転生死神、信徒とゲームをする
町と言うものは、そうそう恐怖政治でもされてない限り、基本は騒がしいものだ。俺が住んでいた日本でも、都会なり何なりはいつも騒がしかった。そして、それが異世界の町であっても同じだ。
ただし。ただし、今俺の周りだけは時が止まったかのように静かだった。
いや、それは俺の錯覚なのかもしれない。実際、周りを見渡してみれば道行く人はみんな口を動かして何かをしゃべっている。つまり誰も何も話していないという訳ではない様だ。
となれば、何故俺が音が聞こえないと錯覚するかは、目の前の光景にあるのだろう。その光景は、異世界であれば異様ではないのかもしれない。というかこの世界の都会なり王都なりではかなり当たり前の光景でもあるだろう。だが、日本人である俺にとってはこの状況が全く理解できず、そしてその異様な光景に戸惑っていた。
「ええと、何これ。」
俺は困惑のあまり思わず呟く。いや、この反応は日本人としてはごく当たり前の反応だろう。こんな状況で困惑せずに普通に振る舞える人間は全くいないと言ってもいいほどだ。
「? どうされましたか、ヤスヒロ様?」
横でサリエットがさっきまでは絶対に使わなかったような言葉使いで聞いてくる。俺はこいつが段々と憎たらしくなってきた。
こいつが町に付いたかと思えば「少々お待ちください」だなんて言ってそれで少々待ってたらこの有様だ。こいつが女でなければ俺は引っ叩いていたところだろう。
「いやお前さあ。これは何だよこれは。俺なんかやらかしたか? いやまあやらかしたことにはやらかしたんだがこれはないんじゃないか? お前もしかして俺嫌いなの?」
俺はこの状況について行けずに頭をくらりとさせながらサリエットに言う。だが、当の本人は不思議そうに首をかしげるだけだ。
(おいおい何なんだよこいつはよお。どうしてくれんだよこの状況。うわーどうしよ、頭痛え...。)
俺はそんなことを考えながら頭を抱えた。もうズキンズキンと頭痛までしてくる始末だ。
そんな俺に向かってその異様な光景の元凶のような集団が俺に一斉に口を合わせていってくる。
「「どうされましたか、死神様。」」
「そりゃあ俺の方が聞きてえよお! なんなんだよお前らはよお!」
そんな俺の叫びが町中に響いた。
今どんな状況かというと、サリエットに似た服を着た100人は下るくらいの人間が俺に向かって跪いているのでした。
この世界では、神というものはそれほど珍しいものではないらしい。まあ、そりゃあそうだろう。俺みたいなのでも神になれるんだ。俺以外の神があのおじいさんに連れてこられたっていうのも考えられなくもない。
だが、それでも、珍しくなくても神に対する人々の態度はそれなりに良かった。道を歩けば軽く頭を下げてくれる人もいるし、たまに子供たちが「あれが神様かあ! かっけー!」だなんて言ってたりもする。
いや、もしかしたらそれは違うのかもしれない。後ろにヤバい目つきをした神官服を着た奴らがいればそりゃあ頭を下げたりもするだろう。子供の方はよく分からないが、ここ5年ほどカッコいいだなんていわれたことがなかった俺としてはまあ俺自身をカッコいいって言っていたということを信じるまでだ。
「着きました。ここが私たちの神殿です。汚らしい所ですが、どうかご容赦ください。」
「お、おう。」
この世界にしてはそれなりにデカい建物の前に付くと、眼鏡をかけた女性がそんなことを言ってきた。そんな女性に俺が微妙な返事をしていると、今度はゴツい男と目の下にクマのある陰気臭い男がそれぞれ、片方のドアノブを持ち、両開きの扉を開ける。
(それくらい俺でできんのに...。これが目上の人に対する礼儀ってやつかなあ。もしそうだとしたらめっちゃ居心地悪いなあ。)
そんなことを俺が考えていると、やがて陰気臭い方の男が手を胸に当てながら礼をしてくる。
「私が死神信仰者の主教でありあなた様の僕であるファウストです。どうぞお見知りおきを。」
「お、おう、そうかい。俺は康弘ってんだ。」
「嗚呼、その死神様のお名前を聞けるとは、ありがたい限り。このファウスト、感激でございます。」
「そ、そうかい。それで俺はこれからどうしろってんだ?」
いきなり涙を流しながら俺に祈りだしたファウストに少し引きながら、俺はそう聞く。
するとファウストは涙を拭きながら俺に言ってきた。
「それについては、これから神殿住み込み組で夕食を摂りますので、それに参加していただければ嬉しい限りでございます。」
「ほお、夕食か。それは俺としても嬉しいしありがたいから食わせてもらうぞい。」
「了解しました。それでは給仕の物に気を引き締めて作るようにと言っておきます。」
そう言うファウストに俺は少し残念そうに言う。
「なんだよ。まだ作ってなかったのかよ。」
「はっ、申し訳ありませんでした! ただ今急いで作るように言ってきますので!」
「い、いやいいよ別に。まだならまだでいいんだよ。あと別に敬語なんて使わなくても良いんだぜ? 俺としては使わないでくれたほうが接しやすいし...。」
「申し訳ありませんが、そういう訳にはいかないのです。できるだけヤスヒロ様の言いつけに従いたいところなのですがこればかりはどうしようも...。」
ファウストはまた再び頭を深く下げる。それにしてもこいつ見た目の割には全然陰気臭くないな。なんだろう。死神を信仰するとこうなってしまうのだろうか。
(しっかし、まだ作ってなかったかあ。まあそれでもいいか。腹が減って仕方がないってこたあ変わらないけどまあゲームでもして時間をつぶすかなあ。)
俺はそんなことを考えながらポケットからゲーム機を出す。そして、電源を付けているとファウストが不思議そうに俺のことを見てきた。
それを見た俺はやがてあることを思いついた。
「なあファウスト。これはゲームって言ってまあ暇つぶしなり色々とするものでな。」
「ほう、げえむですか。申し訳ないのですが、そういったものは存じ上げていない次第で、ご説明願えますか?」
「まあそう言うだろうと思ったよ。まあゲームは口で言うよりもやった方が早い。おら、これを使って一緒にやろうぜ。」
そう言って俺はもう一つのゲーム機をファウストに渡す。ゲーム機を2つ俺にくれたおじいさんにはもう感謝感激だ。
「よろしいのですか? こんな精巧なものを私目なんかに...。」
「ああ、別にいいよ。というかこれくらいなら魔法が使えるこの世界で作れるだろうから別に壊しても大丈夫だよ。まあとは言ってもわざと壊すのはなしだけどな。」
俺はそう言いながら簡単な操作方法をファウストに教える。そして、ファウストのゲーム機と俺のゲーム機を通信させ、ゲームを開始した。
どうも、ドスパラリンチョです。
いつもここらへんで最近の出来事を書いている僕ですが、いい加減ネタが尽きてきたのでどうしようかなと思っています。僕は基本はなろうでは小説を投稿するだけで他の方の小説はあまり読んだりしないので、他の方がどうやっているのかはあまり知らないのですが何やってんでしょうかね?
まあそんなことは置いといて内容の解説に行きましょう。
今回康弘は「ここ5年ほどカッコいいと言われたことがない」と言っています。そして、前回なり前々回なりでサリエットは康弘のことをカッコいいと言っていましたが、それはあくまで心の中で言っていたので康弘はサリエットにカッコいいと言われたことは知りません。「そんなことは知ってるわバーロー」と思ったそこのあなた。黙らっしゃい。
そんじゃあ今日はここらへんで終わりますか。
読んでくれた方、ありがとうございました!




