脳筋聖女、パンツ論争に脱力す
まずい。これは非常にまずい。
ロスの野郎の死体がないということはもうアンデッド化し、そして動き出したということだろう。まだ死んでいないということもあるかもしれないが、ロスをメイスで殴りつけたときは確かに殺った感触があったしまずあり得ないだろう。魔化したという線はまあもっとあり得ないから大丈夫であろう。
(もし本当にアンデッド化しているならばまず蛍光色たちのところに戻らなきゃなんないな。あいつらに死なれたら神殿での評価が下がることにも繋がるし。...あれ? これ冗談抜きで結構やばいんじゃね?)
私は自分がいま置かれている状況がやっと分かった。そして、軽く現実逃避したくなってきた。
アンデッドとは思考などができなくなる代わりに、痛覚や恐怖や疲労がなく、体のリミッターが外されるから攻撃もより強力になるというかなり厄介なモンスターだ。そんなやつを前にしたらあの軟弱蛍光色どもは一撃で潰されるだろう。何に潰されるかって、恐怖と力によってだ。
私はアンデッドの見た目にも攻撃にも耐性を持ってるし正面から殴り合っても勝てる気がするが、蛍光色どもを守った状態となると話が変わる。守りながら戦うとなると、攻めにはあまり転じれない。攻めに集中しすぎて相手の蛍光色どもへの攻撃を一発でも見逃したらそれで終わりだ。かと言って防御に回れば、疲労と痛覚が無効のアンデッドに持久力ですり潰される。
またもや私がいま置かれている状況を実感すると、もう泣きたくなってきた。
(あー、くそ! もうどうすりゃいいのよ!)
私がそう心の中で悪態をついていると、後ろで何かがビリッと裂ける音が聞こえた。そして、蛍光色たちの悲鳴が聞こえた。
(ちっ! しくったか!)
私は急いで蛍光色たちのいたほうへ走っていった。途中の家の中でなんか蠢いているものが見えた気がするが、それは後回しだ。まずはあいつらの安全のほうが優先だ。探索はそれからにしたほうがいいだろう。
急いで蛍光色たちのもとへと駆けつけてみたはいいが、私がその場の光景を見た瞬間疲れで頭から地面に倒れこみそうになった。
そいつらは何をやってたのかというと、裂けた女物のパンツの前おいおい泣きながら土下座していたのだ。
呆れ返って頭をくらっとさせていた私に、一番最初に私に気付いた赤が説明しようとしてきた。
私はもう聞きたくなかったので両耳を抑えてうずくまっていたのだが、こいつらのどこにそんな力があったのやら無理やり引きはがされて、そして結局聞く羽目になった。本音としては、もうすべてを投げ出して実家の農家に引きこもって聖職者として疲労回復魔法でも体でも売って金を稼いで平和に暮らしていきたかった。
だが非常な現実は私に無理やり赤の説明を聞かせるほうを選んだようだ。
激しく抵抗する私にとうとう魔法使いの赤が麻痺魔法を唱えてきた。その魔法が使えるならば先ほどのロスとの闘いで使ってほしかったのだが麻痺を食らってるからそれを言うことさえもできない。
ようやく私との激しい戦いに勝利した蛍光色馬鹿野郎どもは私に説明してきやがった。
「まず、俺たちに何があったのか聞いてもらおうか。」
「ひゃへろ! ひひはふはい!」
「うわ、まだ抵抗してきやがる! どうなってんだこいつの筋肉は!」
私も一応女の子なんだから筋肉がどうのこうのなんて言われたら許すわけにもいかない。麻痺が切れたらきっちりお礼として一発殴っておこう。
私がそう決心している間にも蛍光色たちの話はどんどん進んでいった。
「...でなあ、こいつが『このパンツは俺がハスハスするんだからお前らには譲れない』って言いだしたわけよ。それでもそんなことで諦める俺じゃあない。そこで俺はズバリと言ってやったわけよ。『このパンツは俺』」
「待て、それじゃ語弊がある! 俺はそう言ったんじゃない、こう言ったんだ! 『このパンツは俺が今夜アレするために使』」
「結局同じじゃないですか! しかもそれよく見たら昨日盗まれた私のパンツじゃないですか! なんであなたたちが持ってるんですか!」
口の中で状態以上の回復魔法を唱えていた私はいち早く復活し一番近くにいた赤を殴り飛ばした。
「うわっ! もう回復したのか! ほんとにこの娘はどうなって...。」
驚いたように叫んでいた緑の声のトーンが徐々に下がっていった。そして、私の少し上を化け物を見るような目で呆然として眺めだした。ほかの二人も自然と同じ行動をしだした。
「なんなんですかあなた方は。さすがに麻痺を解除するのが早すぎたかもしれませんが、女の子をそんな目で見るもんじゃありませんよ。」
「い、いや違う。後ろに、その...。」
「後ろに何ですか? 何かいるんですか? 結構そういう反応怖いんでやめてもらえます?」
だが、私は口ではそういうがやはり怖かったから後ろをチラッと見た。
そして、蛍光色どものせいで忘れていたのだが忘れてはいけない存在がいたことを思い出した。
「ソうか~。キみは黒が好きなのか~。オじさん燃えてきちゃったゾ。」
そいつは先ほどまでは使わなかったような言葉使いでそう言ってきた。
そこには、腹がえぐられて顔の半分が黒く染まっているロスが立っていた。
どうも、ドスパラリンチョです。
先日、お詫びしたにもかかわらずその直後から投稿を休んで済まなかったな! ですが、またしばらくはそういうことがないと思いますので、どうか安心なさいませ。
さて、内容の解説です。
今回は半分眠いながらも書いた小説ですので日本語が何か所かおかしいかもしれませんが、そこは優しくコメントで教えてくださればうれしいです。
そして、本編はまだ始まりませんので、もうしばらく退屈な回が続くのでご了承ください。
それでは、今日はここらへんで終わろうと思います。
読んでくれた方、ありがとうございました!