war game
拙い文章ですが楽しんでいただけると幸いです。
飛び交う弾丸、辺りを吹き飛ばす爆撃、銃弾の音、人の叫び声
それらの視覚、聴覚から得られる情報は限りなく本物で嗅覚ですら、人が焼ける臭い、鉄や油のにおいを感知する。
だがしかし、僕の視界にはマップ、自分の身体状況、残段数、武器の種類などまるでゲームのように情報が表示されている。
これは現実なのか?それともゲームなのか?
正解は両方だ。
大規模ストラテジー『war game』、一人で300人の兵士を操り、己の領土を広げていく対戦型オンラインゲームである。war gameの特徴は自ら兵士を育成しながら、食料、弾薬、兵器の運搬から、戦略、戦術、他プレイヤーとの外交、さらには兵器の開発まで非常に細かく設定できるゲームだ。
そしてwar game の最大の特徴は実際の人間を使い、数世紀前に廃棄された惑星を舞台に行われるのだ。
実際の人間と言っても、一般市民を使う訳ではなく、主に自我のない培養人間、もしくは重い罪に問われた死刑囚などが脳にチップを埋め込まれプレイヤーの意のままに動かされる。
war gameは日夜戦闘が行われ、戦闘が無くても自拠点の発展のために兵士はこき使われる運命だが、疲労度という値もあるため、休ませる必要もある。
ここまで話しておいてなんだが、俺もそんなゲームの要素の一つである兵士の中の一人だ。
本来は脳にチップを埋め込まれ自我が無いはずなのだが気が付いたら自我が発現しており、こうやって今の生活を振り返れるのだ。
チップは一応埋め込まれているらしく、戦闘時には視界にマップ表示、装備している武器の残弾数、といった情報が表示され、例え撃たれたとしても痛みを感じないようになっている。
この痛みを感じないという機能は本当に便利で、前線で撃たれたとしても痛みを感じずに戦闘が続行できる。ただし四肢が吹き飛ばされたりしたら動けなくなるし、出血状態で無理に続行すると死ぬのだが
とにかく俺に埋め込まれているチップは不具合が生じている可能性があり、俺に自我があるということだ。それが不幸なのか幸せなのかは分からないが俺は意識を持ちつつ今日も活きている。
「……」
兵舎の中にある食堂、食堂はとても広く、1000人単位で一斉に食事が出来るほどの広さだ。
均等に並んだ長テーブルには兵士が座って食事をしているが1000人居てもしゃべり声は一切聞こえない、強いて言うなら咀嚼音があるぐらいだが
それもそのはず、この兵士たちは自我が無いのだから、プレイヤーに命令され食事をしているだけであり、この後は一斉に食べ終え 行動し、訓練をするといった一連の流れが行われる。
俺がいるのはプレイヤーが操作する軍ではなく、運営がプレイヤーに一時的に貸し与える傭兵という形になっている。この傭兵はプレイヤーに呼ばれれば、呼ばれたプレイヤーの意に操られ死んでいく部隊だ。
大体のプレイヤーは、自分の軍の兵士じゃないため使い捨てにする傾向があり、傭兵部隊は常に激戦区に置かれている。その為消耗率はとても高い。
その為、いくらクローン人間とは言え、様々な体格、様々な容姿があり、隣に座って食事をしていた奴が今日は居なかったなんてことは頻繁に起きる。
「……ガタっ」
食事が終わると1000人の兵士が一斉に立ち上がった。これで食事は終わり、迅速に次の行動に移さなければならない、ここでもたもたしていると運営に不良品扱いされて廃棄される恐れがあるので、俺もその他の兵士と同じ行動をする。
(……一体どうした?)
いつもであれば、食事の後は訓練に入るのだが、食堂の出口には一人のロボットが立っていた。
ピッ
電子音と同時に、兵士はまるで仕分けされるかの如く、一人は右へ、もう一人は左へと進んでいく、不良品の点検は明後日の為、不良品の点検じゃないはず。ではあのロボットは何をやっているのか……
(そうか、出荷されるのか)
点検とは違う不定期に行われる検査、おそらく新規プレイヤーに出荷されるのだろう、プレイヤーは兵士のステータス、技能を検索して入手することができるので、その条件に合った兵士は左へ、合わなかった兵士はいつものように運動場のある右へと進むのだろう
俺は列の半ば、現在200人ほど仕分けされているが、条件に見合ったのは今のところ二名だけだ。兵を補充するプレイヤーは優秀な兵士をお望みの用だ。
兵士によって筋力量やセンスが違うため、兵士一人ひとり金額が変わって来る。技能やステータスの総合で金額が決まるため、金額=戦闘力といっても過言ではないのがこのゲームだ。そして戦闘力の高い兵士は総じて金額が高い、兵士の持ってるスキルによって大きく金額が変わってくるため一概には言えないが、現在仕分けをしているプレイヤーは金持ちなのかもしれない
段々と仕分けが行われ、結局自分の順番までに選ばれた兵士は先ほどの二人しかいなかった。そして俺の順番が回ってきた。
俺の戦闘力は3500、大体平均値ぐらいだ。ステータス的には狙撃、特殊兵器の扱いに秀でている……らしい、技能は射撃制度が上がる【集中Ⅱ】、特殊な兵器などの操縦に適性のある【特殊兵Ⅱ】、そして自我があることだ。
特殊兵という技能はそれなりに珍しいっぽいが、珍しいといっても200人に1人の割合でいるぐらいで、訓練でも覚えれる特別珍しくもない技能だ。自我があるのは情報としてないし、これからも見せる予定はないのでノーカウント、これらを総合的に見ればそこら辺の兵士と変わらないため俺はてっきりはじかれるかと思ったが
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先ほどから10秒もかけず仕分けしていたプレイヤーが30秒以上止まっていた。
一応情報は見られているっぽく、技能やステータス、身長や体重といった項目を見られているのは分かっているのだが、特筆すべき能力のないのに吟味されるのは後ろめたいことのある自分としては気が気でない状態だった。
(ついに、バレたか?)
最悪、処分される可能性もあるため背中に冷や汗が止まらない状況の中時間は過ぎていき
【購入】
という情報が頭の中に流れた。一瞬嘘だろ?と思いつつも、不審な行動を起こせば処分待ったなしなのですぐさま左へと進む
そして行先に待ち受けていたのは先ほど俺と同じように購入された兵士二人、俺は黒髪黒目の黄色人種だが、他二人は身長二メートルはあるだろう体格の良い兵士だった。
(・・・・・・この先やっていけるかな)
選ばれた他二人の兵士は俺が見た中でもトップクラスに戦闘力が高そうな兵士だった。これだけの兵士を買うプレイヤーの元で俺はしっかりと働けるかとても不安になった。