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脳筋聖女、転生死神を殴る。  作者: ドスパラリンチョ
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転生死神、馬に説教される

「なんじゃこりゃ! 強っ!」

 俺はよくわからない卑猥な形をしたモンスターの死骸を前にして驚愕のあまり呟いた。

 何があったかというと、転生した場所の近くにあった草原を俺がうろうろしてたらそのモンスターが襲いかかってきて、パニクっておじいさんにもらった鎌をブンブンしたら勝手に死んでいったっていう次第だ。

(なんかこの鎌ヤバいぞ。あのアレっぽい形をしたモンスターを斬ったときヌルって感じで斬ったぞ。っちゅーかそもそもあんな簡単に切れるものなのか?)

 俺はそんなことを悶々と考えながらも卑猥なモンスターを蹴飛ばしながら歩き続ける。

 確かに俺は強いかもしれないが、そんなことよりも今は町を探すことの方が重要だ。なぜかって、腹が減ってしょうがないからだ。俺が元いた方の世界では徹夜飯抜きでゲームしたわけだし、結局俺は1日も何も食べていないということになる。わざわざ異世界に来てめっちゃ強くなってそれでも餓死とかあのおじいさんに顔向けできねえや。

 グゥーとなる腹を抑えながらもゆっくりと歩き続ける俺は、やがてカラカラと何かが転がるような音と、パカラッパカラッと馬なり何かなりが歩く音がするのに気付いた。

(うへぇ。こりゃまたモンスター沸いたのか? もしそうならめんどいなぁ。あのじーさんはなんで俺の身体能力を上げてくんなかったんだよ。もしもっと体力があれば走って逃げれたかもしんないのになあ。)

 そんな愚痴を浮かべながらも音のした方向をみると、そこにはタクシーがあった。それも馬が引いているタクシーだ。いや、比喩とかふざけているんじゃなくて、本当にタクシーがあった。だって馬に「TAXI」って書いてあるし。

 俺はあまりの光景に自分でも信じれずに目をこすって再度確認していると、やがてそのタクシーが俺の前を横切った。

「いや待てよ! おいタクシー! お客さんだぞ!」

 俺の前を通り過ぎようとするタクシーを慌てて停めると、タクシーを引っ張っている馬がこっちを向いた。

 そしてその馬が俺に向かって流ちょうな人語で答えた。

「おいあんた。ワシを停めるったあいい度胸じゃあねえかよ。金はあるんだろうな、金は?」

「金なんてないよバーカ。それになんで馬がしゃべんだよ。おかしいだろ。」

「何がおかしいんだよ。それに金がないんならならワシぁ行かせてもらうぞ? こちとら商売なんでな。」

 そう言ってしゃべる馬が俺の前を通り過ぎようとする。俺が「おい待て」とまた慌てながら停めると、馬は呆れたような顔(?)でこちらを向いて「まだあんのか」と言わんばかりのため息をついた。

「頼むよ、乗せてくれよ~。ほら、一番近くの町まででいいからさ。」

「なんだよお前。金はないんだろ? この世は金が重要なんだ。お前まずはそれから勉強しな。」

 馬がそんなことを言いながら地面に唾を吐いた。

(こいつ~! マジでうぜえ! もうこりゃ何が何でも乗っかってやる!)

 そう決心した俺は馬に色々と提案してみることにした。

「な、出世払いで頼むよ。」

「嫌だよそんなの。どうせお前それで逃げるんだろ? 馬でも分かるわアホ!」

 これはダメか。じゃあ次はこれか。

「そんならお前に歌うたってやるよ。俺はこう見えても歌は上手いんだぞ?」

「いらねえよ。っていうか人間の歌の何がいいんだよ。聞くんだったら馬の歌がいいわ。」

 これもダメか。それでは最終手段で行くか。

「そんなら俺がお前を守るっていうのはどうなんだ? 俺は強いぞ?」

「いらねーよ護衛なんか。モンスターがいたら走って逃げるから大丈夫だよ。」

「いや、そうとも限らねえじゃねえか。この世には足の速いモンスターがいるかもしれねえぞ?」

「知るかよそんなん。というかここら辺はそんなモンスターなんていねえよ。」

 なんなんだよこの馬は。そこまでして俺を乗せたくないか。

 そんなら強硬手段に出るのみだ。あまりやりたくはなかったがこの鎌で脅すとするか。

 俺はスッと歩き出そうとする馬の前に鎌を出すと、馬は困惑したようにこっちを見た。

「おいどうする気だよこの鎌を。ワシが死んだらお前はどこにも行けなくなるぞ?」

「そんなん分かってるわボケ。もちろんお前は殺さないさ。ただお前の息子とおさらばするまでだ。」

「調子に乗りましたごめんなさい。どうぞお乗りください。」



 風がいい感じに通り過ぎてよく。椅子の揺れも心地よい。

 ただ今俺は、トーキング馬タクシーに乗っている。さっきの脅しがよほど聞いたのか馬は俺と目が合うたびにビクッとして慌てて前を向く。

(そんなに怖いなら後ろを向かなきゃいいだけだろ。さてはこの馬、馬鹿だな? 馬だけにってか。)

 俺がそんなくだらないことを考えていると、馬がおずおずと話しかけてきた。

「さっきから気になってたんだけどお前さんは何なんだ? その恰好とかその黒髪黒目とかからしてここら辺の国の出身ではないだろ?」

「そうさなあ。まあ、遠くの国って言ったところか。」

 俺はそんなことを言いながら俺の服装を見直す。言われてみれば確かに結構変わっているファッションかもしれない。

 上には中学時代のジャージを着て、下には高校の学園祭で演劇をやった時の衣装のズボンだ。ちなみに、その時の役は悪役の棟梁だ。

「そんなら俺も聞きたいことがあるんだが、お前ら馬ってここら辺じゃしゃべるのが普通なんか? 俺はさっきかっらそれが気になってしょうがないんだけど。」

「いや、そうでもないぞ? まあ馬がしゃべるっていうことを知っっている人はたくさんいるが、いかんせんしゃべれる馬が少なくてな。ワシが少し大きい街にでも行こうものならそこら中からガキがわらわら集まってくるわで大変だったわ。」

 馬はそう疲れたようにため息をつく。

 俺も子供はあんまり好きな方じゃないからその気持ちはよく分かる。こいつもそれなりに苦労してるんだなあ...。

「お前も大変だなあ。俺も一時期着ぐるみ着てガキの楽園でガキどもに殴られる蹴られるされる仕事を受けたことがあるんだわ。」

「へぇ、お前も物好きだな。自分からそんなクソみたいなみたいな仕事を受けるとな。それで、どうだったのさ、その仕事は。」

「そりゃあもう大変よ。着ぐるみの中は暑いし、ガキどものキックは地味に痛いしもう大変ったら大変。その後ガキを殴り返して即クビになったわ。」

 俺がそう返すと馬はツボったのか激しく笑い出した。

「おい落ち着け! タクシー本体が横転しそうだぞ!」

「ぶっひゃひゃひゃ! いや、すまねえぶひゃひゃひゃ! そりゃ、ガキを殴ったってんだろ? そんでクビになったってんだろ? そりゃあ笑うしかねえだろぶひゃひゃひゃ!」

「おいクソ馬。いい加減落ち着かねえとお前のその立派な息子とおさらばすることになるぞ?」

「わ、分かった、落ち着くから待ってろ! クックッ。」

 俺がそう脅しても馬は小さく笑い続ける。そこまで面白かったのか。

 やがて落ち着いてきたような馬が口を開いた。

「そんならお前さん、名前を教えちゃくれねえか? ここまで面白い奴に合うのは初めてだ。」

「そんなに面白かったんかい。まあ、俺は山内康弘ってんだ。」

「ヤマウチヤスヒロ? 変な名前だなあ。まあ、俺はエドワードだ。よろしくな。」

 俺たちが軽くそんなことを言っていると、遠くの方からバキバキッと何かが思いっきり壊れるような音がした。

「なんじゃあの音。お前分かるか?」

「分かんねえや。でも、まああれだ。せっかくワシは馬で生まれたんだから野次馬にでもなるか?」

「はっ、そりゃ面白そうだ。行ってみようぜ。」

 エドワードが俺の答えを聞いてゆっくりと歩く方向を変えた。そして、音がした方へと、歩いて行った。

どうも、ドスパラリンチョです。

今回は久しぶりに真面目に書きました! っちゅーことでまあ内容はいい感じになったっしょ。

それでは内容の解説に入ります。

今回ではエドワードと康弘とのしゃべり方が似ているのでこんがらがる方がいるかもしれないんで書いておきますが、康弘の一人称は「俺」、エドワードは「ワシ」です。

それでは、今日はここらへんで終わります。

読んでくれた方、ありがとうございました!

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