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0歳 ①

どこにでもいる社会人6年目の俺は、約二ヶ月ぶりの休日を寝て過ごす愚行をして目を覚まそうとした時異変に気がついた。


職場が少々ブラックでクタクタになって一人暮らしの部屋に帰り、這うようにしてシャワーを浴び、布団にダイブしてそこで眠りについたはずだ。


久しぶりの休みでやりたい事は沢山あった洗濯、掃除、買い物、友人と遊びに出て飲みにも行きたいと色々だ。残念ながら生まれてこのかた彼女はいなかったのでデートなんてした事すらないので選択肢には初めからない。


体重が入社当初に比べ20キロほど落ちたが肥満体質だった俺にしたら丁度良いダイエットだと思えば気にならなかった。スーツは買い直さなければいけなかったので安月給の俺には痛い出費だ。


そして休日、休みを有効活用しようと思っていたのだが目を覚ますとまわりが真っ暗なのだ。もしかして一日中寝てしまったかと思い携帯で日時と時間を確認しようと手探りで探すがどこにも無い。

とゆうかあまり手が動かない。変な寝方をして腕が痺れているのかもと思ったが痺れはないのでそうゆう訳でもないようだ。


年々後退している髪が悩みどころの頭をかこうとしたが手が届かない。流石におかしいと思い寝ぼけた頭が徐々に覚めていく。


身体を起こそうとしたが全く動かない。『まさか金縛りか?』とも思ったが手足は少し動くのでその考えをすぐに否定する(ガクブル)。


暗がりであまり周りが見えないので困っていたが、しばらくすると太陽が昇ってきて暗かった周りが明るくなってきた。


そこで初めて自分の手を見る。


「おぎゃぁぁぁぁぁ〜〜〜〜(何じゃこりゃぁぁぁぁぁ〜〜〜〜)」


声を出してもわかるように赤ん坊の手であった。


俺の手は変哲も無い一般的な成人男性の手だった筈だ。

だが今は木の葉のように可愛らしいツルッとした手が目の前にあった。


まず落ち着こうと周りを再度確認するとどうも自分の部屋でもなく木の穴の中みたいに木の香りと森の中にいるかのように緑の匂いと土の匂いが鼻につく。


寝ぼけていたとしても気付けよ俺。今までの日常が今日をもって終了した日が始まった。




『コレはあれだな学生の頃に読んだラノベとかによくある転生ってやつだろう。だけど神様に会ってなければ死んでもいないはずなのだが。ただ寝ただけで死ぬとかありえないだろ………………………………ありえないよな……』




さて、状況確認が済んでもどうすることも出来ない、なんせ赤ん坊だ、自らの意思で動けもしないし何故こんな場所にいるのかもわからない。


既に詰んでいる。


兎に角この場所から移動しようにも寝返りすら出来ないのでこのまま誰かに拾われるのを待つしか無いようだ。


〜〜〜


目が覚めて三、四時間経っただろうかまだ目が覚めた場所から動けていない。誰も通らない、人の気配が無いのだ。

鳥の声と動物?の鳴き声は聞こえるが人の歩く音、喋り声が全くしない。

お腹は空くし、どうも漏らしたようでお股あたりに違和感がある。赤ん坊なら仕方ないが精神は中年なりかけの成人男性だ精神的ダメージが半端ない。

しばらくすると睡魔に襲われウトウトしているとガサガサっと近くで音がした。


意識を音のした方に向けるがどうも人では無いらしい、草を分けて近づいてくるのに足音がほとんどしないのだ人と獣の区別くらいはわかる。


そして俺のいる木に向かって「garrrrr……」と唸り始める。


『はい、終了、しゅ〜りょ〜。お漏らしした小汚いまま獣にバリバリ食われて俺の2度目の人生終了〜』


身動きできないのだ騒いだところでどうしようもない。せめて痛く無いようにして食べてくれと思うが無理な相談だろう。


目を瞑りその瞬間を待ったが襲ってくる気配がない。『ん?』と思うが目を開けるのは怖くてできない。


「ペロッペロッ」


俺はビックとしたがどうも味見をしている分けでは無いようだ。優しくなめられているらしい。俺は恐る恐る目を開けると目の前に犬にしては細長い顔、キリリとした目、毛並みは黒に近い茶でブンブンと音が聞こえるくらいに尻尾を振っている。


「どうしたんじゃ〈バルク〉そこになんかあるんか?」


ガサガサガサ、ドスドスドスと近づく気配がした。


犬?の陰から顔をのぞかせこっちを見るデカイ顔、赤ん坊の俺でも身長が低いのが分かるくらいの樽型体型、腕は太く白く長い髪と髭、一目でドワーフだとわかる人物は手に大きなハンマーを持ち旅装束の様に荷物を背負っている。


その人物の丸い目と俺と目が合う。


「子供、しかも乳飲み子じゃと?何でまたこんなとこのおるんじゃ?」


その人物は俺が居たことに驚き髭を撫でる。


「どうしたぁ〜、兄じゃぁ。なんかあったんかぁ〜?」


「………」


「おぉ〈ダル〉〈ドル〉見てみぃ乳飲み子がおるぞ」


俺の顔を見ている人物の後からやってきた2人にいまだにペロペロと舐められている俺を抱き上げ見せた。


「あれぇま、なしてこげんとこに赤ん坊がおるんじゃぁ?」


「(じぃ〜)…………」


1人は驚きながら俺を覗き込み、もう1人は無言で俺を見ている。2人とも俺を抱き上げている人物と同じで持っている武器は違うがドワーフでる。


「さぁの?それは解らん。じゃがこんな所において置かれとったんじゃ何か訳ありかものぉ。兎に角このままここにおるのは危ないもうすぐあの街じゃし一緒に連れて行くかの。そこで衛兵なりギルドに相談した方がえぇじゃろ、お前達もそれでえぇか?」


「そんほうが良かろうぉ。ドルもそれでえぇかの?」


「……(コクッ)」


「よし決まりじゃぁ、そんじゃぁさっさと移動するかのぉ兄じゃ。ほれバルク行くぞぉ」


そう言ってダルとバルクと言う犬?が横に付いて先に歩く。


「………〈ガル〉兄ぃ」


先に行ったダルとバルクに付いて行こうとした俺を抱き上げた人物。ガルに、小さな声で話しかけたドル。


「ん?…あぁ、ドルお前さん抱っこしたいのか?」


「……(コクッ)」


ガルはダルの視線と表情で何が言いたいのか検討がついた様頷きを確認すると俺を手渡す。


「………」


ドルは俺を抱き上げても無言だが少し笑った様に感じた。


「おぉ〜ぃ、何をしとるんじゃぁ2人とも?…お!なんじゃぁドル、赤ん坊を抱いて随分嬉しそうじゃのぉ。後でワシにも抱かせてくれんかぁ?」


「………………(コクッ)」


少し間が空いたがドルは頷く。


「なんじゃぁ嫌そうじゃのぉ、まぁえぇか。さっさと森を抜けるとするかのぉ」


ダルはたいして気にすることなく再び先頭を歩き始め、ガルとドルもそれに続く。

こうして俺は無事に最初にいた場所から移動することができた。

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