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16 森の異変

色々遅くなりました。

 夢から目が覚めた。


 いつものように俺の隣で可愛い寝息を立てながら静かに眠っているリーナを見て、リーナのパパになれて良かったと思っている。

 まあ、パパになるのには年齢的な面で言えば早すぎたかもしれないが、これも良い経験だと思う。


 おはよう、そんな気持ちを伝えるために眠っているリーナの頭をポンポンと軽く触れる。


 「起きるか」


  そうと決まれば、すぐさま今まで寝ていた布団から這い出てくる。リーナが起きないように静かにである。


 「……むにゃむにゃ」


 うん、今日もリーナは気持ちよさそうに寝ているな。

 そんなリーナを見ながら、俺は朝からやっている運動をするために家から出ていく。

 その際しっかりと靴を履く。


 これからするのは、シルルテ村の中を三周か四周ほど走るということである。

 しばらく歩いて、村の入り口に着いた。


 「おはようございます」


 今日も村の入り口には、見張りをしている男性が立っていた。なので、俺は朝の挨拶をしたのだ。


 「おう、今日も走るのか。頑張れよぉー」


 男性は俺の挨拶に反応して、応援もしてくれる。

 ちなみに、このやりとりはここ最近は何度もしている。

 村の入り口付近に建っている、特別で不思議な時計を難しい顔で確認しながら、俺は現在の時刻を確認した。

 えーっと、六時半くらいかな。

 どうにか確認することができて、今の大体の時刻が分かることが出来た。


 あ、この時計の見方を説明したいんだけど、俺が言葉で説明するのは正直難しい。

 そういうわけで、この時計の説明はしない。

 まあ、時間なんて誰か一人が分かっておけば大丈夫だと思うんだけどね。


 「よし、走るか」


 走れる準備が整った俺は、シルルテ村の内周を走り始めたのだった。




 シルルテ村の内周を走り始めてしばらく時間が経ち、俺は家に戻って来ていた。

 走り始めてからしばらくの月日が経っているので、体力もそこそこ付いてきていると思うし、なんというか体の中にある何かが増えてきている気がしている。

 まあ、何が増えてきているかについては全くもってわからないので、今のところはスルーすることにしよう。というか、スルーした方が良いと思う。

 ……色々とめんどくさいから。


 「まだ寝てるかなー?」


 家の中に入った後すぐにリーナが起きているかの確認をした。


 「まだ寝てるね」


 寝てることが分かったので、家の中にある風呂場的なところへ移動をした。

 移動をした理由は、走ったことで出ている汗を流すのである。

 まあ、どんな方法で汗を流すのかと言うと、この前シルテに火魔法以外の全ての魔法を使えるようにしてもらった。


 なので、水魔法も当然使えれるようになったのである。

 ただ、使えるようになってからそんなに月日は経っていないので、【水魔法:Lv1】のままである。

 しかし水魔法に関して言うと、日々生活するに渡って結構な頻度で使っているから、レベル一つ上に上がると思うのだが……上がらないみたいだ。


 「ウォーター、っと」


 そう唱えると、ウォーターの魔法陣が現れてそこから水がジャバジャバと出てくる。

 このまま汗を流すために使ってしまうと冷た過ぎてヤバいので、火魔法で調節しつつウォーターの温度を上げる。

 今は右手でウォーターを発動させているので、左手を使う。


 「このくらいかな?」


 手でウォーターで出ている水を触りながら温度調節をした俺は、ちょうど良い温度になると同時に頭から浴びた。

 ちなみに、服をすでに脱いでいるので濡れる心配はない。


 「ふぅー。凄く気持ちいなぁーーー!!」


 お湯でもなく、ぬるま湯でもない、ちょうど良い温度というウォーターを頭から浴びた俺は、無意識に呟いた。

 まあ、気持ちいのだからこういうこともあるだろう。


 「しっかしー、異世界に来て一ヶ月も経ってないのに、良くこんな体付きになったよなー」


 現在服を脱いで裸になっているので、肌が見えるのだ。

 その結果、お腹の筋肉や腕の筋肉などを見れるのだけれど、異世界に来るまでとは違い筋肉が付いてしまって別人のような体付きになってしまっていたのだ。

 ただ、この筋肉が付いたと言ってもお腹周りが少し引き締まってうっすらと腹筋が見えているだけ。

 マッチョマンになったわけでもないので、特に気にしてはいない。

 ま、マッチョマンみたいな筋肉までは付けないようにこれからもマイペースに生きていくとしよう。


 そんな感じでだいたいからだを綺麗にし終えた俺は、汗の付いている服もウォーターを使って綺麗に洗っていく。ついでに、【水魔法:Lv1】で使えることの出来るクリーンも使っておく。

 これで、汗の付いている服はしっかりと綺麗にすることが出来る。

 綺麗にすることが出来ると、最後の仕上げとして【風魔法:Lv1】で使えるウィンドも使って、乾かしていく。


 汗を落として、服を洗って、服を乾かせた俺は、最後に俺の自身もウィンドを使っても残っている水を乾かしていった。


 「これでよし」


 完璧に準備を整えることの出来た俺は、綺麗になった服を着なおして――リーナが目を覚ます前にリーナのところへ戻って行ったのだった。


 ◇


 時刻はすでに昼頃。

 ただ、今日はいつもと少しだけ違った。

 それはというと、


 「はぁはぁはぁ……あ、ありがとう。本当に……助かったよ」

 「……すまない……すまない」

 「良かった……。本当に、良かった……!」


 もの凄い怪我を負っている男性三人がシルルテ村にやって来ていたからである。

 頭から血を流していたり、至る箇所から血を流していたり、骨が折れて曲がらない場所に向かって曲がってしまっていたり――そんな感じだった。

 正直、あまり目には入れたくはない光景。


 「あの、どうかしたんですか?」


 俺は近くにいた男性に、なにがあったのかを訪ねてみた。


 「ん? ナギルくんか。俺も今来たばかりなんだけどな、この人たちは王都オルウェスっていうところの冒険者ギルドで冒険者活動をしてるらしいんだよ。それでシルルの森の遠いが隣に位置する『森の怪物』の住処にしている森に、名誉欲しさに行ったらしいんだよな。けど、『森の怪物』にコテンパンにされてしまって、この有様らしい」


 話を聞いてみたところ、そういうことだったみたいだ。

 『森の怪物』についての話はこの前聞かされていたけど、どういった感じの魔物なんだろうって思ってはいた。

 もしかすると、もの凄く強くて恐ろしい魔物、だったりとか。

 けれど、男性冒険者たちの有様を見てみる限り、本当にヤバイ存在なのだろうな。『森の怪物』は。

 というか、王都オルウェスかぁー……ドリルバさんが働いている冒険者ギルドがあるところだ。


 「とりあえず、手当からしようとするか。その後に、詳しい話を聞くとしよう。えーっと――いたいた、ナギルくん。ナギルくんって確か光魔法を使えたよね?」


 男性冒険者たちから今の状態で出来る限りの話を聞いていたミドルさんが、俺にそんなことを言ってきた。


 「あ、はい。一応使えますよ」


 まあ、Lv1だからミドルさんが思っているくらいの活躍が出来るかどうかは、俺にはわからない。

 けれど、俺に出来るのなら、その出来る限りのことだけはしようと思うかな。

 ま、これだけお世話になっているのに恩を借りっぱなしというわけにもいかない。


 「それじゃあ、こっちに来てくれ! 今すぐにでも光魔法のヒールで回復をして得やらないといけないんだ!」


 そんな声を聞いて、俺はミドルさんと男性冒険者たちのいる場所にすぐに向かったのであった。


 着くと、俺はすぐにヒールを唱えた。


 すると、唱えた次の瞬間――頭から血を流している男性冒険者の傷を少し治すことが出来た。

使えられるかどうかわからなかった光魔法のヒールだけれど、案の定使うことが出来たみたいだ。


 「良い感じだよ、ナギルくん。けど、まだまだヒールをしてもらっていいかな?」


 だけど、これだけじゃまだまだだったみたいだ。

 まあ、見た感じで少し治せれたくらいで安心していてはいけないということは分かる。

 それに、まだ使えれるようになっても全く使ってなかったから【光魔法:Lv1】ままだしね。

 そういうわけで、俺は男性冒険者たちのもの凄い怪我をヒールを使って治していくのであった。




 魔力がある限り分のヒールを百五十回ほど使い続けること、十五分ほどの時間が経った。といっても、俺の持っている魔力は全くもってなくなることはなかった。

 気のせいかもしれないけど。

 それとだが、ヒールを百回ほど使っていた時に【光魔法:Lv1】は【光魔法:Lv2】へとレベルアップを果たした。

 そのおかげで、ヒールしか使えれなかった俺だったが、途中からはハイ・ヒールを使っていた。効率良く治すためと痛みに苦しんでいる男性冒険者を助けるために。


 「それで、『森の怪物』の様子はどうですか?」


 俺の光魔法のヒールとハイ・ヒールのおかげで怪我を治すことの出来た男性冒険者たちは、ステフォさんの家にて話をしていた。


 「えっと、逃げてくる時はまだ洞窟内にいたと思うけど……今、どうなっているのかはわからない……」


 ステフォさんの問いに対して男性冒険者たちの代表のような、髭を生やしている男性冒険者が口を開いて答えてきた。


 「うーん、そうですか」


 とりあえずのことを聞くことの出来たステフォさんは、そう言った。

 その後すぐに、近くに座っていた、ミドルさん、オーンさん、フォンさんの顔を見ていって、


 「ミドルたち、村の人たちの中で動けられる者たちを十人ほど集めて、『森の怪物』のいる森の近くまで行って様子を見てくれ。村の安全に関しては、村長の私がどうにかしておこう」


 ミドルさんたちにそう指示を出したのだった。


 「「「分かった、ステフォさん」」」


 指示を受けたミドルさんたちはすぐに行動に入っていく。


 「ナギルさん。ナギルさんにもミドルたちに付いて行ってもらってもよろしいでしょうか? リーナの様子は私が責任を持って見ますので……」


 ミドルさんが言ったと思った直後、ステフォさんが俺に対してそう口にしてきたのである。


 「俺も、ですか……?」


 何故俺も行かないといけないのだろう、そんな疑問思いながらきょとんとした反応をしてしまう。


 「あの、俺からも頼みます。どうか、どうか、『森の怪物』を静めてください……!!」

 「「お願いします……!!」


 なのだが、ステフォさんと話をしていた男性冒険者たちが俺に向かって言ってきたのだ。

 ただ、どこか責任を感じているということが何故か伝わってきた。

 正直言って、今回の騒動はこの男性冒険者たちの責任ではあると思っているのだけれど、なにもできなかったからこんなことになってしまっているのだろうな。


 「……はい。分かりました」


 それに、シルルテ村の人たちには恩があるし。

 そういうことで、俺はステフォさんと男性冒険者たちのお願いを聞くことにしたのだった。

 まあ、リーナのところにはちゃんと帰ってくる。リーナを泣かせるわけにはいかない……!


 心の中でそう思った俺は――ミドルさんたちに同行して『森の怪物』のいる森に向かうことにしたのだった。


最終話まであと五話(予定)です。

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