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15 女神様と娘

 オムライスを作って大好評になったあの日から知らない間に二日が経とうとしていた。

 俺はというと、朝からシルルの森に運動をしに行ってたら合計十匹のゴブリンと遭遇してしまって……まあ、あとは言わなくても分かるよね。


 「はあー、眠くなってきたなー」


 で、すぐ隣でくっ付いて気持ちよさそうに寝ているリーナを見ていたら俺も眠たくなってしまっていた。

 あ、やばい。もう……寝るかも。

 正直、今まで寝なずにいたなと自分を褒めてあげたいくらい、今眠りそうである。

 そん感じで段々と意識が無くなってしまってきていたのだった。

 ただこんなのも良いのである。だって俺は、マイペースに生きるから……。


 ◇


 なんでだろう、何故か暖かい気がする。

 あぁぁ、そういうことか、寝てるから暖かい気がしているのか。


 寝ている自分が浮かび上がらせてしまった疑問に対してしっかりとした答えを導き出すことの出来たことにより、俺はしっかりと納得することが出来た。


 「初めまして、リーナちゃん」


 しかし納得をすることが出来るのと同時に、俺の耳に聞き覚えのある声と名前が聞こえてしまった。

 その瞬間、俺は閉じていた目を思い切り開いた。


 「――っな!」


 すると開いた目の中に入ってきたのは、シルテとリーナの姿だった。


 「な、なんでリーナが今日は一緒にいるんだ……?」

 「あ、起きたんですね、ロリコン寝過ごしナギル」


 眠っていたので起き上がってから声をかけた俺に対してシルテはそう言ってきた。

 シルテの近くにいるリーナは、きょとんと首をかしげながら俺とシルテを交互に見ている。


 「そのヤバそうなあだ名は誰のものなのさ。もしかしなくても、俺の?」


 シルテとリーナのいる方に歩いて行きながら、その聞くからにヤバそうなあだ名が誰のかを俺はシルテに問う。


 「そうですよ。びっくりするくらいとってもお似合いですよ?」


 そんな俺の問いにシルテはニッコリした笑顔、いや、これほどまでのニッコリした笑顔があるのかと疑ってしまうくらいのものを俺に向けてきた。

 さすがの俺も驚いてしまった、というか背筋が驚いてしまったからか凍ってしまったようだ。

 ……凍ってしまうほど驚いてしまったのなら、ヤバいのでは?

 シルテの笑顔に対してそんなことが浮かんでしまったが、さすがのシルテでもそこまでヤバくないと思っているので浮かんだことをすぐさま頭からかき消した。


 「まあ、いいよ。それで、今日はなんでリーナも一緒なの?」


 シルテの近くにいたリーナだったが、すぐに俺の所へ戻って来てくれる。


 「……パパ……大好き……」

 「あぁ、俺もリーナのことは大好きだよ」


 リーナの愛情表現の言葉に俺も愛情表現の言葉で返事をする。


 「ほら、やっぱりロリコン寝過ごしナギルじゃないですか」


 しかしそんな俺を見ていたシルテが口をとがらせてそう言ってきたのだ。

 んー、今日のシルテはどうしたのだろうか?


 「もしかしてシルテは、リーナが可愛すぎるから嫉妬してるの?」


 さすがにありえないことだとは思ったのだが、頭に一瞬浮かんでしまったのもあるし今日のシルテが少しおかしかったので、そう口にした。


 「――なっ! 私が嫉妬? 女神である私が嫉妬するわけないじゃない!」


 するとすぐにシルテは否定をしてきたのだ。


 「やっぱ、そうだよな。疑ってすまなかった」

 「……そ、それなら別にいいんだけど」


 おかしいとは思っていたが、俺の単なる勘違いだったみたいだった。

 まあ、そういうことで話を戻すとしよう。


 「それで、リーナがどうしてここにいるのさ?」


 シルテと一切の関わりを持っていないはずのリーナが、夢の中でシルテと会えるはずがないのである。推測だけど。


 「んー、一つだけ分かっていることと言えば、異世界人であるリーナちゃんが女神である私と関係を持つナギルと家族という立場になってしまったというのが原因かもしれない。普通だったら家族になってもそういう事は起こるはずもないし、そもそもそういったことは今まで一度も起こったことがないから、正直どうしてこんなことになっているのか私もわらない」


 そう言ってシルテは、リーナがここにいる理由を推測の形で語ってくれた。


 「そうなのか」


 まあ、シルテに分からないことなのであれば俺が考えたところでわからない、ということがオチだ。

 それなら保留にしておくかわからないままにしておくのがいいだろう。


 そんな話をしていると、リーナが俺の肩をポポンと叩いて尋ねてくる。


 「……パパ、この人誰?」

 「ん? この人はーー」

 「私は、パパの姉のシルテです。これからよろしくね、リーナちゃん」


 特に考えることなく言おうとしたところで、途中でシルテが入ってきて俺の代わりに答えた。

 というか、シルテ今、俺の姉とかリーナに説明してたよね。

 ……姉……姉……まあ、リーナが納得してるのなら俺の姉でも大丈夫かなぁ。


 「しっかりしてよね、ナギル!」


 そんなことを思っていると、シルテが突然そんなことを言ってきた。

 それも身を寄せてきながら、密着間が零センチで、シルテという存在が俺という異性の存在にしない方がいいのではと思ってしまう行動をしてきたのだ。

 さすがのこの行動には驚いてしまい、


 「……おっ、おい! な、なにしてるんだよっ!」


 色々と荒ぶってしまったようだった。


 「な、なに顔を赤くしちゃってるのさ? もしかしてナギルは驚いているのかい??」


 そんな俺に対してシルテはそう尋ねてくる。


 「そりゃあ――」


 しかし、シルテの尋ねに対して俺が答えようとすると、


 「……シルテさん……パパにくっ付かないでください!」


 俺の右腕に抱きついていたリーナが、今握っている力よりも強くしながら握ってきながらシルテの体が俺に密着しないよう対抗するかのようにしてそう言ったのである。

 これにも俺は驚いてしまった。

 いや、だって、リーナがシルテに対抗してくれているからね。なんというか、俺のことをちゃんとパパって思ってるんだってしっかりと分かってしまうから。


 「ならリーナちゃん、ナギルの左側なら一緒にいてもいいよね?」


 しかしシルテもリーナの対抗に負けないように言ってのである。

 というかシルテ、そんなにリーナに負けたくないのかな。

 そんなことを思ってしまった直後、シルテが俺の耳に口を近づけてきたのだ。


 「そんなわけないでしょっ! なんで私がこんな小さい子とナギルを取り合いしないといけないのよっ!!」


 そしてリーナには聞こえないように小声で言ってきた。

 やっぱり、そうですよねー。女神であるシルテがこんな俺を取り合いするなんてことないですよねー。

 まあ、そんなことありえないというだろうなということくらいは、ちゃんと理解してたよ。


 ん? 少しくらいは取り合いしてもらえるかって期待はしてたのかって?

 んー、まあー、誰だってこんなにも可愛いシルテから密着間零センチされてしまったら、少しくらいは期待してしまうと思うよ。現に俺も、ほんの少しだけ思ってしまった犯人ですから。

 でも一つだけ、俺はそんなものに期待はしてないから。だって、今日という日まで異性から告白されたことのない人間という、恋愛には不向きの存在なので。


 そんなことを独りで思っていると、先ほどのシルテの発言に対してリーナが答えるために口を開いた。


 「……左側なら……大丈夫……」

 「そうなのね。ありがとう、リーナちゃん」


 リーナからの許可が下りると、シルテは早速俺の左腕に抱きついて来てしまった。 

 ……というか、痛いんだけど……。


 「あのー、凄く強く握ってません……?」


 さすがに血が止まるかもしれない(そんなはずはない)と思ってしまった俺は、左腕に抱きついているシルテにすぐに言った。痛いという意味を込めて。


 「そうだよー。わざとなんだよー」


 すると、俺が痛いということを分かっていてシルテはニッコリとした笑顔でそう言ってきたのである。なんという、サイコパス。

 ただ、その後すぐに力を弱めてくれたので血は止まりかける直前で左腕は楽になることが叶った。

 まあ、痛いというか、痺れているというのには変わりはないのだけれど。


 そこから時間は経って、今は何故リーナがこの空間にいるのかということについて改めて話し合っていた。

 リーナは俺の膝の上で静かに座っている。が、一応話し合いながら俺はしっかりと相手をしている。


 「けど、家族になったからってここにこれるのは無理だと思うしな」

 「そうなんだよね。仮に、リーナちゃんがナギルの作った料理を食べているのなら、ここに来れたっていう可能性も一応はあるんだけどね」

 「料理を食べているならねーー――ん? 今、料理を食べているならここにこれる可能性としてはあり得れるって言った?」

 「うん、確かに私はそう言ったけど……それがどうかしたの?」


 あぁー、まじか。まじなのか。


 「もしかして、リーナちゃんってナギルが作った料理とか食べちゃったりしたの?」


 一瞬思ってしまったことすらも分ってしまうシルテが、俺にそう聞いてきたということは、バレているということになる。


 「うん、確かに二日前くらいに俺が作った料理を食べてるよ」


 けど、これはシルルテ村全員が俺の作った料理を食べている。だが、シルルテ村全員んがここにいないとするならば、どうしてリーナだけが来れたんだ? そういうことになってしまう。


 「たぶんそれは、リーナちゃんがナギルとずっと一緒にいるからだと思うよ」


 さすがに考えたり思ったりしたことを何度も読まれたりしていると、驚きはしない。


 「そういうことか。なら、リーナがここにいるってことは、俺の作った料理を食べたからと家族になっているからってことになっちゃうんだよな」

 「そうだと思う。けどまあ、別にナギルの娘っていう立場だからここに来ても特に問題はないから、気にしないでいいよ」


 シルテがそう言うのなら、


 「気にしないでおくよ」


 そうしよう。


 リーナがここにこれた理由をなんとなく絞ることの出来るのと同時に、俺の視界がぼやけ始めてしまった。

 ということは、夢から覚める時間がやって来たという意味なのである。

 何故かわからないけど、今日は今までよりも早かった気がしてならない。

 まあ、シルテも色々することあるのだろうし、これくらいの時間夢の中で会うくらいがちょうどいいのかもしれないな。


 「それじゃあ、ナギルとリーナちゃん。また今度会う時に会おうね」


 そんなことを思っていると、最後にシルテのその言葉を聞くのと同時に俺の意識は無くなってしまったのだった。

 それとリーナの意識もなくなってしまったと思う。てか、無くなってないと置いてけぼりになってしまうから、無くなっているはずである。


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