36 計画の実行
夜明けとともに大地に太陽の恵みがもたらされている頃。
王都ギルバデンスから離れ、ゴブリンしかいない山よりも先の方に位置しているとある洞窟の中にて五つの影があった。
正確には、五人いるという方が合っているだろう。
そのうちの一人、まるで漆黒を纏っているかのようなローブからでもしっかりとした体つきをしている男性が口元をニヤつかせて口を開く。
「ついにこの日がやって来た。大量の魔物を使って王都ギルバデンスを襲撃する日が」
その言葉に反応を示すかのようにして残りの四人が同時に口元をニヤつかせる。
するとそのうちの一人がローブの内側から手を出しながら口を開く。
しっかり見てみると胸の部分が少し膨らんでいることが分かる。女性だろう。
「レイア、私は王都の中から洗礼しようと思う」
レイアと名前を呼ばれた男性は黒色の目を話しかけてきた女性へとゆっくり向けた。
その発言を聞いた残りの三人は少し驚いた反応を示す。
「あぁ、王都の中から洗礼をするということはそれなりの危険が付くが、まあ大丈夫か」
そう口にするレイアを見ながら黙っていた三人はホッと安堵をついた。
「ありがとう、レイア」
そう述べると、許可をもらった女性――ヘーアはローブに付いているローブ深く被り顔を見えなくなるようにするのだった。
そしてそのまま洞窟の奥の方へと歩いて行った。
ヘーアがいなくなると、黙っていた三人が顔を見合わせて、そのうちの一人の男性が口を開いた。
「今思えば、この作戦を立ててから実行するまでの時間あまりかからなかったな」
そう口にしたのは細すぎる体の男性――ウィート。
それに対してうんうんと頷いて反応を示す男性――ヘイズとワィアンの二人。
その会話を聞いていたレイアは洞窟の外の方を向いて、この作戦を立てる前のことを思い出すのだった。
◇
今から一年前。
レイア、ウィート、ヘイズ、ワァイアン、ヘーアの五人が集まった時の話だ。
この五人はみんな違う場所で生まれて、違う生活をしていた。
何故そんな五人が集まったかと言えば、色々な事情があったからである。
レイア――王都ギルバデンスの王族として生まれたものの、王族内から酷い扱いを受けた結果王都ギルバデンスから抜け出した。当時十八歳。
ウィート――小さな村の出身だが父親が村長だったため意外と裕福な生活をしていた。しかし村人の反乱によって命を絶ち、家族を失い一人だけになったのだった。当時十六歳。
ヘイズ――村人だが、忌みの子として生まれてきたことにより酷い扱いを受け、村を出た。当時十六歳。
ワァイアン――王都ギルバデンスから最も離れているとある国にて命を灯したが、数十年後両親は一度掛かると治ることのない病気に掛かってしまい失って、その国を出ないといけなくなった。当時十六歳。
ヘーア――暗殺術を小さい頃から習い十五歳になる頃には数えきれないほどの人間を殺したが、家庭内のとある裏切りによって死にかけの状態で逃げることになる。当時十七歳。
それから何年かの月日を経て、この五人は現在いる洞窟内で出会ったのである。
そして五人は自身のことを話して、共感し、作戦を立てたのであった。
◇
洞窟の入り口にレイアは一人立っていた。
視線の先は王都ギルバデンスがある方向なのだが、距離がありすぎていて全く見えない。
ただそれでもレイアは王都ギルバデンスがある方向を見つめ続ける。
すると目を瞑り、口をゆっくりと開く。
「――王都ギルバデンスは今日が最後の日だ」
そして洞窟内へと姿を隠すのであった。




