26 不思議に思う
遅くなりました。
昨日までの休みが終わって、今日からはまた冒険者ギルドにてクエストを受ける日がやって来た。
ただ今日からは、リーナはヒヨコ亭に預けて、俺とエルだけでクエストを受けることにする。
リーナも冒険者資格証を持っているからクエストを受けた方が良いのだが、今日からは魔物を倒す予定にしているので、魔物が死ぬところをリーナには見せてはいけないと思ってる。
それに、リーナの冒険者ランクは今急いで上げようとしなくても特に問題はない。
ただ、俺の冒険者ランクだけは上げておいた方が良いと思う。
ウイゴーンさんにそうしろって言われてしまっているから。
そして今日も朝から、
「えーっと、今日はどうしようかなー」
クエスト掲示板に貼ってあるクエストを見ながら、どのクエストを受けるのかを決めていく。
だが、受けたいと思うクエストが見つからない。
すると、エルの声が頭の中で聞こえてくる。
「主、どうかしたのか?」
「ん? どうもこうも、受けてみたいクエストが見つからないんだよ」
「あぁー、そういうことかぁー」
そう言って黙り込んでしまったエルは、しばらく考えことをしていると、
「そうだな。そこにあるスライムのクエストを受けるのはどうですか?」
「……スライム?」
言われるままに俺はクエスト掲示板に貼ってあった、スライムに関するクエストを手に取って確認をしてみた。
えーっと、なになにぃー。
俺が手に取ったスライムに関するクエストには、王都ギルバデンスの南門から出て、しばらく歩いて行くと水色の湖というがあるのだとか。
そして、そこに出てくるスライムを十五匹倒して、解体すると手に入るスライムジェルを十五個手に入れてこいとのことらしい。
なるほどな。
でもな、一つだけ不思議なことがあるんだよ。
それが何なのかと言うと、スライムを解体ってどうやってするんだよっていうことなのである。
一度スライムについて考えてもらいたい。
と言っても、俺が知っている限りで想像出来てしまうスライムの姿は、ドロドロというかなんというか、ちょっと触りたくない見た目をしている魔物に違いないだろう。
それからしばらく考えた結果、
「よし、これにするわ」
「了解、主」
スライムを十五匹倒してスライムジェルを十五個手に入れてくるクエストを受けることにした。
その後カウンターにて、クエストを受けた俺は、王都ギルバデンスの南門から外に出ることになったのであった。
とりあえず、王都ギルバデンスの南門から出るまで少し話をしよう。
話と言うのは、先ほど俺とエルが話をしていたことについての話だ。
あれは別に口を話をしていたわけではなく――だって、エルみたいな動物が口を開いて人間の言葉を話したら、それを聞いた人は絶対に驚いてしまうじゃないか。
そういうわけで、俺とエルは口を開かないで、念話という口を開かないでも話すことが出来る方法にて、俺とエルは会話をしていたのである。
冒険者資格証を見せて王都ギルバデンスの南門から外へと出た俺とエルは、しばらく歩いてから、エルを元の大きさに戻すことに決めた。
それからしばらく歩いて、南門から見えないだろうと思える距離までやって来た。
「よし。エル、元の大きさに戻って」
「了解、主」
そう言うと、エルは元の大きさに戻――らなかった
「あれ?」
そう言うとエルはもう一度元の大きさに戻ろうと試す。
「……戻らねぇーな」
「え? 戻らないの?」
どういうわけか、エルは元の大きさに戻ることができず小さい子犬のような姿のままだった。
そこからしばらくの間、俺はエルと一緒に、どうにかしてエルを元の大きさに戻せるのかということと何で元の大きさに戻らなくなってしまったのかについて調べた。
その結果として、その前者と後者二つともしっかりと分かることが出来たのだった。
最初に前者の方で分かった事は、なにをどうすればもとに大きさに戻せられるのかわからなかった。
まあ、そこは俺じゃなくてエルにしかわからないのだが、エルにすらわからなかったみたいだ。
最後に後者の方で分かった事は、エルによる体内にある魔力の動きが悪いからなのかもしれないということだった。
何故体内にある魔力の動きが悪くなってしまったのかと言うと、王都ギルバデンスにやって来てから一度もエルが元の大きさに戻っていなかったという理由が挙げられる。
そういうことなので、もう少しの間は元の大きさに戻るのはできないかもしれないとのことだった。
ま、エルが元の大きさに戻ることが出来ないのであれば、自分の足でどうにか歩いて行くしか方法はないのだが。
ここで文句を言っていてもどうすることもできないので、エルと仲良く歩いて行くことにしよう。
◇
歩きまくって目的の場所に着いた俺の視界に映っている景色。
「おぉー、ここが水色の湖なんだ」
そんな景色を見ながら、俺はそう呟いた。
そもそもなにで水色の湖って名前になっているのかが分かってしまうかもしれない。
それで俺の考えを言ってみると、湖は水色ということがわかるくらいに透明感があるのだ。
なにより、水色の湖の周りでは大量のスライムがいるのである。
そしてその水色のスライムも、水色の湖が、水色の湖と呼ばれているからなのではないのだろうか。
まあ、どこまで考えたとしてもちゃんとした答えを導くことは俺にはできないのだがな。
「それじゃあー、手分けをしてからスライム十五匹倒そうか。エルは倒した後は、そのままにしておいていいからね」
「おう、任せとけ」
最後にそんな会話をすると、俺とエルは二手に分かれたのであった。
「やるか」
俺はそのまま歩いて行ったところにいたスライムを倒すことにする。
スライムの倒す方法については、エルに伝授してもらった。
「アイスランス」
そう口にすると、水魔法のアイスランスの魔法陣が手の中で構築されて、スライム目掛けて飛んで行く。
飛んで行ったアイスランスは数秒後には、スライムの核と呼ばれている、体の中心にある黒い球体に刺さった。
刺さる前までは、ポヨンポヨンとスライムは動いていたのだが刺さるのと同時に動くのをやめてしまう。
えーっと、【自動解体】を使えば、スライムジェルが手に入るよな?
そう思いながら俺は、
「自動解体」
と言ったのだった。
核をアイスランスで突き刺されてしまったスライムは少し光を出しながら、瞬きをした後には、ジェルっぽいものに変形していたのである。
「これで一個だな」
落ちているスライムジェルを拾ってみると、ぬるぬるしていて滑り落としそうになってしまう。
滑り落とさないようにどうにか握って、素材袋の中へ入れた。
その後も俺は、黙々とスライムを倒してスライムジェルを手に入れていくのであった。
同時刻。
俺と分かれて行動することになったエルは、スライムを倒そうとしていた。
「な、なんで倒せないんだ!」
普通のウルフではないエルにとってスライムなんて魔物は敵でもなんでもないのだったのだが、核を壊そうと攻撃を仕掛けても上手く壊すことができなかったのだ。
「もう一度!」
ポヨンポヨンと動いているスライムにもういとど攻撃を仕掛けてみるも、前足がスライムの体にポヨンと跳ね返されて、核まで届かなかった。
「くそっ!」
そこからというものエルは頑張って頑張って、スライムと戦い続けたが、結局倒すことはできなかった。
というか、体力切らして倒れているところを俺が見つけたんだけどね。
ま、エルが小さい状態の時に確認した時、足から生えてる爪がまったく出ていなかったから攻撃はできないだろうなと思っていた。
その結果、攻撃することができなくてスライムに苦戦してしまうことになってしまった。




