47 黒龍との戦い
リーナをどうにか説得しヒヨコ亭に預け、エルとも合流を果たした。
いまだに黒龍の攻撃が続く中、俺は結界を貼り続けてどうにか凌いでいる状況だった。
周りが見てどちらが有利かと言えば圧倒的に黒龍の方だと思うし、俺もそう思う。
まず黒龍が咆哮した後に放つ黒い塊についてだが、何で触れてる部分の結界が徐々に溶けているのかと言うと、黒い塊が魔力を吸収するようなのだ。
と、エルが教えてくれた。
魔法ど素人の俺には吸収されているとかは分からないので、エルのおかげだ。助かった。
で、黒い塊が他物質から吸収した魔力がどうなるかと言うと黒龍に流れているとのこと。
要は、放った攻撃で魔力を吸収してまた攻撃に充てる。自給自足型の魔物というわけである。
それと黒い塊は魔力意外にも地面や建物に触れると、腐食しているような反応を起こしている。黒い塊が変えた後、触れていた場所は溶けたようにしてなくなるのだ。
そういうことは俺が触れると溶けてなくなる、ということ。普通に考えて危険すぎだろ! 普通に考えなくても危険すぎだ!
そもそも俺はあの黒龍を魔物と認識しているけど、世界の味方某サイトWukapediaさんやラノベ等で考えた場合、龍は「神の使い」だったり「人間の世界を守る神様」だったりという認識がある。そういう風に書かれてたし、描かれてた。
それがこの異世界で通用するかは別としてだけど。
例えば、あの黒龍が神の使いだとして、言葉を交わすということは可能なのか、という疑問が俺の頭にはある。
黒龍の攻撃を凌ぐので精一杯な俺に、話しかける余裕すら今のところないけど。そのうちボロが出てくるだろう。出てほしいくらいだ。
そんなことを考えている間にも黒龍の攻撃である黒い塊は飛んでくるわけだ。しかも空を飛んでいる為、あらゆる角度から攻撃を仕掛けてくる。建物にぶつかってその部分が溶けているのが分かる。
だが、ここにはまだ人が居るんだ!
本当に溶けたあの場所に人が居たとしたら、もう……。それを考えただけで俺の頭に血が昇る。冷静さを保ちつつ出方を伺っていた俺だったが、どうにもダメそうだ。
気が付いた頃には地面を蹴り、黒龍まっしぐらで空中に飛ぶ。どのくらいの力で地面を蹴ったのか分からなかったが、ほんの数秒で黒龍の顔面の前に俺は居た。正式に言えば浮いてるように感じた。
俺は今しかない!と直感的に理解をし、右ストレートをお見舞いしてやる。
ーーギュワァァァァァァァァ
黒龍は声にならないほどの断末魔を上げながら空中で飛ぶ姿勢を崩すと、そのまま地面に向かって落ちているようだ。ただその下には家があり、新たな被害が生まれかねない。
俺は空中で思い切り蹴り、黒龍の真下に移動し、もう一度右ストレートを入れてやった。
ーーガァウアァァァァァァァ
そんな声を上げながら黒龍は空高く飛んでいく。
効いてるのか分からないが、上げる声的に効いてそうだ! 攻撃が効くようで安心しているが、多分神の部類ではある為、そんな簡単に安心は出来ないと思う。
再び攻撃をする為、俺は空を蹴り、黒龍の方へ飛んでいく。
そんな時、体勢を崩したまま空高く飛んでいた黒龍が突然、飛ぶのをコントロールしたのだ。黒龍の動きに合わせ俺も止まろうとするものの、止まり方が分からず黒龍の顔面で止まってしまう。
距離を取っておきたかったのだが、普通にまずい状況だ。
お互い何もしないまま数十秒が経ち、痺れを切らすかのように黒龍が口を大きく開ける。このモーション、黒い塊を打つ時と同じだ。
俺は空を蹴り、距離を取る。
同時に、
『お主は何故、儂と戦うのじゃ?』
黒龍の声が聞こえた。
やっぱり喋れるようだ。
しかし俺は考えるよりも先に反射で口を開いてしまう。
「何を言ってるんだ」
『そのままの意味じゃよ。どうして儂と対峙してるのじゃ』
この黒龍は何を言ってるんだ? そっちが攻撃してきたから俺は対峙してるんじゃないか。
言ってることは伝わっているのだが、黒龍が何でそんなことを言ってるのかが疑問で仕方ない。
『お主は今、儂に対して『何を言ってるんだ? そっちが攻撃してきたから俺は対峙してる』と思ったであろう。儂が攻撃した理由を話せばお主も理解出来るんじゃないじゃろうか。聞くかの?』
「あ、あぁ。お願いする」
黒龍は一呼吸し、
『儂は深い眠りについていたのじゃがな、召喚陣によりここに召喚されたのじゃ。召喚陣とはまぁ、お主が異世界人なら分かると思うが、例え召喚されるものが高位存在であろうと成立し、召喚時に制約が発生するんじゃ。儂も召喚され、制約が発生した。じゃが、その制約は召喚主が死ぬか召喚陣を消しさえすれば、無くなる。今の儂がその状態であろう。攻撃した覚えもあるが、お主に殴られたおかけで制約が破棄されたのじゃ。まあ、感謝しておるのじゃよ』
説明してくれた。
「俺のことを知っているのか?」
『知らぬよ。ただ、龍は神の使いであり、世界の番人でもある。儂がその一人じゃ。世界の番人に見れないものはない。だからお主が異世界人だと分かるのじゃ』
やはり俺の予想通り、この黒龍は神の使いだったようだ。それに攻撃してきた理由も、制約による強制だというのも分かった。
「それなら、もう帰ってくれるってことでいいのか?」
『そういうわけではない。異世界人、しかも神の寵愛とも表現出来るほどの籠を受けているお主を野放しにしておくなど、儂には出来ぬ話じゃ』
どうにも話が通じないようだ。
「見逃すとかも無理なのか? またいずれ、みたいな」
『無理じゃ。儂とお主が今この場所で対峙しているのは偶然じゃが、お主を処分するのは必然じゃよ』
「……そうか」
この世界に来るのに色々な出会いがあった。女神様二人と会い、娘が出来、冒険者にもなった。クラスメイト達はきっと今頃は勇者としてお互いに切磋琢磨し、強くなっているところだろうと思う。
そんな俺は、ここで終わるのか? リーナを残して、シルテ様ともまた会わずに。
短い期間で出来た俺のたくさんの思い出が込み上げ、
「黒龍。残念だが、俺は負けない」
改めて戦うことを決めた。




