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43 VS黒ローブ戦①

 王都ギルデバンスを急いで飛び出した俺は現在、エルに元のサイズに戻ってもらって背中に跨り、ウイゴーンや他の冒険者たちが今居るはずの森へとエルのスキル『超移動』と風魔法『ブラストウィンド』を使って向かっているところだった。


 「エル、もうちょっと早くスピードは出せない?」


 「はぁ。いくらオレが超進化してる規格外の魔物だとしても、これ以上だとさすがにキツイぞ」


 俺の質問に呆れるような声を出してくれた。


 「そっかぁ。なら、仕方ないか」


 そう、仕方ないのだ。


 諦めるわけにもいかないので、魔力を使ってスピードを上げることにする。


 エルには凄く申し訳ないないが、我慢してもらうしかないだろう。


 しかしどうすれば良いんだろうか、やり方というか、手段が全く浮かんでこない。


 うーん、風魔法を使おうにも俺はスピードを上げるための魔法を知らないし使えないし、エルの今使っている『ブラストウィンド』はエル専用のようなスピードを上げる魔法だから、俺には使えるかもしれないが今試してみる余裕はないし、スキルの『超移動』に関しては無理だ。


 うーーーーーん、あっ!


 そういえば、魔力の制御をせずに使った時の魔法の威力は化け物みたいな威力になってたから……ということは、エルの中に俺の魔力を注ぎ込めば良いってことになるのか?


 「自分の魔力って、他人の中に中に注ぐことはできるの? もしくは、分け与えるな感じなことなんだけど」


 「できるとは思うが、ぶっつけ本番をしようにも可能性は低いだろう。なにより同じ種族同士なら簡単だが、人間と魔物ってなると成功しないんじゃないか」


 なるほど、でも試してみる価値はあると思うんだよな。


 もしも出来ていたとして、今やらなかったら、俺はもの凄く後悔をするだろう。


 「エル、成功したら今よりもスピードが上がるから、気を付けてね」


 「え?」


 エルにこれからすることを簡単に伝えて、魔力の制御をやめる。


 と同時に、内側から魔力が出てこようとしているのを軽く感じ取った。


 この前は感じなかったんだけどな。


 「え……?」


 気の抜けたエルの声が聞こえてきたが無視する。


 今は1秒でも早くウイゴーンや他の冒険者たちのとこに行かなくてはならない。


 ちなみに魔力をエルの中に注ぐ行為を『マジックオペレーション』とでも名付けとこう。


 いやうん、魔力を移動させるから、『マジックオペレーション』だよ?


 え? もっとマシな名前にしろって? 正確な名前を知らないんだから仕方ないじゃないか!


 まあそんなことよりも、早くしなくてはだ。


 エルの中に魔力を注ぐイメージをなんとなく持ちつつ、俺の体の中にある魔力を右手と左手を通して移動させていく。


 「な、なんだこれは!?」


 何かを感じたんだろうか、エルは全速力で走りながら驚いた声を漏らしてきた。


 いや、そんなことしたら息継ぎ大変じゃない?


 魔力を注ぎ込みつつも、エルの心配をしてしまったが、まだまだ注ぎ込んでいく。


 注ぎ始めて少ししてから、エルのスピードがみるみるうちに早くなっていっていた。


 エルの言っていた通りに試してみるのも案外良い方向に進むものだな、だけど、これってどういう原理なんだろうか、俺が注ぎ込んだ魔力をエルが今使っている魔法に直接使うようになっている、のだろうか。


 どちらにせよ、スピードは確実に早くなった。


 だがその後、スピードが上がるのはそこで留まらず、1分後には視界が見えなくなるくらいのスピードにまで経ってしていたのであった。






 視界が全く見えなくなってしまってから5分くらい過ぎた頃だろうか、ついに俺とエルは目的地前までついていた。


 ただ、ここはそのまま突っ切って、もっと奥の方にまで進んでいかなければならない。


 「エル、もうちょっとの辛抱だから」


 慣れていない速さでずっと走っていたエルは、雰囲気がもの凄く辛そうだ。


 「う、うむ……」


 反応を示してくれるも、今は走ることに優先してくれている。


 んー、もうそろそろかな?


 なんていう風に説明をすればいいのか俺にもわからないが、頭の中?に地図のようなものが見えているから、もうそろそろかなって俺は思ったんだ。


 「俺はウイゴーンさんや他の冒険者の人たちを助けてくる。エルは疲れてると思うけど、片っ端に魔物を倒しておいて」


 エルの背中をヨシヨシと優しく何回も撫でると背中から一気に降り、頭の中にある地図に反応のある場所に向かって全速力と魔力を使い駆ける。


 目に見える木にぶつからないようにタイミングよく避けることによって、ビュンッという音が何度も鳴る。


 「ウイゴーンさん!」


 木々が視界から無くなり、代わりにウイゴーンが視界に入った瞬間俺は叫んでしまった。


 また他にも、冒険者の人たちや対峙している大量の魔物たちの姿も確認ができた。


 「ナツナギくん!? どうしてここに?!」


 俺がどうしてここにいるのかわからないという表情を全力に出しているウイゴーンは、自分に向かって襲いかかってきた魔物を持っていた武器で1発で仕留めてみせた。


 さすがです。


 内心そんなことを思いながら、


 「それは後からです。とりあえず今は、ここにいる大量の魔物を倒しますから」


 視線をウイゴーン外して、大量の魔物たちへと向ける。


 何が起こるのかなんとなく察しがつけたウイゴーンは、


 「全員、魔物から離れろ!!」


 素早い判断を冒険者たちに出してくれた。


 このウイゴーンの行動のおかげで、俺は冒険者たちのことを気にせずにこの大量の魔物たちをちゃんと倒すことができる。


 魔力の制御はエルに魔力を注いでいるときからしていないので、そのまま一気に『アイスフィールドランス』の最大火力で決着をつけることにした。


 「アイスフィールドランス!」


 その一言によって、俺やウイゴーン、冒険者たちの遥か上空にて大きな魔法陣が展開され、1秒も経たないうちに地面目掛けて大量で大きな氷の矢が発射される。


 その凄まじい光景を見ていた冒険者たちは何が起こっているのかわからないような表情を見せて口をぽかんと開きながら、氷の矢が落ちてくるのを身で見続けていた。


 「……ナツナギくん、どこから話を聞けばいいのかわからなくなってしまったよ」


 「えっと……と、とりあえず、ここに来た経緯から」


 ウイゴーンの表情が、なんというか、驚きを超えて呆れているものに変わっているのは気のせいだろうか?


 その後すぐに、俺がウイゴーンに説明をしようとした時には、『アイスフィールドランス』によって氷漬けになった大量の魔物たちは霧散したのであった。


 「まず、ここに来た理由を話してくれ」


 「あ、はい。簡単に言うんですけど、ウサギさんがやって来まして、ウイゴーンさんや冒険者の人たちを助けて欲しいって頼み込まれたんです。なので、ギルバデンスから全速力でここまでやって来たって感じです」


 「なるほど。これはウサギに感謝しなくてはならないな。ギルバデンスにはもう帰れないとばかり思っていたが、ナツナギくんの助けで帰れるようになるとは」


 「俺にじゃなくて、ウサギさんだけにたくさん感謝してやってください。あっ、それと1つ質問なんですけど、どうして俺にこの事を教えてくれなかったんですか?」


 「ーーッ!?」


 「どうしたんですか?」


 「いや、それはー、なんというか……」


 何か気まずいことでもあったのか、それとも理由を話せないのかウイゴーンは今まで見たこともないくらいに焦りに焦りまくってしまっている。


 「あー、話せないのなら無理に話さないでくださいね。話せれるようになったらでいいんで、その時はちゃんと話してください」


 「お、おう! ありがとな、ナギルくん」


 「ん? 今、ナギルって呼びました?」


 「い、いや、気のせいだと思うんだが?」


 疑問に疑問、ウイゴーンはなぜか認めない。


 「ナギル呼びでも俺は大丈夫ですから」


 「そうなのか。なら、ナギルくんと今後は呼ぶようにするからな」


 そう口にしながら、ウイゴーンはどこかほっとしていた。


 というか、さっきナギル呼びしていたのに今後はって……まぁ、いいか、気にしないのが1番だな。


 「って、1番聞いておかないといけないことを忘れるところだった。ナギルくん、さっきの魔法の威力はなんなんだ!?」


 本当に忘れていたのだろう、ほっとしていた感じは一気に消えてしまって、今は目が飛び出すかのような勢いで俺のことを見てきてくる。


 なんて答えようか、本当のことを口にするのもアレだしな。


 「いつも使っている魔法ですよ」


 「いつもみたいにか!?」


 「まあ、そうですね」


 うん、俺は別に嘘はついていないんだ、断じて嘘はついていない。


 いつも使っている魔法はあれよりも威力は弱くしているけれど、うん、きっとどうにかなるよね!


 「そんな強い威力の魔法を使えるとは、凄いな」


 「あ、ありがとうございます」


 普通に信じてくれたウイゴーンを見て、俺はほんのちょっとだけ罪悪感を覚えてしまった。


 別に嘘をついてしまっているわけではないのにほんのちょっとだけの罪悪感を覚えるということは、嘘の可能性もあるということなのか?って、そんなこと俺が1番わかっているのにな。


 「まあ、事は済んでしまったし、早く王都に戻るとしようか。ウサギが心配してしまっているみたいだしな」


 「そうですね。リーナたちも待っていますから。ん……? エルがこっちに来てるな」


 「エル? ナギルくん以外にも誰か来ているのか?」


 「あ、その、エルっていうのはーー」


 エルのことを口に出してしまったせいでウイゴーンに誰かと尋ねられてしまい、俺は

がどう説明したものかと悩もうとする時にはすでに遅かったみたいだ。


 「主! 今すぐここから離れるんだ!!」


 しかし現れたエルは焦っていた。


 「なっ!? この魔物、喋ったのか!?」


 そしてそのエルを見てウイゴーンが驚いて、そのエルの大きさを目にした冒険者たちはその場から動けなくなってしまった。


 「それってどういうこと?」


 「それを説明してる時間がないんだ。今すぐ離れなければ、ここにいる全員が奴らにやられてしまうぞ」


 「なるほど」


 今まで見たこともないエルの表情や反応を見た俺は、エルの言っていることを受け入れる。


 「なぁ! これはどういうことなんだ!?」


 近くにいるウイゴーンは俺とエルのやり取りを見て、またも驚きを隠せなくなってしまっていた。


 「けど、ここにいる全員を今すぐって難しいと思うんだけど。って、また反応が出てきた?」


 そんな疑問を思った時、ここにはいない誰でもない反応が頭の中の地図で見えた。


 それも、4つ。


 エルの言っていたことは本当だった、ということになってしまう。


 だが、今からここから離れようにも負傷者が多すぎるし、その怪我を全員分治すのにも時間がかかってしまう。


 その間にも4つの反応はどんどんこちらに向かって近づいてきてしまっている。


 「ウオォォォォォーーーーーン!」


 そんな時だった、エルが叫んだのである。


 その直後、何かが地面へと落ちていくのが確認できた。


 俺の頭の中でも確認はできていた。


 「これは……」


 確認をしてみると、そこに落ちていたものはナイフ。


 「さすが魔物の勘と言ったところか」


 そしてついに4つの反応が視界の中へと姿を現してきた。


 声の聞こえた方へ視線をずらしてみると、そこには、黒いローブを身に纏い顔まで見えないように深くフードを被っている4人が立っていた。


 体格などから察するに、男4人だろう。


 「主、魔物を大量に呼び寄せてるのはコイツらの仕業だ。それにレベルも確実にバケモノじみている。オレよりもだ」


 「なんだと?!」


 俺よりも先にウイゴーンがエルの言葉に反応し、驚いた。


 しかし、この4人は何がしたいんだ? 


 魔物を大量に集めて、何が目的なんだ?


 まったくわからない。


 けれど、1つだけ分かる事があるのだとすれば、エルの言っていた通りこの4人は強いと思う、ウイゴーンと互角かそれよりもか。


 だけど、その内の3人は強いが負けないほどではないと思う。


 「なぁー、殺していいよな?」


 1人の男がリーダーらしき男に話しかけ、どこからともなく2本のナイフを取り出し構えてくる。


 「あぁ」


 話しかけられたリーダーらしき男が短く答えると同時に、ほかの2人も武器を取りだし構えてきた。


 どうすればいい、この状況。


 みんなで逃げるか?


 エルに任せてみんなを逃がすか?


 いや、答えは既に出ているんだ。


 「ウイゴーンさん、俺とエルで時間を稼ぎますからその間にギルバデンスに戻って落ちてください! いくよ、エル!」


 「ーーっ!?」


 突然の事で驚きを隠せなかったウイゴーン、口を開く前に俺はその4人に向かって駆け出した。


 エルも俺の後に続くようについてきてくれる。


 「エルはリーダーらしき男を頼む。すぐに3人を倒すから、その間だけでも」


 「わかったよ」


 こうして俺は、ウイゴーンを背に、4人の黒ローブの男たちを戦う事になったのである。

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