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23 正式な冒険者登録

 「ふぁーーーー」

 「おはよう、リーナ」

 「パパ、おはよう」


 一つのベッドの上で夜を明かした俺とリーナとエルだが、エルはまだ起きてはこなかった。

 朝の挨拶をするなりリーナは、俺に抱きついてくる。

 そんなリーナの頭を優しく撫でてあげると、ぱっと明るい顔をしてくれた。

 なんていう天使みたいな笑顔なのだろうか。もの凄く可愛い。


 ……話がいつの間にかここまで進んでいるみたいだから、どういうことなのかわからない人たちがいるのかもしれない。

 そういうわけで、王都ギルバデンスの中に入った昨日の話から今日の今になるまでの話を、簡単にしようと思う。


 まず昨日、王都ギルバデンスに着いた時に、門に立っていた門番の男性から身分になるものを提示された。

 一瞬シルルテ村の時みたいに迷ってしまったが、シルルテ村で冒険者になるための仮試験を受けて合格していた頃を思い出し、仮冒険者資格証を見せたら、中に入ることが許された。


 リーナの分はいいのかと尋ねてみた結果、小さい子だからまだ大丈夫だと言われた。

 エルに関しては、見た目は可愛い小型犬なので気にしていなかったけど、特に何も言われなかった。


 その後、ドリルバがいるであろう冒険者ギルドに行こうとしたけど、門番の男性にヒヨコ亭という宿屋に止まると色々安く済むと言われたので、そこへ向かった。

 お金の単位や価値的なものはシルルには話をされていたので、特に困ることはなく宿に泊まることが出来る。

 あ、それとだけど、お金はステフォさんにもらっていた。もらうのはなんとなくダメだなと思っていたのだけれど、実際のところ俺は無一文。

 そういうことで、俺の世界で表すと1円=1オルの価値になる、1000オルを受けったのである。


 そこからエルは走り疲れていたのか、ヒヨコ亭で取った部屋に着くなりしてベッドの上に乗ると一瞬で眠ってしまった。

 まあ、ヒールを使っていても蓄積されてしまった疲労までは回復できないからな。

 それに続くようにしてリーナが眠りそうになったが、少しだけ王都の中を散策してタオルなどを買っていたので、それを使って体にある汗などを、水魔法を使って綺麗にして寝かせた。


 体が汚いままだと、次の日はもっと汚くなってしまうからね。

 さすがにそんなリーナは嫌だ。

 ……いや、俺も水魔法で体を綺麗にしたよ!!


 で、今に至るというわけである。


 「ふぅーー」


 ベッドから降りた俺は、気持ちいいくらいの背伸びをする。

 水魔法を使って、浮かせるようにしてウォーターボールを生み出し、顔に優しく当てていく。

 しばらくして顔から離してみると、浮いているウォーターボールの中には顔の汚れや目やになどがあった。


 おぉー! 昨日も試しで使ってみたのだが、本当に魔法ってものは凄いよな!!

 改めて魔法に感心してしまっている俺だが、まだやることは残っている。

 それは、リーナの顔も綺麗にしないといけないこと。

 俺の顔の汚れが残っているウォーターボールは、ヒヨコ亭でもらった袋の中に入れる。


 「リーナ、綺麗にしようか」

 「うぅぅん」


 起きたばかりでまだ寝ぼけているみたいで、返事が眠そうだな。


 「ウォーターボール」


 そう言って、ウォーターボールを浮かせながら、リーナの顔に優しく当てていく。

 冷たかったらしく、リーナはビクッと体を動かして抵抗してこようとしてくるが、抵抗しないように体を優しく抑えて綺麗にしていった。


 「綺麗になったよ」

 「うぅぅん」


 あれ? まだ眠いのかな?

 そう思ってしまった俺は、リーナをベッドに寝かせてあげる。

 しかし、


 「付いてく」


 ベッドからすぐに出て来て、そう言いながら俺にしがみついてきたのだ。

 うん、分かった。というか……めちゃくちゃ可愛い!

 心から思いながら、俺は天使のようなリーナを連れて部屋を出るのだった。

 エルは……まだ起きていないので、後で何か買っておいてやろう。その代わり、エルには拒否権なしでもふもふさせてもらうとするか。

 あ、俺が部屋から出た理由は、朝ご飯を食べに行くためです。


 階段を使って下に降りてみると、すでに何人かの人が起きて出かける準備などをしていた。

 そこでたまたま目の前を昨日泊まる時に受付をしてくれたヒヨコ亭を経営している少女、ユンちゃんが走りながら通って行く。


 「おはよう、ユンちゃん」

 「……おはよう」

 「あ、ナギルさん。おはようございます!」


 俺の挨拶を拾ったユンさんは一度止まって俺の方を向くと、挨拶をしてきた。

 お、リーナも小声で挨拶したみたいだな。あとで褒めてあげなくては。

 そういえば、ユンちゃん十二歳って言ってたけど、中学生くらいで両親の経営してるヒヨコ亭の経営を手伝うなんて偉いよなぁー。


 そんなことを思いながら、俺はそのまま道なりに進んで行く。

 道なりと言っても、食堂に進む道しかないんだけどね。

 食堂はすぐそこにあるので、食堂に着くなり空いているテーブルに座る。どこのテーブルも空いてた。


 それとリーナは俺の隣に座る。

 しばらくテーブルで待っていると、一人の女性がやって来た。


 「おはようございます、フィナさん」

 「おはよう、ナギルくん」


 見た目スタイル抜群、ユンちゃんにどこか似ている感じのこの女性は、立派なユンちゃんの母親だ。

 チラッと隣に座っているリーナに視線が移る。


 「リーナちゃん、おはよう」


 おぉ、フィナさんがたぶん人見知りだろうリーナに挨拶してしまった。

 単なる予想だけど、リーナは挨拶できないんじゃないんだろうか。

 そう思っていると、


 「……おはよう……」


 予想外にも、小声ながらも挨拶をちゃんとしたのである。俺の耳にもフィナさんの耳にも聞こえる小声で。

 そんな挨拶をが出来たリーナを見て、ニッコリとした笑顔をするフィナさん。


 「えーっと、どうする? 食べたことないと思うから、こっちのおすすめメニューにするけど?」


 フィナさんはそう言って、どうするか聞いてきた。

 まあ、フィナさんの言う通り食べたことないしおすすめメニューを頼むとしようかな。


 「なら、フィナさんおすすめメニューでお願いします」


 あ、リーナはどうしようか。

 しばらく考えた結果、


 「あと、リーナの分は俺が食べる半分をお願いします」


 そういうことにした。


 「分かったわ。少し待っててね」


 そう言って俺がさっき通ってきた通路へ戻って行ったフィナさん。

 ん? どうしてフィナさんに、くん付けで呼ばれているのかって?? んー、そんなことは分かんない! マジで!!




 それからほどなくして、美味しい朝ごはんが届きました!

 異世界のご飯、最高です!!


 ◇


 時刻はすでに、十時三十分頃。

 今俺は、ヒヨコ亭の泊まっている部屋にはおらず外に出ていた。リーナとエルを連れて。

 で、今向かっている場所は、シルルテ村にやって来たドリルバさんがいる王都ギルバデンスの冒険者ギルド。

 冒険者ギルドとかドリルバさんが出てきたからなんとなく分かると思うが、仮冒険者資格証を本物の冒険者資格証に変えてもらうためである。

 それと出来るかわからないが、リーナの冒険者ギルドも作れればと思っていたりする。


 「えーっと、ここかな?」


 エルを頭の上に乗せている俺は、冒険者ギルドだと思われる大きな建物の前に立っていた。

 まあ、入ったとしてここが冒険者ギルドではなかった場合は、外に出ればいいんだけどね。

 冒険者ギルドだと思われるドアに手をかけて、開ける。

 ドアはギギギ、という音を立てながら開いた。

 リーナを連れて中に入る。


 中に入って俺の視界に広がったのは、大勢の人たちで埋め尽くされている建物の中。

 そこにいる人たちを一言で表すのなら、冒険者一択だと思う。

 そういうことで、たぶんここは冒険者ギルドで合っている。


 少しキョロキョロと周りを見てみて、俺がいる場所からまっすぐ進んで行ったところにカウンターのような場所があることを確認した。

 俺は、リーナを連れてまっすぐ進んで行くことに。

 歩いている途中で、周りにいた人たちをリーナが少し怖がっていたので抱っこした。

 まあ、いかつい男性や厳つい男性がこっちを見ていたら怖がってしまうよな。俺でも怖がってしまうもん。


 しばらく歩いて、俺はカウンターの前に着いてしまった。

 カウンターは四つあるのだが、その内の三つには人がいた。そういうことで、空いている目の前に進んで行く。


 「はい、こんにちは。今日はどういったご用ですか?」


 カウンターを挟んで向かい側に座っていた女性は、俺が来るなりそう尋ねてきた。

 仮冒険者資格証は持っているのだが、これをどうすればいいのかわからないわけで、


 「冒険者登録したいんですけど。それとこの子の冒険者登録って可能ですかね?」


 女性に内容を伝えながら、持っていた仮冒険者資格証を渡す。

 ついでにと思って、カウンターよりも身長がないリーナを抱っこして、リーナの冒険者登録が出来るのを聞いてみた。


 「えーっと、分かりました。しばらくお待ちください」


 そう言うと、女性は反対側で何か作業を始めたのだった。

そこからすぐに、


「お待たせしました。こちらに名前の記入、こちらにその子の名前の記入をお願いします」

 「あ、はい。分かりました」


 作業が終わったのか女性がそう言いながら、紙を二枚とペンを一本渡してきた。

 それを受け取ると、早速名前を書いていく。


 ……。

 …………。

 ………………。


 あれ? 俺ってこの世界の文字って書けたっけ?

ペンを握ったのだが、俺はこの世界の文字がわからないのである。

しかし次の瞬間、


 『えいっ!』


シルテの声が聞こえてきたのだ。

どうしたんだろう? そう思ってつかの間、俺はいつの間にかこの世界の言語で名前を記入をしていたのである。

どうして、そう思ったのだが、


 『今度、ご褒美だからねー』


すぐにシルテがしてくれたことなのだということに気づいたのであった。

その後も、リーナの名前を書いたのだが、リーナ・○○○○にしないといけなかったので、そこの○○○○にはナツナギと入れておいた。

 いや、リーナは、リーナってしか言ってなかったからね。


 「はい。しっりと記入されていますね。では次に、こちらに数秒ほど手をかざしてください」


 名前を記入した紙を渡すと、女性の方に置いてあったであろう球体のガラス玉だがサッカーボールくらいの大きさのものを俺の目の前に置いた。

 いや、一瞬だったのが、こんなに重そうなものをこの女性が持つって凄いな。

 感心しながら、俺は手をかざさなければいけないところに手をかざした。


 数秒後。


 「はい、ありがとうございます」


 そう言われた俺は、かざしていた手をどかした。

 すると、女性はカードのようなものを渡してきた。


 「これがナツナギさんの冒険者資格証になります。仮冒険者資格証については、こちらで預かりさせていただきます。それでは、そちらの子もここに手をかざしてください」


 カードの冒険者資格証を受け取ると、カウンターの上に置いて、リーナを抱っこする。


 「リーナ、ここに手をかざして」

 「……分かった」


 他人の目の前だからしゃべらないと思っていたけど、まさかの二連続で口を開いてくれた。一日の内で、二人の知らない人と二回もだ。

 パパである俺からすると、とてもとても嬉しいことである。

 しばらくして、


 「はい。ちゃんと出来ましたよ」


 女性はそう言って、リーナに冒険者資格証を渡してくれた。

 あれ? 冒険者資格証って、試験を受けて合格しないともらえなかったんじゃなかったっけ……?

 そんな疑問を浮かべていると、その疑問に気づくかのようにして女性が教える。


 「えーっとですね。見た目からして成人していない人は、保護者同伴だと冒険者登録が出来て冒険者資格証を受け取ることが出来るんです」

 「へぇー、そうなんですね」

 「パパと同じの嬉しいぃ」


 それは良かった。

 リーナも俺と同じ冒険者資格証を受け取れて嬉しがっているし、俺もなんとなく嬉しい気持ちになるな。


 「それでは冒険者登録もして冒険者資格証もしっかりと渡しましたので、次は冒険者ギルド側から新人冒険者への説明をしたいと思います。こちらをどうぞ」


 そう言うと、カウンターの上に置いていたガラスの球体を戻すと、パンフレットのようなものを渡してきた。




 そこからは、もう、長い長い説明だった。

 そういうことで、女性が説明してくれた話を俺なりに簡単に短くまとめてみることにした。


 一、冒険者ギルドに置かれているクエストはクエスト掲示板から選んで、カウンターに持って来て下さい。


 ニ、クエストを受けてからの有効期限は一週間。一週間を過ぎてしまった場合、クエスト失敗ということになり違約金を払っていただきます。


 三、受けたクエストの成功報告は、クエストをカウンターで正式に受けた際に受け取るクエストの内容が書かれている紙と中身(クエストを成功させるもの)を持って来て下さい。


 四、パーティーを組むのは冒険者の自由ですが、クエストで得る成功報酬は喧嘩せずに話し合ってしっかりと納得するように分けてください。


 五、冒険者にはランクというものが存在していて、上から順にS、A、B、C、D、E、F、Gの八つのランクが存在している。新人冒険者は、Gランクから始めることが規則。


 六、ランクを上げるには、上げるために必要な数のクエストを受けて成功させなくてはいけない。(例:GランクからFランクにするには、クエストを十回成功させなくてはいけない。)


 だいたいはこんな感じだろうか。

 他にも色々と説明をしていたけど、俺にはあんまり関係してこなさそうな説明だったので聞いていなかった。

 いや、聞くことに集中できなかった。

 なんていうか、長々と説明されるもんだから頭が回らなくなってしまって、説明を聞いているのにシルテがずーっとどうでもいい話をしていた、たまにアステルさんの声も聞こえていた。


 以上、俺なりにまとめた六つである。


 その後は、自由にクエストを受けてどうぞと女性に言われたのだが、俺には仮冒険者資格証をちゃんとした冒険者資格証にする用事だけではなく、この冒険者ギルドにいるであろうドリルバさんにも用事があるのである。

 そういうわけで、


 「あのー、ウイゴーン・ドリルバさんに用事があるんですけどもー」


 シルルテ村でもらったドリルバさんの名刺のようなものを女性に渡した。


 「……え? ……あ……ドリルバさんの……知り合いでしたんですか……? すぐに伝えてきますね!!」


 すると、返ってきた言葉は少し予想外な不思議なものだった。

 その後すぐに、女性はカウンターから消えてったのである。


 あ、それと、あとで気が付いたのだが、カウンターで俺の相手や冒険者の相手をしていた女性たちのことを、受付嬢と呼ぶんじゃなかろうか??


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