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脳筋聖女、転生死神を殴る。  作者: ドスパラリンチョ
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脳筋聖女、死の配達人に出会う

「お、おい。サリエットちゃん、これって結構やべえんじゃねえの?」

 私に緑がそう不安そうに聞いてくる。

 そんなこと言われても私としても困る。なぜなら、私はずっとロスがアンデッド化したのだと思っていたのだが、それが違ったからだ。こいつはアンデッド化しているのではなく、魔化していたのだ。

 魔化とは、アンデッド化に似ている現象である。似ているといっても根本的には違っており、アンデッド化は死んだ生物が怨念で復活したり、死んだ生物に怨霊が取り憑いたりすることであるが、魔化とは生物に悪魔が取り憑いた状態のことを言う。他にも、生きている生物にも起きるという違いや、思考ができるできないの違いもある。

 ではなぜ今回はアンデッド化と間違えたのかというと、魔化とはアンデッド化よりも珍しい現象だからだ。魔化を起こせる悪魔というのは、高位の悪魔に限られ、そして高位の悪魔は確認されている限りでは3体しかいないからだ。この広い世界で3体ということはまず会うことはないだろう。そういうことからアンデッド化したと判断したわけだが、まさかこんなに珍しい現象に鉢合わせるのは運がいいんだか悪いんだか。

 だが、今わかっているのは相手は本気の中のマジのガチで掛からなければ勝てない相手だということだ。まあ本気の中のマジのガチで掛からなければいけないと言っても、結局することはゴリ押しだけなのだが。

(だけど、これで私が本気で掛かっても蛍光色たちを守り切れないのは確かだな。ああ、もう少しこいつらが使えたらいいんだけど。)

 私が心の中でそう嘆いていると、私のその心の嘆きを感じ取ったのかロスだったものがニヤニヤしながら提案してきた。

「オ嬢ちゃんが一人で俺のところに来るならば、ソこの3人は見逃してやってもいいゾ?」

 私は思わずロスだったものに感謝した。この提案はまさに救いだった。人々を守るのが定石の聖職者が同じパーティの者を死なせたとなれば評価がダダ下がりになるはず。そんなことにならないようにしてくれるとは悪魔様々だ。

「だそうです。ということで、これからは私一人で戦うので、どうぞ、お帰りください。」

 私がそう蛍光色たちに促すと、一瞬呆けた顔をしてから全員が一斉に首を横に振った。そして、蛍光色パーティのリーダーらしき位置にあたる緑が、決意を秘めた目でゆっくりと語りだした。

「俺たちは、もともと孤児でな。それも、モンスターの群れに襲撃された村のな。俺たち3人はその村で運よく生き残った唯一の生き残りだったんだ。それで、俺たちはモンスターに復讐をするために冒険者をやることにした。この蛍光色の肌の色だって普段は英雄となった時に覚えてもらうためと偽っているが、本当は、俺たちの村を襲った奴らの旗の色を忘れないために三人でそれぞれ色を塗ったんだ。」

 そこまで緑が語ってから、照れくさそうにぽりぽりと頭の後ろを掻いた。

「あー、俺は何を言いてえんだ。いつも陽気系キャラだからこういう湿気ったことを言うことに慣れてねえんだろうな。まあ、なんだ。俺たちはこの2日という短い時間の中でも惚れた女を見捨てて帰れねえんだわ。将来の英雄の卵としても、一人の男としてもな。」

 緑のその言葉に、赤と黄色も同じく決意を込めた目で頷いた。それをしばらく眺めていたロスだったものが呟いた。

「コれで蛍光色じゃなけりゃカッコ良かったんだがなア。」

(それは言わないでやれよお!)

 蛍光色たちもロスだったものの呟きに顔を赤くした。

 それにしても、蛍光色たちは馬鹿みたいなやつらだと思っていたのだが、こうも良い所があったとは。これはこいつらの認識を改めなければならない。

 だが、蛍光色たちを帰らせるという点では私はやっぱり譲れない。先ほど男気を出して恥をかいたばかりで悪いが、ここは厳しいことを言って無理にでも帰らせなければいけない。

「私としてはそんなカッコつけをされるのではなく、おとなしく帰っていただきたいのですがね。あなたたちに死なれては、神殿での評価が下がりますし、私は自分が強いということを自負しているつもりですが、さすがにあなたたちを守りながら戦うという器用な真似はできません。」

「で、でも...。」

 私がそこまで言うと、赤が口を挟んできた。こいつらは私の話を聞いていなかったのだろうか。神殿での評価が下がるということを。

「オ前ら、実は強がっちゃいねえカ?」

 なおも続けようとする赤を、ロスだったものが赤の言葉に被せるような形で止めた。

「オ前らも、心の中ではこのお嬢ちゃんの足手まといになるということに気が付いているんだろ? ソれでも心の隅に残った正義ってやつがお前らを帰らせようとさせないんだロ?」

 ロスだったものがそこまで言ってから、蛍光色たちに向き直った。それは、駄々をこねる子供を諭す親のようでもあった。

「オれとしてはどっちでもいいが、このお嬢ちゃんとしてはお前らに帰ってほしいようだな。マあ、それはしょうがないことだとも思うがな。サっきは『神殿での評価が下がる』と厳しいことを言っていたが、本心ではお前らを死なせたくないと思っているようだ。コのことは本当だぞ? ナにせ俺は人の心を読むことができるからナ。」

 やがて、ロスだったものポンと赤の頭の上に手をのっけた。

「マあ、何が言いたかったかというト...。」

 そこまで言うと、ロスだったものの優し気な表情が一変した。

「オ前ら早く帰んねえとこの場でこいつの頭を捥いで町のほうへ投げ飛ばすゾ。」

 いきなり恐ろしい顔になったロスだったものが半ば脅しのような口調でそんなことを言い出した。

 さすがにそれには蛍光色たちも恐れをなしたようで、飛び上がって逃げだした。

 やがて、途中で緑が立ち止まり、振り返って

「必ず助けを呼びますからな!」

と叫んでから逃げていった。

 蛍光色たちが逃げていった方向をしばらく眺めていたロスだったものが、ニヤッと笑って私に話しかけてきた。

「アいつら、蛍光色じゃなかったらお前も惚れたんじゃねえカ?」

 私はロスだったものに微笑み返してから先ほどからずっと言いたかったことを言った。

「いいから股間隠せ。」



 ポチャーンと水滴が水たまりの上落ちる音がした。

 私は今、ロスだったものに案内されて薄暗い洞窟の中を歩いている。

 何があったかというと、「ドうせ戦うんならこんな所よりもっと適したところがあるゼ」と言ったロスだったものに案内されてロスだったものの本体が暮らしている洞窟に行くことになったのだ。

「その...。さっきはありがとね。」

 私はロスだったものに後ろから感謝を述べた。ロスだったものがあそこであの脅しをやってくれなければ、きっと蛍光色たちは今は私の後ろをついてきていたことだろう。そうなれば、きっとあいつらは死んでいたはずだ。人間、短時間でも一緒にいたなら情はそれなりに移るものだ。それも、一緒に冒険したとなれば、なおさらだ。だからあんな奴らでも死なれたら悲しくなる。

 私のそんな言葉に、ロスだったものはチラッと後ろを見てから語りだした。

「オれはもともと人間という生物が好きでな。ナかまの悪魔たちにはおかしいおかしい言われるがな。マあ、俺は今こうやって人間を統べているわけだが、もちろん俺の支配下にはいろうとすることに抵抗する奴は皆殺しにしたさ。ダが、俺は本当は人間はあまり殺したくないんだよな。ダから、あいつらを見逃した。ケっきょくは俺のわがままのようなものに付き合ってもらったわけだ。ダから礼には及ばないサ。」

 そう言って、ロスだったものはニヤッと笑って見せた。

(こいつは、そんなに悪い奴じゃないのかもしれないな。立場上人間と戦わなければいけないけれど、本当は平和を望んでいるとか、そういう系かもな。いや、もしかしたらこれが全部演技で心の中は正真正銘のワルかもしれないし...。ううむ、心っちゅーのは難しいな。)

 私がそう結論なき議論を心の中で続けていると、やがて、ロスだったものがえらく綺麗に装飾された大きな扉の前で立ち止まって短く「ツいたゾ」と言った。そして、ロスの体が糸が切れたように倒れた。

 私が慌ててロスの体を確認すると、死んでいた。

 多分死んでからずっと魔化されていたのだろう。私はロスの死体に祈りをささげ、浄化の魔法を唱えた。

「おうい、まだ入ってこないのかあ! 俺はせっかちなほうなんだ、早くしてくれえ!」

 私がロスの死体が浄化されるのを眺めていると、扉の中からそんな声が聞こえた。

 それにしても、大きな扉だ。こんな大きな扉は私の人生では一度も見たことがない。それに、扉に施されている彫刻も見事なものだ。上のほうにある鷹の彫刻なんかもういまにも動き出しそうだ。

「まだか!」

 今度は少し殺気のこもった声が聞こえた。

 私が慌てて重い扉をうんうん唸りながら開けて入った。すると、その中の部屋では独特な光景が広がっていた。

 床には、これまた見事な絨毯が敷かれていて、それでいて天井には人のものだったり亜人のものだったりと様々な種類の生物のの髑髏が吊るされていた。

 壁には獣の首が飾れていて、その上には何に使うんだか穴が開いている。

「どうだ、見事なもんだろ?」

 私が部屋の中の光景に目を奪われていると、部屋の奥のほうから自慢げな声が聞こえてきた。

 その声は、なかなかに特徴的な声をしていた。ガラガラ声で邪悪さを感じる声でもあるが、どこか父親を思わせるような優しげな声でもあった。

 やがて、壁に掛かっていた松明に一気に灯が灯った。

 暗さであまり見えなかったが、部屋の奥のほうには禍々しくも美しい玉座が置かれていて、そこには人型ではあるが何とも形容しがたい生物が座っていた。

(悪魔...!)

 私はその生物を見た瞬間、その言葉が一番初めに頭に浮かんだ。今まで何度も悪魔を見たことがあるが、それらの悪魔は言われてから「ああ、悪魔か」となる外見をしていたが、そいつはパッと見ただけでわかる悪魔という外見をしていた。

「あなた、何者...?」

 その悪魔を前にして私は思わず聞いた。その問いに悪魔はニヤリと笑うと面白そうに答えた。

「俺に名前なんてないさ。まあ、ディアブロとでも名乗っておくか。それより、人に名前を聞いたということはそちらも名乗るのが礼儀というものだろ?」

 私はその言葉にハッとした。私としたことが、そんな簡単な礼儀を忘れていたなんて。

「まさか、俺の外見に目を奪われていたのか? それなら嬉しいなあ。」

「まあ、そんな感じね。そんなにザ・悪魔みたいな見た目してたやつは初めてだからね。私は、サリエット。戦神を信仰するしがない聖職者よ。」

 私がそう言うと、何が気に入ったのかは分からないがディアブロと名乗った悪魔は満足そうに首を縦に振った。

「じゃあ、こんなところでダラダラしゃべってるのも何だしそろそろ始めない? 私としては早く帰りたいんだけど。」

「ほお、これは随分と自信ありげなことだ。だが、それでいい。それでいいのだ。」

 ディアブロは愛おしいものを見るような目で私を眺め、そして意味不明のことをつぶやいた。

「さっきから気になるんだけど、あんた本当になんなの? もしかしてやる気ないの?」

 私のそんな言葉にディアブロは大げさな身振りで「まさか」とやると、ゆっくりと愛でるようなしゃべり方でしゃべりだした。

「そんなことはないさ。ただ、俺は美しいものを見ることが好きでね。」

 そう話しながらディアブロはゆっくりと立ち上がった。

「そして、生物の中でも美しい人間が好きだ。それもサリエット、お前のような美しい人間がな。」

 やがて、ディアブロの笑顔がどんどん歪んできた。そして、最高に恐ろしい笑顔になると、しかし声色は変えずに続けた。

「サリエット、ここ100年ちょい見なかった上玉よ。俺は、お前を争ってでも手に入れたくなってきた。」

 そして、指をパチンと鳴らした。すると、先ほどまで気になっていた壁の上のほうにある穴がごそごそと騒がしくなってきた。

「たとえ、どんな手を使ってでもな。」

 やがて、地面にダダっと何かが降り立つ音がした。私が周りを見渡すと、そこにはいやらしい笑みを浮かべたこれまたザ・賊の者という格好をした人間がそこらじゅうに立っていた。

「ッ! 騙したな!」

「いいや騙していない。もともと俺は一人で戦うとは言っていないだろう? まあ、投降するならば傷はできるだけつけないようにするがな。」

 そう言って、ディアブロが高らかに笑い声をあげた。

 私はギリっと歯を軋ませると、ディアブロを睨みつけながら答えた。

「だ、誰がそんなことするかっての。そんなことするなら戦って死んだほうがマシね。」

「そうか、それは残念だ。」

 私の言葉を聞いたディアブロは、残念そうに、静かに、そして低く言い放った。

「それならばお前ら。やれ。」



「ハァッ、ハァ。」

 私は荒く息をあげる。

(まずいな...。これじゃあバレるのも時間の問題だなあ。)

 先ほどの洞窟の中はまさに地獄だった。メイスで何度殴っても無限に敵は沸いてくるし、それどころか途中からディアブロが戦闘に割り込んできたからだ。ディアブロ個人だったならば確実に勝てた。そして、あの盗賊たちの群れも勝てた。それは、戦ってみて分かった。だが、同時となると話は別だ。周りから波のように盗賊たちの連撃が飛んできて、そして私がメイスで倒して作った穴にディアブロがいい感じでカバーを入れて攻撃をしてくる。それはまさに難攻不落の要塞のようだった。

「待て、お前ら! ここに血痕があるぞ!」

 やがて、近くで盗賊たちの声が聞こえてきた。

 私がハッとして地面を見下ろすと、気付かずに血痕を垂らして茂みに逃げ込んだようだった。

 だが、後悔後に立たず。起こしてしまったことはしょうがない。もうここは、いっそ覚悟を決め、最後まで戦い抜こう。

 私がそう決心すると、やがて、盗賊たちが私が隠れていた場所にわらわら集まってきた。少なく数えても30はいると考えたほうがいいだろう。

(いけるか...? もちろん無理ね。まあ、でも最後まであがいてみるのもいいね。)

 やがて、目の前に今まで見てきた光景がフラッシュバックされてきた。これが走馬灯というものだろうか。

 今更、「私、死ぬんだな」と実感したが、不思議と怖くなかった。それどころか、少し楽しげにも思えてきた。

「チッ。手間掛けさせやがって。」

 盗賊たちのリーダーらしき人物がそう悪態をついた。

 それに対して私は笑みで返した。なんの笑みかって、覚悟したものだけに許される笑みだ。

 そのリーダーは私の笑みを見て、侮辱されたのだと思ったのか物騒な顔をしだした。しかし、その顔はサッと恐怖に塗り替えられた。

「おいおい。こんなかわいい姉ちゃんに何やってくれとんじゃいお前ら。」

 そして、後ろから場違いな若い声が聞こえてきた。

「な、なんだ貴様ッ!」

 リーダーらしき人物が後退りながらそんなことを叫んだ。

「はぁ? 女の子に大人数で切りかかる奴らに名乗る名前なんてないっつうの。」

 その声は深いげな声色に変わった。

「だが、まあそんなお前らにはもったいない大切なプレゼントが俺からあるんだわ。」

 私はその声の主を見るために後ろを向いた。

その声の主は、不格好なまでに鋭い鎌を肩にかけ、チンピラが迎えるかのような表情を浮かべた若い男だった。

「そのプレゼントは、『死』だ。」

どうも、ドスパラリンチョです。

あああああああああああああ。疲れたあああああああああああああああ!

6千文字も書くと、もう目がしょぼしょぼで手ががくがくでもう大変ったら大変。ということで、明日は短くさせていただきます。

内容の解説? そんなん書く気力さえもないわ。

ということで、今日はここらへんで終わります。

読んでくれた方、ありがとうございました!

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