまく匣ではない。

 むしろその逆で、世界を救世する効果をもった、ある種の救世主でもある。

 しかし勘違いしてはならない。

 匣はこの惑星にとっての救世主であり、人類にとっての救世主ではない。

 

 この惑星の文明をリセットし、新しい世界基盤を作ることを目的とする――――それこそがあの匣の正体である。

 我々人類にとってはまさしく終末をもたらす災厄の箱だろう。

 もしこれを呼んでいる人がいるのであれば、お願いしたい。

 匣の存在自体の記述はしないまま、匣についての注意を新たに作ってもらいたい。


 私たちの調査結果によれば、匣の外見上の情報さえ伝えなければアレの影響を受けることはない。

 その他についてはこれを呼んでいる君、あるいは君たちに判断を委ねたい。

 君たちの判断でなにが危険か、何が安全かを選択し、匣に対する注意喚起をしてもらいたい。


 そして最期に……。

 今現在匣の正体を知っている者は私だけである。つまり私が死ねば、匣についての情報を他者に漏らす心配はないだろう。

 しかし、この手記が読まれているということは、君、あるいは君たちも真実を知ってしまったということになる。

 私からの最期のお願いだ。

 

 匣に対する注意喚起を作ったのであれば、その次の選択はもう決まっているだろう。

 叶うのであれば、君たちは私と同じ結末を辿って欲しい。

 それでは、サヨウナラ。


                      ○○研究所 S・N

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつものscpのこんなん見つけんじゃ無かった感が、よく出てると思いました。関係無いですが、ハコのという単語からアニメとか映画の魍魎の匣と、オカルト伝承のコトリバコがなんとなく想起されて、そ…
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